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48話 墓参り

8月12日月曜。今日からお盆だ。

唯花にはお盆が終わるまで家に来るのは待って欲しいとお願いして、聖域でお留守番してもらう。その間は聖域の農作物の管理をしてくれるそうだ。

 

夫と息子と朝早くからお墓参りに来ている。

お墓とお墓の周りをきれいにして、お花を活けたら線香に火をつけた。

みんなで手を合わせる。

 お義父さん、お義母さん、素敵な家をありがとうございます。勝手にお庭をいじってごめんなさい。律樹さんと和樹と楽しく暮らせています。私達を見守ってください。


「え、待って、今お墓が光ったんだけど。」

 息子の声に目を開けてお墓を見ても光ってはいない。

「和樹……母さんじゃあるまいし、突拍子もない事を言うものではないよ。」

「律樹さんそれどう言う意味?」

 内心ヒヤヒヤしながら見間違いじゃない?と誤魔化して車に乗り込むと帰路につく。

 

 神聖魔法かなんか発動した?魔法って任意じゃなかったっけ?

 

 何にしても光ったのが私じゃなくて良かったと胸を撫で下ろす。うっかり魔法が発動しない様に今まで以上に気をつけないといけない。今や人とは思えない恐ろしいステータスになってしまった事を、絶対に家族にバレる訳にはいかないのだ。



「それは故人がお墓を通じて祈りに返事をしてくれたのだと思いますよ。和樹さんには神聖魔法の素質があるのかも知れませんね。」

「えっ。和樹は異世界に来たことは無いよ?」

と言うと唯花から意外な情報がもたらされた。

「神から与えられた知識の中に、他世界でも存在が見えるという人は時々いるという情報がありました。」

 地球でよく聞く視える人達はどうやら本当に居たらしい。

「ちょっと待って、私には視えなかったけど。」

「それはマスターが神聖魔法を強く封印しているからですね。」

 そういえば、絶対使わないと誓った。

「息子の神聖魔法も封印してあげられれば良いのだけど……。いじめられたりしたら可哀想。」

「何を可哀想と思うかは本人次第だと思いますが……」

 そうかも知れない。今度視えると言った時は否定せずに真面目に聞いてあげよう。

 もし今後も起こる様なら、家族のステータス確認をする覚悟も決めないといけない。ただ、考えてみたら従魔じゃないから名前と状態しか見られない可能性もある。

 

異世界。

「あ、そうだ。この世界に綿花ってある?見つけたら欲しいのだけど。布の材料が無くて。」

「ありますが、見つけられるかは分からないですね。服の材料ならば、ホワイトシープはどうでしょう。群れを見つけて狩りまして。解体しましたのでちょうど今あります」

「えー、ウールで夏物服ってできるの?」

「織り方を変えれば夏物にもできますよ。綿花も探してみますが、綿や種を取れるのは1カ月は先ですね。」

 それから唯花と足りない素材について話し合った。お盆の間に拠点の充実を考えてくれるらしい。



13日火曜日

 お母さんが来た。

「先日は突然お店に行ってご迷惑をおかけしました。」

「いいえー!来てくれて本当に嬉しかったのよー。」

玄関先でお母さんと夫が頭を下げあっている。血の繋がりが無いはずのこの二人は何故かちょっと似ているのだ。

「お母さん、上がってよ。」

「婆ちゃん!いらっしゃい!」

 息子がお母さんの荷物とお土産を受け取り、手を引いてリビングに案内し、座らせた。

お母さんがお土産に牛肉を持ってきてくれるとの事で、私は到着の時間に合わせてすき焼きの準備をしていたのだ。お手拭きを渡し、皆で手を拭く。

「和ちゃんのお陰でお店が大流行りでね。助かってるんだよ。でも夏休みが終わるまでにバイトが見つからなければ夜営業のみに戻すしかないねぇ。」

うちは割下じゃなくて、焼いた肉の上に直接砂糖、醤油と入れていくスタイルだ。まずは牛脂を溶かしてお肉から調理。その間に皆は卵を割って溶く。私は皆の後、いつも最後に一口目を食べると決めているから、必然的に最初の肉を焼くのは私だ。

「婆ちゃん、学校始まってからも夜の営業なら手伝えるよ。」

 私が食べ終え、みんなが最初の肉の味見を終わったのを確認したら、待ち構えていた息子が横から素手でどさっと野菜を入れてくる。おい、素手はやめろ。そして春菊は一番最後だ!


「和ちゃん、学生は勉強が本分だから、婆ちゃんそこは疎かにして欲しくないんだよ。唯芽もそう思うだろう?」

お母さんが野菜の盛り籠をさり気なく息子から取り上げて手早く菜箸で野菜を整え、鍋の中にきれいに盛り付けながら入れていく。もちろん糸蒟蒻は肉から遠いところへ。さすがお母さん、分かってらっしゃる。


夫は所在なさげにしている。

奉行が多すぎる時は争いに巻き込まれる前に空気に徹するのが正解だ。


「そうね、それに問題はランチ営業の事だから。」

だから夫からそんな言葉が出るとは思わなかったのだ。


「唯芽がもしもう大丈夫そうなら、手伝いに行っても良いんだよ?昼間だけなら。」

「でも律樹さん。」

お母さんは渋い顔をした。


「もう20年も経つんです。彼女はこのままでは前に進めません。唯芽が自分で決めて思う様にすると良いよ。」

20年前、何があったっけ。覚えてないな。でも

「じゃあ手伝いに行きたい。お母さんの力になりたい。私助けられてばかりだから。」


 お母さんがすき焼きを仕切り始めてからの安定感がすごい。驚くほどの手際の良さと美味しさで、皆が安心して満腹まで食べた。


そして、夏休みが終わってから私が母の店に昼間手伝いに行く事が決まった。



異世界に行くと、機織りしている唯花が振り返って笑顔で言った。

「おかえりなさい。マスター。」

「機織り機と糸紬機、作ったんだね。」

 いつの間に木工スキルを??

ココは的に向かってウインドカッターを放っているが、聖域の木で作った的には傷一つ付いていない。


 待って、昔燻製機破壊した私は一体何?!

 

「綿花は残念ながら見つかりませんでしたが、カイコがおりました。マスターは虫がお嫌いとは理解しておりますが、どうか拠点で飼う許可を頂きたいのです。」

「区画を決めてその外に出さないなら入れて良いけど、私はお世話できないよ…。」

「そうですね。良い方法を考えてみます。実は蜂も安全なここに住みたがっていますが、世話が必要無ければ移住させても大丈夫ですか?」

 あそこに行けば良い感じに熊が狩れるのだけれど、毎回囮にするのはさすがに可哀想か。ハチミツをくれるあの子達にも報いなければ。

「わかった。唯花にお願いするよ。」



 現在の地図

       川


      高杉君の聖域      蜂の巣

     1空き地2空き地3空き地

     1コーン芋畑 2堆肥3空き地

     4薬草5小屋、窯、6りんごの木

栗の木  7麦  8資材置き場 9空き地

     10空き地 11空き地 12空き地




ちなみに唯芽は潔癖ではございません。彼女の中には皆を不快にさせない様に鍋奉行は素手で調理しないというルールがあります。

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