90話 和樹のストレス
水曜日。
今日は早朝から家の薬草畑の薬草を抜いて、聖域の土を足して耕し、新たに聖域の薬草の根と茎を株分けして植え直した。地球で育てると少しずつ効果が落ちてくる。抜いた薬草は街で売る用である。聖域産は効果が高すぎて物凄い値段が付いてしまい買い取ってもらえなくなるのだ。
ちなみに本日も外に気配は無い。昨日撒かれて諦めたのだろうか。今のところはストーカーではなくただのファンだった様だ。
しかし息子のイケメン度は更に磨きがかかってきている。
あの子だけが誰よりも薬草魔力草の効果が出ているのはなぜなんだろうか。やっぱり神様は転移させる人間を間違えたのか。
「ちょ!庭にハーブが無いんだけど!」
息子が焦ってキッチンに駆け込んできた。
「一度刈り取っただけだから、また生えてくるよ。」
息子の薬草依存がヤバい。
「なんかあれ飲むと気分が落ち着くんだよ。最近もうストレスが半端なくてあれが無いとか考えられねぇ。」
最近ドライハーブの減りも激しいし、もしかして大量に飲んでいるのかも知れない。
「和樹、もしかして家の周りに居たストーカーが学校にまで来てるのかい?」
夫が言う。
「学校のやつらは店とか家とは別な気がする。普通にサークル勧誘とか飯の誘いとかしつこいけど、別につけられたりとかはしてない。」
可哀想に心が休まる場所が無いのか。
「あまりに酷い様なら警察に相談してみよう。」
「学校はまだ大丈夫。家の前にまで来る様なら次は考える。家に迷惑かけてほんとごめん。」
息子が俯いて辛そうな顔をした。
「和樹、迷惑だなんて思っていないから僕たちにもっと相談してくれないか。」
夫がそう言っても息子はまだ大丈夫の一点張りだ。私は2人の会話に割り込めず、黙ってハーブティーと朝食を用意して2人に食べさせ送り出した。
異世界。
商業ギルドに転移がばれた。ギルドの裏の人気のない場所に転移したら、窓から見ていたギルド長と目があったのだ。
「ユメ様、転移魔法を使える事が人に知られると、商業ギルドでも庇いきれません。有能な魔導士をギルドが独占していると取られた場合、他のギルドや国から圧力がかかるかも知れません。」
「それならそれで、私は別にここに通わなくても良いんだけどね。」
強気に出ると商業ギルドの一室を専用の部屋として貸してくれた。
「気を取り直して、今日は薬草を買い取って貰いたいなと思って来ました。」
私が大量の薬草を出すとエリザさんの顔が引き攣る。
「これは大量ですね……。冒険者ギルドなら貢献度が上がると思いますが……」
エリザさんが何故か渋っている。
「冒険者ギルドはいちいち騒がれるので面倒なんですよ……」
「冒険者ギルドから商業ギルドが買うのが慣例になっておりまして、マジックバッグの事といい、貸しばかりが増えてしまうのは好ましくないというか……。」
大人の事情的なやつかな?
ポーションなら買い取ってくれるというので作ったら、低級薬草から何故か中級ポーションが20本ずつできた。ギルドが用意した瓶に、魔石の粉を添加して劣化防止付与して詰めて渡す。
「この薬草でこの品質のポーションが20本もできるのは想定外でした……。しかもこの瓶の付与は一体……。」
瓶の付与代が発生して、中身はポーション15000ゴルド、マジックポーション20000ゴルド……。
高すぎると思ったから、商業ギルドに借りている部屋の代金にして欲しいと言ったのだけれど却下された。
こんな事の繰り返しだからいち早くここの冒険者が育って欲しいのだ。ここで買うものも無いし、私だけがお金を溜め込むのはこの街のためにならないと思う。このまま私だけがこの街の発展を担うはおかしい。
それでも、私が売るものはこの街に必要だからまた来て欲しいと懇願された。




