30 コリンの告白
「アンさん、招待状を三人に渡し終わったんですか?」
夕焼けの柔らかい日差しの中、わたしたちは肩を並べて、寮への帰路についていた。
「そう。三人とも来てくれるって。これで魔法学院を退学できるわ……!」
拳を揺らして見せると、コリンは寂しそうに笑った。
「じゃあ、アンさんとこうやって寮に帰ることもなくなりますね」
「まぁ、そうなるわね……。でも三年なんてあっという間よ、すぐコリンも屋敷に戻ってくるわ」
三十歳からの三年はあっという間だけれど、十代の三年は濃密なものだろう。
前世のわたしの高校時代がそうだったし。
「そうでもないですよ」
コリンはやっぱり寂しそう続ける。
「僕、アンさんとずっと一緒に学院に通いたいです」
「ありがとう、そう言ってくれるのは嬉しいけど……」
「本気です」
コリンが足を止める。
わたしも一緒に立ち止まった。
「アンさんに、魔法学院をやめて欲しくないです」
「コリン……」
二十三歳の付き人に、こんな言葉をもらえて、嬉しくないわけがない。
学院生活が楽しくなかったと言えば、嘘になる。
それくらい、四人で共に過ごした時間はかけがえのないものだった。
でも……。
「わたしは魔法学院をやめるわ」
「アンさん」
「仕事がしたいの。もっと魔法を研究して……」
「アンさん!」
コリンは持っていたスクールバッグを地面に捨てて、わたしの手首を取った。
息がかかるほどの距離に、コリンの顔がある。
「僕、僕は、アンさんのことが……!」
今にも泣き出しそうな、欲しいものをねだる子どものような表情で、コリンはわたしに近づいてきた。
唇が触れそうになって──コリンは停止した。
「……すみません、僕は、ただの従者なのに」
コリンはそう言って、わたしから離れていく。
振り返って、落としたスクールバッグを拾い、呆然とするわたしの前を歩く。
「帰りましょう、アンさん」
「コリン……」
わたしは、なんて言葉をかけるのが正解なのかしら。
ここまで思ってくれる若い従者に、大人として。
「コリン」
わたしはコリンの背中に声をかける。
「わたしはあなたがお付きの者でよかったわ。その気持ちは変わらない、ずっと、何があってもよ」
振り返ったコリンは笑顔だった。
「ありがとうございます、アンさん」
いつも通りに戻ったコリンにほっとして、わたしは彼の隣に追いつく。
「でも、僕、諦めないですから」
「え?」
「なんでもないです」
コリンは鼻歌まじりに、歩みを進めていく。
二十三歳の考えていることは、相変わらず、ちっとも分からない。
でも、わたしは彼らと友達になれたと思った。
それをこれから、証明するのだ。
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