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39話 熊との遭遇

金曜日

「おはよう。もう大丈夫?」

目玉焼きを焼きながらお弁当を入れていると息子が私のそばに来た。

息子は休みなのに最近は必ず朝食の時間に起きて来る。

休みの日は起きる時間に干渉しないルールだけれど、近頃私の体調がとても気になるみたい。


「おはよう唯芽。和樹。」

「おはよう。2人とも。昨日は寝過ごしてごめんね。」

息子がトースターにパンを入れようとする。

「あ、私やるよ。座ってて。」

昨日も迷惑をかけたというのに名誉挽回のチャンスを私に下さい。

「母さん何でも世話焼きすぎ。子供の成長妨げる気?今は男でも朝食ぐらい用意するし、洗濯だってするんだよ。」

おうふ。確かにそういう価値観もある。

「俺将来なんもできねー男とか言われたくねーんだわ。これからも家事手伝うから。これは、配慮じゃなくて俺がやりたい事なの!いい?」


私の拘りで息子の成長を妨げるのはダメだ。

それはダメな母親のする事なんだ。


「ご、ごめん。」

「ああもう!何でもかんでもすぐ謝んな!」

どうしよう。息子がめっちゃ怒ってる。

私はすぐに人を怒らせてしまう。

「ごめ、ごめん。ごめんなさい。」


私は人の気持ちが分からない人だ。

私はだめな人間なんだ。

またお父さんに怒られる。


「ごめんなさい。ごめんなさい。」

「唯芽、落ち着いて。大丈夫だよ。パンは和樹に任せて、とりあえず座ろうか。」

「…母さん、怒鳴って悪かったよ。言い過ぎた。」

そうだ、息子は謝られるのがとても嫌いだ。

お礼、息子にはお礼を言わないと。

「ぱ、パンを、や、焼いてくれてありがとう。」

そうか。手伝ってくれるのなら、皆がやりやすい様に環境を整えないと。

挽回しないと。


 私は川田さんを避ける為早めにゴミ出しに。川田さんには申し訳ないけれど、私は今日、話す気分じゃないんだ。


今日は薬草を多めに摘んで、ブレンドし水分を抜いて乾燥させ木のスプーンと一緒に瓶に入れた。


薬草畑は私の趣味だから夫も息子も気を遣って触らないでいてくれる。でも時々冷蔵庫にハーブティーのストックが無い時夫がちょっと残念そうにするんだ。


なので、瓶に淹れ方のラベルを貼って2人でも淹れられる様にしたよ。


私はこういう作業が好き。

この作業は楽しい。


今日はいくらの醤油漬けを仕込んでから、すっかり忘れていたお盆用の自分の服を作った。いくらは普通サイズで良かったと思う。

来週から息子のバイトが始まるので、息子用に作務衣も作った。

 

 ――――――

 異世界。

ここに来るととても気持ちが落ち着いてくる。


ココがサンドバッグを蹴っていた。戻ってくるサンドバッグを転がって避けては蹴る。早速受け身を活用している。体の動きもキレが良くなったかも知れないと思う。

 

やっぱり魔物だから、体を動かして遊びたいのだろう。


今日も探索をする。私はトラウトの魔石で養蜂用の防護服を作った。数が居るけれど弱そうではあるし、万が一の時はドーピングして結界を張るか転移で逃げられるから多分余裕だ。

 

ハチミツを定期的に採りたいのでなるべく倒さない様に言い聞かせてココを連れて行く。

目的地に大きな気配がある。ボアかな?そっと見に行くと、なんとクマだった!倒れた木の横に座って蜂の巣を食べている。

 

「ピィー」

 

 ココの激しい鳴き声に熊がこっちを見る。今日美味しいハチミツを採りにいく、定期的に取るので絶対に蜂を食べないようにとこんこんと話してあったので、横取りされた上に蜂ごと食べられているのを見てココは怒り心頭である。

 熊が蜂の巣を置いてゆっくりココに向かってのそのそ歩いて来たので、私はココを抱き上げた。

 熊はまだ距離があるのにいきなり立ち上がり腕を振り上げた。何をするのかと思っていたら、手の先に火の玉が生まれはじめる。

 私は即座に火を消すイメージで大量の水をぶっかけた。土魔法で足元に大きな穴を開けて熊を落とすと、上まで水を注いで出てこられない様に土の蓋をして聖域の大岩を重しにして乗せた。


 トドメだけはココに譲りたかったけれど、土の蓋のせいで鑑定ができない。もし蓋を開けて出てこられたらと思うと危なくて完全に意識が無くなるまでは外に出せない。

 完璧だと思っていた秘策が、全く使えないことにがっかりする。


 半分くらい破壊された蜂の巣のそばには傷ついた蜂が転がっていた。私は治癒魔法をかけた。残念ながら死んでしまった蜂もたくさん居たみたいだけれど、傷が癒えた蜂が私の周りでホバリングする。

 この蜂はデリシャスハニービーというらしく、ハチミツも蜂の巣も非常に美味しいらしい。

まだ私の従魔ではないけれど、何となく仲間だと思われていそうだ。だけど、この数に名前をつけるのはちょっと無理だと思う。見分けもつかないし。多分私には飼う事もできない。


とりあえず急拵えだけど、足つきの鳥の巣箱みたいなものを木で作って、その中に壊された蜂の巣を置いた。巣は結構大きいが何とか入った。慌てていたので、間違えて聖域の木で作ってしまい、うっかり聖域になっていたけれど、ミツバチも巣も無事だった。

「これで熊が来ても大丈夫だね。」


 熊は死んでいたので鑑定する。名前はブラックベア。

 日本のヒグマは見たことは無いのだが、最大でも3メートルぐらいだと聞いたことがある。おそらくこの熊はそれよりかなり大きい。それが普通に黒熊という名前であり、一体異世界の生き物はどうなっているのかと私は困惑する。見た目は黒いが火属性で、非常に美味しくて食べられるらしいけれど、私は熊肉なんて調理した事はただの一度もない。一般家庭の夕食に熊肉が出て来たらびっくりである。

 ココが食べると思うので、とりあえずまあ、持って帰って拠点で解体しようと考えた。

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