76話 初ちゃんの勘と、マジック収納カード
木曜日:地球
「おはよう。律樹さん」
魔力感知で夫の魔力を感じた。彼も魔力が増えている。
「おはよう。驚いたよ。君は後ろに目があるのかい?」
面白い言い回しに少し笑う。
「何となくそんな気がしたのよ」
夫には魔力がある……
私が毎日浄化と回復をしているからなのか、薬草を飲んでいるからなのか、敷地内に魔力豊富な土があるからなのか。
夫の食べる量がやたらに増えているのは、このせいかも知れない。
魔力が増えるとエネルギー消費が増える。スキルを使わなくても。
だけどあのどか食いはない。夫や息子は男性だからともかく、私はアラフォー主婦。いくら見た目が若返ってもあんなにモリモリご飯を食べてはダメよ。絶対に気を付けないと。
「どうしたんだい?唯芽」
「なんでもないわ。朝食にしましょ」
私は念の為夫の魔力を覚えた。魔力感知の中に、特徴を保存できる気がしたのだ。
普段から居場所を探る事はしないけれど、緊急時には助けに行ける。もしも交通事故に遭ったって治癒魔法で助けてあげられる。
朝食の時に、懐中時計の事ですっかり渡し忘れていた宇宙玉のお守りを手渡した。
「これ、お守り、私が作ったの」
「ありがとう。嬉しいよ」
夫はその場でスマホに付けた。
こちらをじっと見ている息子と目が合う。
「あ……和樹も、これ」
「さんきゅ」
ポケットから出すふりをして取り出し、テーブルに置いた。
息子はすぐに手に取って眺めてから鞄につけた。欲しかったらしい。
それから初ちゃんの家に行った。
メイク動画を見て練習していたら化粧品の減りが早いと言うので、今度初ちゃんに私の化粧道具一式と同じ物を作ってあげる約束をした。ちょっとでも出費を減らして欲しい。
これからの事も話し合った。
商品が足りないらしい。でも売り切れる事は別に問題ではなくて、数が少なく手に入りにくい事で価値がつくのも狙いだとは言う。
「イベント出店はやめようと思うの」
「どうして?」
「ブースにユメカが居ると思って買わない人が殺到するのは運営に迷惑かけちゃうし……勘なんだけど、何となく、ダメな気がする」
「勘、ね」
今のペースでドール服だけを売るなら扶養内に収まる。そんなにガツガツ売っていないので。でも収益化したらどうなるかはわからない。全くダメかも知れないし、突然バズるかも知れない。その時は部屋を借りたり、機材を増やしたりして出費とのバランスを取る事になる。
私が、身バレで家族に迷惑がかかるのが嫌だと正直に話したら、ゆくゆくは生配信をやめて手元のみの制作動画オンリーにしてみてはどうかという事になった。
どちらかが事業主になるのかは話し合わないといけないけれど、経営が初ちゃんで、作るのが私、だから経営者が初ちゃんの方が色々な手続きが早いかも知れない。
仕事まで辞めてくれた初ちゃんなら、信じてもいいような気がする。
動画を見てメイク練習してる人は結構いるみたいで、詐欺メイク以外もたくさんのリクエストいただいた。
それから、初ちゃんに異世界の街の事を話したら、危険でなければ見てきてはどうかと言う。もしかしたら私が思い付かない珍しいものがあるかも知れないという。どんな人が居るかがわからないからあまり気は進まないけれど、唯花が行きたがっているし行ってみようと思う。
——
異世界。
今日も実験をした。鱒の魔石でマジックバッグを作って、中に物を入れた状態でそこへ転移して魔石が割れたら中身はどうなるのか。
結果は、その場にばら撒かれた。これは余程のことが無いと初ちゃんのバッグを目標に転移してはダメだ。
というわけで、初ちゃん専用のお守りを作った。初ちゃんのは宇宙玉とは違って、ピンクと白のお花を入れていく。
普通に花を入れたのでは劣化するので、素材加工で、組織が壊れない様に、形を崩さない様に意識しながら水分を除去する。更には素材加工でトラウトの魔石を変形させて花と組紐を覆っていく。
これで花を封入したストラップが完成。ここに、厄除け開運を付与した。
それから、仕事用マジックバッグを作る。
この前倒したボアの魔石をカード型にして財布に入れられる様にした。荷物は小さいに越したことは無いと思う。
時間経過もあるし、容量は2×2メートルくらいだと思うから数セット分の服や小物の在庫は入る。
転移できたら必要な時に届けられるんだけどね……。
良い魔石欲しいなあ……。私は異世界より日本の生活を快適にしたい……。
これって神様や唯花の意思に反する事なのだろうか。




