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第18話 潜入者は元部下!?嫉妬の護衛とモテ期の建築士

魔王城に誕生した新たな快適空間──《カプセル魔宿》。

ユータの斬新なアイデアがついに形となり、各地から注目を集める中、ひとりの来訪者が姿を現す。

北の魔王国から派遣されたのは、クラヴィス直轄の“元・カイの部下”。

彼の目的は“視察”…のはずが、なぜかユータに急接近!?

モテ期再来の建築士と、嫉妬の炎を内に秘めた護衛の物語が、いま新たに動き出す──!

魔王城の中庭に、風が心地よく吹き抜けていた。


完成したばかりの新施設──その名も《カプセル魔宿ましゅく》。ユータが設計・監修した、魔界初のコンパクト宿泊施設だ。


「おお……!これが……!」


ルシアスが感嘆の声をあげ、カプセル内部を覗き込む。


「なんというか……無駄がないのに、妙に落ち着く。魔界の“棺”とはえらい違いだな!」


「なるほど……狭いのに、不思議と安心感がある」

セリアもすっぽりと収まるようにカプセルに腰かけ、小さく頷く。


ユータは嬉しそうに微笑んだ。


「圧迫感を減らすため、内側の壁面を緩やかに湾曲させてあります。それと、木の質感を活かすことで“寝床”感を強調しました」


「それが“ほっとする”理由か……なるほど」


外部から来た旅人たちもぞくぞくと見学に訪れ、評判は上々。なかには「このままここに住みたい」と言い出す者まで現れる始末だ。


「さすがだな、ユータ!」

ルシアスが彼の肩をポンと叩いた。

「お前の建築は……見ていて、心が躍る。最高だ」


「ルシアス様……ありがとうございます!」


ユータが少し照れたように頭を下げた、そのとき。


「……ほう。これが話題の“建築物”ってやつ?」


場の空気を割るように、明るく艶のある声が響いた。


振り返ると、鮮やかな紫のマントをなびかせた青年が歩いてきていた。目元のホクロと、揺れるピアスが印象的なその男は、ルシアスたちの前に立つと、軽くウィンクしてみせた。


「北の魔王国より派遣されました〜。エクレオ=バントラインと申しま〜す!」


「派遣!?」

セリアが眉をひそめると、エクレオはキラキラと笑ってうなずいた。


「はいっ! クラヴィス様直々のご命令でーす☆“例の建築士”さんを、ちょ〜っと見に来いって!」


カイの眉が、ほんのわずかに動いた。


(……やはり、来やがったか。クラヴィス様直属の“問題児”……)


(よりにもよって、エクレオ……!)


エクレオの視線がユータに向けられた瞬間、その表情が変わった。


「……へぇ。あんたが、ユータさん?」


「え、は……はい、そうですが……」


「っきゃー♡」


突如、謎の歓声とともにエクレオがユータの前まで距離を詰めた。


「かわいいっ……っつか、優しそう……声も好み……!」


「えっ、え、えええ?」


突然すぎる直球に、ユータは完全にペースを崩された。エクレオは構わずユータの周りをぐるぐる回り、全方位からじっと観察し──にっこりと笑う。


「うん、オッケー♡ 好き」


「ちょ、ちょっと待って!? 何が!?」


一方、ルシアスとセリアはというと──


「……あはは、ユータ、またモテてんな」


「ええ。ユータさん、なぜかこう……“魔界の懐柔アイドル”みたいになってますね」


どこか微笑ましげに見守っていた。


だが、唯一、明らかに浮かない顔をしていたのはカイだった。


(……いやいや、嘘だろ? なんであいつが……なんで、あんな目でユータを見るんだよ)

(任務は!? 監視は!? ……惚れにきたのか!? 馬鹿か!?)

(だめだだめだだめだ……クラヴィス様、あいつ絶対暴走する……!)


エクレオの口調は軽いが、その身のこなし、魔力の流れ、眼光……どれをとっても本物の刺客。表情の奥に潜む“実力”を、カイは知っていた。


なぜなら──


(……こいつは、かつての俺の部下だ)


ルシアスたちには決して言えぬその過去が、カイの中にじわりと波紋を広げていた。


しかも今、目の前で──


「ねぇユータさん、今夜ちょっとふたりで……お茶でもどうですか?」


「えっ!? えっ……あ、いや、その、僕、まだ明日の準備が……」


「いいじゃないですか〜♡ ストレスためると、美容にも悪いですよ〜?」


(……殺意……っ!!)


カイは背後で剣の柄を握りかけたが、理性で押し留めた。


(……落ち着け。相手は任務で来ている。何もなければすぐ帰る……はず……)


しかしエクレオの視線は、明らかに「長期滞在します」オーラを放っていた。


「ねぇカイさん? あなた、ユータさんの“護衛”なんですよね〜?」


「……ああ」


「ふふ、じゃあその目、ちょっと自重したほうがいいですよぉ?」


「……!」


(この小僧……挑発しているな)


カイのこめかみがピクリと動く。


──ああもう。


なにが“視察”だ。なにが“任務”だ。


(お前は最初から、“俺の好きな人”を狙いにきただろうが……!!)


心の奥で、渦を巻くような嫉妬と焦りがじわりと広がっていく。


──つづく。


まさかの“エクレオ=元部下”設定に動揺が隠せないカイ。

そしてユータに惚れ込んだエクレオのアプローチは、もはや任務どころではない暴走っぷり。

クラヴィスの思惑をよそに、またしてもユータを中心に“魔界の恋模様”が渦を巻き始めます。

カイの心はどこまで耐えられるのか……?次回、さらに接近戦です♡

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