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???の復讐

お久しぶりです、お義父様。


ええ、おかげさまで夫も子供たちも元気にしておりますわ。


え?子供たちは一緒ではないのか、ですって?


ふふっ、おかしなことをおっしゃるのですね。


子供たちはわたくしども夫婦にとって自らの命よりも大切な存在です。


なぜ貴方様のご機嫌取りに使わなくてはならないのかしら?


あら怖い、もういいお年なのですから、少しは落ち着いてくださいな。


……騙した?そもそも石女だっただろう?


何をおっしゃっているのやら。


ジュリアス様はね、哀れな小鳥のピィを今でも覚えていらっしゃるのよ。


愛する我が子を同じ目に遭わせないよう自衛するのは当然ではなくて?


子をもうけるのは敵を排除してからにしようと、二人で相談して決めておりましたの。


優しいあの方は、わたくしがここに来ることも反対していたのですけどね。


わたくしにしかできない仕事があるので、仕方なく参りました。


……お前なんぞジュリアスの妃にふさわしくない?


まぁ!わたくしをジュリアス様の婚約者に指名したのはお義父様ではありませんか。


わたくし、これでもジュリアス様と巡り合わせていただいたことだけは感謝しておりますのよ?


お義父様にとっても、わたくしは都合の良い存在だったでしょう?


下位貴族の娘で、たいして美しくもなく、優れた才もなく、親に虐げられてささやかな破魔と結界の力を会得した、王太子の婚約者に据えても無理がない聖女。


エイプリル様の完全な下位互換だから、安心して王家に迎え入れたのですよね?


けれどもジュリアス様はこんなわたくしを大切にしてくださいました。


そのおかげで、ほら、ご自身で体感なさってください。


愛し愛されることを知ったおかげで、わたくし治癒と豊穣の力に目覚めましたの。


お義父様の病魔もこれで遠ざかったはずですわ。


どういうつもりだ、ですって?


わたくしにしかできない仕事ができたと申し上げましたでしょう?それがこれです。


ふふ、ご心配なく。


愛するジュリアス様を傷つけ、尊敬するメイお義姉様を虐げた貴方への憎悪で、破魔と結界の力も昔以上に使いこなせるようになりました。


今では恐れ多くも、大聖女の位を拝命しておりますわ。


……そうそう、聖女といえば、ご存じでしょうか。


先日、不摂生が祟ってついにエイプリル様がお亡くなりになりましたわ。


あんな娘どうでもいい?


あの娘が未成年のころはたいそう溺愛していたというのに、随分と冷たいことですわね。


わたくしだってあの方のことは大嫌いでしたけど、ある意味ではお義父様の被害者ですもの。


一匙ほど同情の余地がありますから、花ぐらいは手向けてきましたよ。


……エイプリルは我の娘ではない?


本当にそうでしょうか?


メイジェーンお義姉様がおっしゃっていましたわ。


お義母様は愛情深い母で、高潔な王妃だった、子供を復讐の道具にするような恥知らずではないと。


そもそも仕事とお義父様の相手が忙しくて浮気をする暇もなかったそうですけれど……。


あら?どうなさったのですか、お義父様。


お顔の色が悪うございますわ、大丈夫ですか。


……エイプリルはやはり自分の娘だったのか、ですか?


さぁ?真相は亡きお義母様に聞いてみないことには、わたくしにはなんとも……。


あっ!おやめになって!


そんな、自ら命を絶って真相を聞きに行く、本当の娘ならエイプリルに謝る、だなんて。


散々ジュリアス様たちを傷つけておいて、死んで楽になれるとでも?


ふふ、結界の力ですわ、便利でしょう?


わたくしの前で自由に動けるなどと思わないことです。


とはいえわたくしがずっと付いているわけには参りませんから……そこのあなた、お願いできる?


ええ、そう、ありがとう、鍵はわたくしが持ち帰るわね。


……拘束を外せ、ですか?


大丈夫、自殺防止のためと言えば皆納得してくれますわ。


お世話は使用人たちがやってくれます。


今までずいぶんと横柄にされてきたようですから、どこまで丁寧に扱ってもらえるか、わかりかねますけど。


それと、お義父様をタダめし食いにさせる気はありません。


今まで散々ジュリアス様やわたくしに、王族たるもの民のために滅私奉公せよとおっしゃって来られましたものね。


まったくもってその通りだと思いますわ。


だから寝たきりでもできる素敵なお仕事を用意させていただきましたの。


医学の発展のため、ちょっと未知のお薬を飲んでいただくだけです。


うっかり亡くなってしまわないように、被験時は必ずわたくしが付き添います。


血反吐を吐いてのたうつような薬でも絶対にお義父様を死なせたりしませんから、安心なさって?


うふふ!泣くほど喜んでいただけて嬉しいですわ。


そうだわ、お義父様はもう動けませんから離宮の維持も最低限にしておきましょう。


え?心外ですわ、昔お義父様がジュリアス様やメイお義姉様を閉じ込めた地下室に比べれば衛生的でしてよ?


ジュリアスはこのことを知っているのか、許可を得ているのか、ですって?


……はぁ。


わたくしがしようとしていることを、ジュリアス様に言うつもりはありませんわ。


なぜって妻に復讐を肩代わりさせたと知ったら、きっと彼は自分を責めるでしょう?


それにジュリアス様の声が聞けるだなんて、例えそれが罵倒であってもお義父様には救いになってしまう。


そんな事、わたくしが許せませんの。


もっとも、聡明な彼のことだからわたくしが何をしようとしているのか、薄々気づいているかもしれませんが……。


それが原因で、我々夫婦の絆が壊れることはありませんわ。


ええ、わたくしは夫を信じています。


他人の言葉一つで妻の托卵を疑った、どこかの誰かさんと違ってね。


それではお義父様、今日のところは失礼いたします。


くれぐれも健康にはお気をつけて……どうか末永く、生き地獄を味わってくださいませ。

諸悪の元凶へのざまぁは現王妃様(本編の王太子妃)に締めくくっていただきました。

娘と違って死んでも反省しそうにないので、花すら手向けてもらえなかったと思われます、この元王様。


ちなみに王妃様(ジュリアス嫁)の聖女の力が覚醒したのは魔物大発生の後です。

大発生に間に合っていたとしても、初期はささやかな力だったので焼け石に水だろうけど。

本人はそのことで辺境の人たちに罪悪感を抱いていて、夫のお友達でもあるアーサーに優しいです。

人道的に人体実験できない類のお薬の有効性を調べてきてあげたりとか。

アーサーだけでなく善良な国民にとっては素晴らしい王妃様で子供たちの良き母ですよ。

自分を虐げた義父のもとへ薬持参でお見舞いに行っている、慈悲深い人だと思われています。


ところで今更ですが、大聖女とは四種類の固有能力を満遍なく使える聖女です。

大聖女の定義は前作のほうが詳しいのでこの機会に「平民出身の新妻聖女に向かって「貴女に愛されるつもりはありません」と宣言した王の末路」もどうぞ!(宣伝)

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