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エーピーイーエーピー6

[作者より]

私はイタリア人なので、この話にタイプミスがあったら、その理由はわかります。楽しんでください。

――その頃、ラックス・スターにて


ニルスとキラの家では、 ラースがラスコペルトから「オスカルの正体が明かされた」とのメッセージを受け取った直後、 ソファから立ち上がり、陰鬱な表情を浮かべていた。エラーラ:「どうしたの、ラース?」


しかし、ラースからの返事はなかった。 彼の手はグリッチのような尖ったものに変化し、 そのままエラーラの腹部を貫いた。


「ラ…ース…」 エラーラはラースの腕を強く握りながら言った。


「黙れ、クソ女。オスカーと一緒に、クロノテクノロジーを使ってお前らを利用してやったんだ。」 ラースは冷たい口調で答えた。


「それに俺、ラースなんて名前じゃねぇし。俺の本当の名前はベアロト・ラーステット(Værloto Larstett)だ。」 ベアロトは同じ冷たい口調でそう付け加えた。


ベアロトは家を出て、床に倒れているエラーラをそのままにし、 フィンとサンナのもとへ向かった。ベアロトはサンナを背後から襲おうと身構えたが、 フィンは腕を広げてサンナを庇い、 その衝撃で自分の腕を切り裂いてしまった。


「ラース、てめぇ、何してやがる…」 フィンは怒りのこもった声でそう叫んだ。


しかし、ベアロトからの返事はなかった。 彼はただ静かに手を上げ、指を鳴らした。


その瞬間、ニルスやラックス・スターに関する記憶が消え去った。 というのも、ベアロト自身もクロノテクノロジーのスパイであり、 ニルスが情報工学などに非常に精通していたため、彼は全てをそこから学んでいたのだ。 そして今、彼に残された最後の任務は、イングリッド、フィン、エラーラ、サンナ、 そしてニルスの妹キラから、ニルスに関する記憶を完全に消し去ることだった。


「完璧だ。」 ベアロトはそう言い、再び指を鳴らすと、その場から姿を消した。


数分後、フィンとサンナは目を覚ました。 だが実は、フィンはすべてを予測していたのだ。


「ハハ、お前マジで哀れなクソ野郎だな、ラース。」 フィンは力のこもった声でそう言った。


「まさかこれを予測してなかったとでも?」 サンナもそう付け加えた。


「私とエラーラ、それにフィンの三人で、記憶のバックアップを取っておいたの。 もしこんなことが起きた場合(そして実際に起きたけど)、そのバックアップが自動的に起動する仕組みにしてたのよ。」


しかしながら、フィンはどこか落ち込んだ様子だった。


「でも少なくとも…俺たち三人は大丈夫だったけどさ…イングリッドとキラはどうなったか分からない。」


その後、フィンとサンナはエラーラのもとへ駆け寄り、介抱しに行った。 幸いにも、エラーラはまだ無事だった。 もしそうでなければ、事態はかなり深刻になっていただろう。


――【ナレーター:ニルス 再登場】


俺たちはトンネルの中を走っていた。 まるで終わりのない長い通路のようだった。


しばらくすると、歪んだ音が聞こえた。 まるで指を鳴らす音が増幅されて歪んだような感じだった。


「今の音、聞こえた?」 俺はカンヤとキンテンロに尋ねた。


「うん、私たちも聞こえたよ。」 カンヤとキンテンロが答えた。


「自然な音じゃなかったな…」とキンテンロが付け加えた。


すると突然、誰かの叫び声が聞こえてきた。 キラとイングリッドの声のようだった。


「そっちの方だ!」 俺は少し狭い通路を指さした。


狭い通路を抜けた先には、ぽっかりと開けた広場のような場所があった。 その中央では、イングリッドとキラが抱き合っていた。


「えっ、あなたたち誰?」 キラがそう尋ねた。


俺は涙を流しながらキラに向かって走り、抱きしめようとした。 だがその瞬間、イングリッドが先ほど構築していた武器で俺を撃った。 彼女もまた、心臓を狙っていた。


「キラには手を出すな…この変態ロリコン野郎…」 イングリッドは怒りを込めてそう叫んだ。


「なっ…どうして……」 俺は再び口から血を吐きながら呟いた。 「俺は……ニルスだよ。キラの兄貴……」


「お兄ちゃんはいるけど、名前は……全然思い出せない。 でも、あんたじゃないのは確か。」 キラは怯えた様子でそう言った。


その瞬間、俺の心は砕け散った。 (文字通りではない。というのも、心臓はもうとっくに砕けてるし、俺がまだ生きていられるのは、内蔵されたOSとセーフティ・プロトコルのおかげだ。) だけどそれでも砕けたんだ――だって、俺の妹が、もう俺のことを覚えていなかったから。


俺は一度、そっと目を閉じ、そして再び開けた。 目の前の光景は凍りついたかのように静止していた。 けれど、俺は動くことができた。


いや、そこに立っているのは俺じゃなかった。 気づくと、俺は真っ白な空間にいた。 そこには一つのスクリーンがあり、目の前で起きている出来事が映し出されていた。


「待てよ……この感覚、前にも一度味わったことがある。」 記憶をたどろうとし、数秒後――「ああ、そうだ……そうだった。俺がよく感じていた感覚だ。 時々、現実が作り物のように思えて、そのせいでこんな風に感じていた。 でも実際にそうなるなんて、まさか思ってなかった。」


俺の“視界のディスプレイ”は、まるでメディアプレーヤーの動画みたいに一時停止されていた。 そこから少し後ろに下がってみると、 右側にキラの姿があった。


彼女は俺をじっと見つめていた。 その尻尾はピンと張っていて、まるで「警戒してるから近づくな」と言っているかのようだった。


俺は彼女を一瞬だけ見返した。 すると彼女は冷たい声で言った。「何がしたいの?変なことでもさせたいの?……このロリコン野郎。」


俺はため息をついた。 「違うよ、キラ。お前に何か変なことをするくらいなら……俺は自分で命を絶つほうがマシだ。」


「じゃあ……なんでそんな態度なの?」 キラが問いかけてきた。


俺は一瞬、何も言えずに言葉に詰まった。


キラはさらにしばらく待ち、それから口を開いた。 「ほら、やっぱり……あんたって、ただのロリ――」

その言葉を言い終える前に、俺が遮った。


「キラ……」 俺は涙を流しながら言った。 「本当に……俺のこと、覚えてないのか……?」


キラは何も答えなかった。 その瞳は、まるで光を失ったようだった。


「やあ!」 明るい声が響いた。


「…お前、誰だ?」 俺は警戒しながら尋ねた。


「ああ、私は君たちの統合されたパーソナリティさ!」 そのローカルな仮想アシスタントのような存在が答えた。 「もちろん、キラの精神がラースに侵された“前”の状態だけどね。」 そう付け加えた。


「は?ラースが……俺の妹に何をしたってんだ?」 俺は怒りを込めて問い詰めた。 「で、お前の名前は?“アシスタント”なんて呼ぶ気にはなれねぇ。」


「だったらニラって呼んでくれていいよ! 君たち二人の名前を組み合わせたものなんだ。」 そう名乗ったニラは、指をパチンと鳴らした。


すると、その隣に大きなディスプレイが現れ、俺たちの前に映像が流れ始めた。画面の内容に、俺の目は信じられなかった。 だが同時に、フィン、サンナ、エラーラの三人が、自分たちの思考のバックアップをきちんと取っていたことに、 ほんの少しだけ、安堵の感覚が心に染み渡った。


….…でも、やっぱり一番心配なのはキラだった。 (もちろんイングリッドもだけど……)


「……クソッ。」 映像が終わったとき、思わずそう呟いた。

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