表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/31

4 入学式で噂の女

 そんなこんなで、入学式当日──学院にたどり着く前の通学路でクソガキと出会ったのだ。

 まだクソガキに言い足りないわたしは、コリンに引きずられるようにして、なんとか教室にたどり着いた。

 教室は、わたしが前世で通っていた高校となんら変わらなかった。前に黒板と教壇。机と椅子が均等に並べられている。

 ……のだが、そこで問題が発生した。


「元男子校なんて、聞いてないわ……!」


 わたし以外、全員男子生徒だったのだ。

 今年から共学になったものの、入学した女学生は、お父様のコネのわたしだけ。

 同性なら楽勝で家に連れて行けると思ったのに……!


 歳の離れた異性との接し方なんて知らない。

 今世ではコリンのように幼少期からの付き合いがあり、身分関係がはっきりしている人間としか触れ合ってこなかったし、前世でそんな機会などあるわけない。


 七個も年下の男の子と、どうやって友達になれって言うのよ……!?


 愕然としつつも、黒板に示されていた自分の座席に座る。

 周りを見渡すと、見覚えのある金髪がいた。


 しかも、今朝のクソガキも同じクラスだし……!


 遠くの席のクソガキをチラリと見る。

 目が合った。


「チッ」


 でかい舌打ちをされて、目を逸らされる。


 こんな環境で学院生活なんて無理じゃない!?

 頭を抱えて絶望していると、ガラリと扉を開いた。

 長身に白衣を纏った男が入ってきた。


「今日から、君たちと一年間一緒になる担任の、ルノウだ」


 わたしより若そうな男性教師。もしかしたら、新人なのかもしれない。

 藍色の癖っ毛のようだが、前髪を上げるスタイルで綺麗に整えており、清潔感がある。


 あんな痩せっぽっちで、ご飯はちゃんと食べているのかしら……?


 健康状態が心配になる体躯の先生に、わたしは要らぬ心配をかけてしまう。


「これから入学式のために、ホールに向かう。みんな、名前順に廊下に並んでくれ。ホールに入ったら、奥から座る。いいな」


 簡潔に説明され、わたしたちは指示に従った。

 先生の後を雛鳥のように追って、廊下をしばらく歩くと、渡り廊下に辿り着く。渡り廊下の向こう側がホールだった。

 ホールは広く、中央には舞台があった。座席は半円状に並べられていて、後ろの席になるほど、段差が高くなっている。ふわふわの椅子は、使っていない時は、座席が上がる映画館タイプ。

 ちょっとした劇場みたいだ。


 入学式が始まり、一年生全員がホールの中に揃ったので、一縷の希望をかけて、女の子(同性)がいないか血眼で探す。


 ……やっぱり男の子しかいない。

 認めたくないけど、わたしが唯一の女子生徒なんだ。


「……おしまいだぁ……」

 小声で呟いて、頭を抱える。

 同性が一人でもいたら、クラスを跨いだとしても、仲良くなる難易度は低いと思ったのにぃ……。


「次に、新入生代表挨拶」

 アナウンスにハッとして、壇上を見る。


 今朝のクソガキが登壇した。

「あっ」

 思わず声を上げてしまった。


 それを隣に座っていたクラスメイトの男子が聞きつけたのか、

「どうしたの? 知り合い?」

 と聞いてきた。

 

 柔らかい声色。ふわふわした髪と、その髪色と同じ紫の瞳。少しダボッとした制服。

 コリンほど幼い雰囲気はないが、人懐っこそうで中性的な男子が、わたしを見ていた。


「ちょっと朝、彼とバトって……」


 わたしはひそひそ声で事情を説明する。

 可愛らしい外見のクラスメイトは、ぷっと小さく吹き出した。


「バトったの!? あの人、理事長の息子のデリックくんだよ! すごいね〜!」

「ちょっと、声が大きいってば!」


 周りの生徒たちの視線が一斉に集まるのを感じる。

「バトったって、言ったか?」

「デリックくんと……って、女子!?」

「すげぇ度胸……」

 ま、まずい……!

 友達を作るどころか、悪評が広がっていく……!


「ごほん!」

 舞台上でクソガキが大きく咳払いをした。

 一瞬で生徒たちが口をつぐむ。


「…………」

 壇上から遠い席にいるっていうのに、クソガキの青い両目が、わたしをとらえている。

 騒がしくなったのは、わたしのせいじゃないわ……!

 弁解しようにも、何もできないもどかしさ。


「あーあ、ロックオンされちゃったね。デリックくんには誰も逆らえないのに」

 ことの発端を生み出したクラスメイトが、クスクスと笑う。

 クソガキがなんで脅しみたいなことを言ってきたのか、理解した。


 だから初めて会ったとき、クソガキは「俺に逆らわない方がいい」とか言ってたのか。

 親の権力で、お前なんてどうとでもできるんだぞ、という脅しのつもりで。

 

 くだらない。


「……理事長の息子って言っても、ただ親が権力を持ってるだけのお子ちゃまでしょ」


 わたしのつぶやきに、クラスメイトは、そのくりりとした目をさらに大きくした。

「……へぇ〜。随分、大人びたこと言うね。本当に同い年?」

 興味深そうに尋ねてくる彼に、わたしは自分のミスに気づいた。


 またやっちゃった。

 転生したなんて、誰にも言えるわけがないのに。

「や、やだな〜、同い年に決まってるじゃない」

「ふーん……」


 彼はそれ以上追求してこなかった。

 その代わり、右手が差し出される。

「ボクの名前はノア。キミ、学院で唯一? 女子だよね? よろしく」

「……アンよ。こちらこそ、よろしく」


 握手をしながら見つめてくるノアの視線は、秘密を見透かされそうで、どことなく居心地が悪かった。

読んでくださり、ありがとうございます!

ぜひ☆やリアクションをポチッとよろしくお願いします!

感想やレビュー、励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ