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第17話 恋するスナイパー♥始動

ユータの天然発言が、屋根の上の暗殺者の心を揺さぶる──!?

勇者パーティーとの再会、進むカプセルホテル構想。そして「大事な人」発言の真意とは……?

今回は“恋する乙女”ことカイが、もだえに次ぐもだえで感情のジェットコースターに乗せられます。

さらに、あの魔王クラヴィスの「恋するスナイパー♥作戦」が極秘始動!?

どうぞ、笑ってときめいて読んでください!

「カイさーん! ちょっと来てくださーい!」


 広場から聞こえたユータの声に、屋根の上で潜んでいたカイは一瞬固まった。


(な──ぜバレた……?)


 完全に気配を消していたはずだ。風の精霊と同化し、視界からも外れていた。だが──


「なんとなく、どこかで見てると思って!」


 ユータは見上げながら満面の笑みで手を振る。その無防備すぎる姿に、カイは言葉を失った。


(……なんとなく、で、見つかるわけが──)


 自分でも気づかぬうちに頬が熱くなっていた。


「みんなに紹介したいんです! 僕の……大事な人なんで!」


「──……っ!」


 まさかの言葉に、カイは屋根の上で凍りついた。


(……だい、じ……な、ひと?)


 瓦の上で動悸が爆音レベルに跳ね上がる。


 ユータは満面の笑みで続ける。


「いつも僕を見守ってくれてる、すっごく頼れるボディーガードなんです。戦闘もできて頭もよくて、僕は全幅の信頼を置いてて……本当に、大事な人なんですよ!」


(あっ、そういう“意味”か……)少し落胆するカイ。


(って、いやそれでもだいぶ破壊力あるんだが!?)


 降り立ったカイが紹介されると、勇者パーティーの女子たちが一斉にキラキラした目で囲んできた。


「えっ、なにその紹介! それってつまり……」

「すごい美形じゃん!」

「その黒髪ストレート……貴族系推し……」


 まったく意図せぬ方向で誤解が広がり、カイのこめかみがピクピクと震える。


(なぜ俺は今、“大事な人”として女子に囲まれているのだ……!)


 一方で、ユータは笑顔でカプセルホテルの設計構想をスケッチしていた。


「ここを上下二段にして、収納は壁に埋め込めば──」


「女子用は防音必須ですね!」


「あと、鏡と……小物置ける棚もお願いっ!」

(なにを女子に囲まれて笑顔で図面描いている……! 乙女漫画か!)


 カイの心が嫉妬で波打つ中、誰も気づかぬその表情の裏で、爆発寸前の感情が燻り続けていた──。


* * *

荘厳な玉座の間。

クラヴィス=ゼル=ノルドは、玉座に腰かけたまま、静かに瞼を伏せていた。


「……やはり、そうか」


「はっ……?」

報告書を差し出そうとした部下が、面食らったように目を見開く。


「すでに察していた。──奴の視線が、かつてのそれではなかった」


 クラヴィスは魔力で浮かせた報告書のページを、一瞥だけで送りながら淡々と続けた。


「……カイ=ヴァレンティアに“想い人”が、か」


「に、にわかには信じられません、陛下! あの冷徹無比なる暗殺者が……恋、など……!」


「──それが“ほころび”の理由だったとはな」


クラヴィスの指先が、静かに玉座の肘掛けを叩いた。


「過去百年、表情の変化すらほぼ記録されておりません!」


「まさに魔界三大・心読めぬ男の一角です!」


「それがよりにもよって“恋”など……! 気の迷いでは?」


「──気の迷いで、あの魔力の乱れが起きるか?」


 クラヴィスの静かな一言に、場がしんと静まり返る。


「感情は、力に現れる。特に、彼のような精密な制御を信条とする者にとってはな」


 クラヴィスは口元に静かな笑みを浮かべた。


「……おもしろい。ならば、“恋する暗殺者”を観察してみるのも一興」


 その言葉に、場がざわついた。


「ま、まさか……陛下がご自分で……?」


 そのとき、柱の影からひょっこり顔を出したのは、紫色のドリル髪にリボンを巻いた女魔族。


「それなら! このエクレオ=バントライン様にお任せを〜!」


「……誰だ」


「情報工作・潜入調査・空気を読まない突撃、全部得意の! 影のエース☆兼ラブアナリストでございますぅ♡」


「影というより、騒音だな……」


「お任せあれっ! ラブの気配には超敏感! 任務名は《恋するスナイパー♥作戦》でいきましょう!」


 空気を読まずに踊り始めたエクレオを見て、部下たちが引きつる中──


 クラヴィスは一瞬だけ目を細めた。


(──さて。おまえの“恋”が、どれほどの強度を持つのか……確かめさせてもらおう)


 そして、異音を立てながら足踏みするエクレオに、


「よかろう。任せた。……ただし、くれぐれも“観察”に徹しろ」


「イエッサー☆」


エクレオはキメ顔で敬礼ともパフォーマンスともつかぬポーズを決め──ひらひらとマントを翻して立ち去っていく。


(……絶対徹しない予感しかしない)


 誰もが心の中でそう呟いたが、言葉に出せる者はいなかった。


──つづく。



最後まで読んでくださりありがとうございます!

第17話は、カイくんの「ギャップ萌え」が炸裂する回になりました。

屋根の上での嫉妬にふるえる暗殺者(※美形)という構図、書いていて楽しかったです。

一方、魔王クラヴィスの知略とエクレオの騒音(!?)が火花を散らしており、次回は更にてんやわんやの予感。

恋と建築とギャグが交錯する異世界ラブリノベ、引き続きどうぞよろしくお願いします!

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