60話 初ちゃんの指摘
初ちゃんがいきなり、今日行っていいかと連絡をしてきた。とても珍しい。
初ちゃんはリビングに来ると、カーテンを開けた。
「やっぱり唯芽さん家だったぁー!」
ウッドデッキを見るなり叫ぶ。
「これ、主婦ユメカって、唯芽さんだよね?」
「え、えー……」
主婦が手作業でウッドデッキ作ってみた!サムネイルが出来たばかりの目の前のウッドデッキで私自身が驚く。寝耳に水だ。
なんたること。おいこら、唯花!
「いやあ、コンセプトが斬新かなーと思って動画挙げてみたよ。」
目を泳がせながら必死に誤魔化す。唯花よ、サプライズはやめておくれ。私は突然の出来事に対応するのがとても苦手なんだ。
「確かに宣伝効果はすごいね。めちゃくちゃクオリティ高いのに肝心のドール無しでフリマでしか活動してなかったある意味有名な製作者が全く違うジャンルの動画なんて出したから、界隈で話題になりつつあるよ。」
え、宣伝?
私が自分のスマホで動画ページに飛ぶと、ドールハウスも作ってますという見出しとともに、別のホームページのURLが貼ってあり、そこに飛ぶとドールハウスやドール服制作風景の写真とともに、フリマサイトで活動してる旨書かれている。
"えーーー!!唯花ぁー。何してくれちゃってんのー?"
「あの、その。お迎えできるお金も無いし何とか稼ぎたくて」
私はすっかりパニックでしどろもどろである。これでは嘘ついてますと言っている様なものである。
「方向性が完全に斜め上。撮影や販売、手伝うよ?うちの子がモデルやっても良いし。最近自分で服作る事も無くなっちゃったから、唯芽さんが苦手なイベントでの販売も私がするよ?」
え、私イベント苦手ってこの人に言ったっけ?
いつも一定の距離を置いてくれている初ちゃんが初めて私のやる事に踏み込んで来て私は焦る。自分でも一瞬顔が強張るのを感じた。
「そんな、悪いよ」
意図せず拒絶モードが出てしまったのを慌てて隠して恐縮するふりをした。
初ちゃんが大きくため息吐く。
「唯芽さんがお金のために服作りしていて、本当にドールをお迎えする気がサラサラ無いのは見ていて分かるよ。にわかの人が作る作品の方がクオリティ高いなんて、私もうドール服作る気無くなっちゃったんだ。きっと私以外の人も良い気しない。商売続けたかったら敵は作らない様にはした方が良いよ。」
にわか……確かに私は唯花が来てから本気でお迎えするつもりは全く無くなった。
ドールの服を売って、ドールの趣味を持つ人を相手にしながら、その人達がどう思うかなんて今まで気にした事は無かった。
初ちゃんは「今日の話、考えといてね。」と言ってお茶する事もなく帰っていった。
でも私個人の事で初ちゃんを頼る訳にはいかない。
「唯花ぁ?」
「申し訳ございません。マスターがお金に困ってらっしゃる様でしたのでお役に立ちたくて勝手な事をしました。一言相談すべきでした。」
こんな事が無ければ初ちゃんの気持ちはずっと分からなかっただろうけれど。自分で服を作るのも嫌になる程妬ましい事だったなんて知らなかった。
私はもうドール服を作るのはやめた方が良いのかも知れない。
唯花が、ドール服をやめるのならば動画の収益化を目指してはどうかと言ってきた。それってこのまま配信者になるという事か。
ドール服で敵を作るよりは、素人が色々な事に手を出す動画の方がウケが良いのかも知れないけど……。
「顔は出さないからね。」
「じゃあ詐欺メイクで別キャラになりましょう!」
なんにしてもまだまだ収益化の条件は達成できていない。別の商売を考えるしかないか。
さて、異世界では家庭菜園レベルだった農地がえらい事になってまいりました。
今日はインターネットで買った国産小麦種子北麦穂他様々な野菜の種をドライアドさんに預けた。
「品種が違うから今育ててるのとは別にしてね。」
多分、あの紫パッケージのお菓子用小麦粉の原料になっている品種だと思うのだが。お菓子用薄力粉は実はこれしか知らない……。私の知識は興味のある事に偏っている。
実は生アーモンドも預けた。こうなったらアーモンドプードルも欲しいじゃない。時期が違うし育つには3年かかるっていうけど、苗までを植物魔法で育てたら余裕な気がする。
本当は外国に小麦の種子を持ち込むのは良くないらしいのだけれど、外国じゃなくて異世界の私有地だからセーフ?私がここで増やして日本で種子を売ったりしなければ多分怒られないと信じている。
それから、炭ができてきたのでちょっとだけ貰ってアイテムボックスにうつした。炭は鍛治に必要らしく全部は貰わなかった。




