52話 花火と春恋
あと2日でお盆が終わる。
今日は夏祭り。2人で花火を見に電車で出かける。電車も花火の客でごった返す。私は人混みは苦手だけれど、夫が居るとそこまでのストレスは溜まらないのが不思議だ。
こればっかりは異世界に存在しないから、日本人で良かったと思う。調べれば錬金術で作れるのだろうけれど、炎色反応?私は化学は大の苦手なのだ。
花火は食べられないし節約どころか贅沢品である。そして大勢の人が集まって楽しむ物である。そんなものを自分で作りたいとは微塵も思わない。
休みの日はいつもテレビを見たり家でのんびりしているのに今年のお盆は、夫が色々なところに連れて行ってくれる。
もしかして気を使われてるのだろうか。
もう良い年なのに、出かける時は必ず向こうから手を繋いで、出会った頃の頼りない私のイメージがまだあるのだろう。人混みでは特にそうだ。人が沢山居ることへの私の不安が伝わってしまっているのだろう。
だけど、さすがにもうはぐれても1人で駅まで行けるし、危なっかしい事もしないのだけれど。
「また考え事?」
「ううん。疲れたら帰るからすぐに言ってね。」
「最近は体力がついてきたんだ。今までは無理だったけどね、今年は大丈夫。最後まで楽しもう。帰りの電車は混むけど、君は僕より体力があるから大丈夫だろう?」
慣れない夫の煽り文句が似合わな過ぎて思わず笑ってしまう。
「気を遣わなくて良いんだよ。君は好きな事をして笑っていた方が良い。」
帰りの電車はぎゅうぎゅう詰めだったけれど、夫が私を守るように立ってくれたから思ったよりも平気だった。それも良い思い出になったよ。
――――――
「おかえりなさい!マスター!認識阻害を覚えました。もうバッチリですよ!」
カウントダウンが近付いてくる。
「ほっていってココちゃん寂しくないのかなぁ……」
ココは走ってきて、甘えている風に擦り寄ってくるけどなんだかわざとらしい。ココにも気を遣われているのか。
今日は小麦の収穫が終わって干されていたので、錬金術で水分を抜いて脱穀した。水魔法や風魔法、植物魔法でもできそうだけれど、最近は好きじゃない作業は錬金術でサクッと済ませる様にしている。そうでないと時間が足りないのだ。
最初の頃みたいに頭を使えなくなってきている。本来なら私が錬金術頼みじゃない魔法の使い方をココに見せてお手本になった方が良いんだろうが。
拾ってきたのは私なのに唯花に任せっきりだよ。反省。
小麦は更に水分を抜いて1/3を製粉した。残りは種と、ココの餌だ。彼女は実は肉の方が好きらしいし、自分で狩りにも行けるから必要無いんだけれど、本来はココのために作ったものだから。
最初の収穫だから、もちろん神様にも感謝のお供えをした。
品種はパン用の国産小麦。ゴリ押しで夏に植えたが、春恋である。本来こんな暑い時期に育てるものでは無いと思うが、聖域で植物魔法で育てるなら気候も季節も関係ないのだ。特に精霊さんが来てからは凄いの一言だ。
春恋で焼いたパンはもちもちで風味が良いんだよね。
実は昔パン作りにハマった時に何種も小麦粉を試した。個人的には食パンやバゲットなら金小舟が窯のび、膨らみも、食感も一番私好みなのだ。最強力粉なのにそんなガチガチのハードにはならないし、ボリュームも出て失敗しづらい。何の粉が好きかは本当に好みである上に、私は少数派であると自覚しているので賛否はあるだろう。
だが今回はあえて春恋だ。
春恋は香り豊かで味わいも濃く、クラムはもちっとやわらかな食感で日本人好みだと思う。きっと…というか夫や息子は確実にこちらの方が好きだろうなと思ったのもある。
最初に春恋のパンを食べた時は小麦粉によってこんなにも個性が違うのかと衝撃を受けた。初めて使った時は膨らみが悪かったりもしたけれど、昔も何度も練習はしたし、万が一失敗したとしても今回は調整しながら発酵スキルを使えるから使いこなせる自信はあるのだ。
ああ。今からパン作りが楽しみだ。
唯花 レベルなし
ゴーレム 製作者唯芽
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