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14 試験結果

 後日、試験の合格者とその点数が、廊下の掲示板に張り出された。

 掲示板の前には人だかりができる。例に漏れず、わたしもその一人だ。


 一位はクソガキ。

 わたし自身は狙い通り、合格者の中でも真ん中ぐらいの順位。

 こっそりとガッツポーズをする。


「何でその順位で嬉しそうにしてんだよ」


 後ろからクソガキの声が降ってきた。

 ガッツポーズを見られたらしい。

 クソガキはわたしの隣に立ち、順位表をまじまじと睨みつける。


「っつーか、俺の順位、不当だろ。お前の魔力もらって一位獲れても、気分良くねぇ」

「態度がでかい割に、案外小さいことを気にするのね」

「うるせえよ」


 クソガキが一位なのは、目立っていたからだ。

 不利状況でも果敢に薔薇ゴーレムに挑み、しかも土ゴーレムまで倒した。


 まごうことなき快挙だ。

 胸を張っていい。


 だというのに、クソガキは全てわたしのお陰だと思っているようで、とても厄介である。

 そのままわたしが目立たないように、彼には目立っていて欲しい。


 クソガキは、くるりと踵を返した。

「先生に抗議してくる」

「あ、ちょっ、馬鹿! やめなさい!」

 職員室に向かおうとするクソガキの襟を掴んで引き留める。

 眉間にシワを寄せた端正な顔が振り向いた。


「……また馬鹿って言ったな」

「言ってない」

「言った」

「言ってない」


 ばちばちと火花が飛びそうなほど睨み合う。

 初対面のときみたい。

 わたしはアホらしくなって、ため息をついた。


「試験に受かったのは、あんたの実力でしょ。わたしはちょっと手伝っただけなんだから、これは妥当な順位なのよ」

 説得を試みるが、クソガキは納得がいかなそうだ。

「……アンタって言うな」

「は?」


 さっきまでの睨んできた目つきはどこへやら。

 クソガキは視線を逸らして、口を尖らせていた。

 まるで、拗ねた子どもみたい。

 いや、『まるで』じゃない。

 ただの拗ねた子どもが、そこにいた。


「……俺は、デリックだ」

「…………え」


 なぜ、今、名乗る?


 思考を巡らせて、一つの回答に辿り着いた。

 まさか、名前で呼んで欲しいってこと?


「わ、悪かったわよ。……デリック」


 恐る恐る、呼んでみた。

 陰でクソガキと呼んでいた、罪悪感を乗せて。


「…………ん」

 デリックは頬を僅かに赤く染め、満足そうに口角を少しだけ上げた。

 ……何よ、一体。

 しかめっ面じゃないと、こっちの調子が狂うわ……。


「お前が一位なのか、デリック」

「あん?」

 声質はクリアなのに、ドロドロした敵意を含ませた言葉。

 マークが恨めしそうにデリックを睨みつけていた。


 順位表に振り返ると、マークは二位。三位はノアだった。

 あの子たち、みんな優秀なのね……。


「マークくんは結構完璧な動きをしていたと思うよ〜。ペアだったから分かるけど、あれで一位になれないなんて、デリックくんは一体何をしたんだろうね?」

「ノア」

 わたしの背後から、ノアが現れた。

 頭の後ろで両手を組んだまま、ノアは続ける。

「まさか、持っている以上の魔力を使ったわけじゃあるまいし」


 ノアの視線はいつも居心地が悪くなる。

 確信を持っているのか、手がかりがあるのか、探るような瞳。


「やだな〜、何言ってるの。ノアもマークも上位ですごいじゃない!」

 わたしはぎくりとして、笑って誤魔化した。

「……一位じゃないと、意味ないから」

 不機嫌になるマークと、

「そ〜そ〜。ボクも立派な魔法使いになりたいからさ〜」

 どこか不服そうなノア。


「…………」

 一位を己の力だと思っていないデリックすら、何も言い返さずにいる。

 何これ?

 なんかみんなバチバチじゃない?


「アンさん!」

 三人の重たい空気に息が詰まりそうなところへ、コリンが助け舟を出してくれた。


「コリン、ちょうどいいところに来たわね」

「へ? いや、そんなことよりアンさん、発作のほうは大丈夫ですか……?」

 こそっと、内緒話をするように、コリンが気にかけてくれる。


「大丈夫よ、今のところ、一度だって起こっていないわ」

「あぁ、良かったです。試験後も普通に教室へ戻ってきたから、安心してはいたんですが……」

 どうやら、実技試験後、コリンの目の届かないところで発作を起こしていないか、気を配ってくれていたようだ。


「そういえばコリン、あなた、合格者のところに名前が……」

「あ、あぁ、それは言わないでください……」


 コリンは補習組だった。

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