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37話 異世界で迷子になったので今日からがんばる

水曜日:地球

久々にお母さんがうちに来た。息子に会えて嬉しそうだった。

最近ちょっと営業がうまくいっていないらしく、ランチ営業しようか迷っているけれど、従業員の問題があるとか。

「俺ちょうどバイト探してたんだ。夏休みの間なら俺手伝えるから、その間に求人出してみたら?」と息子。

早速来週から平日のみでランチ営業を始めるんだとか。疲れているみたいだったからハーブティーを出した。


お母さんと2人でスモークトラウトの握り寿司を作った。

「なかなか良い鱒だねえ!こんなのよく手に入ったね!」

お母さんは嬉しそうに鱒をまじまじと見つめ、思わず一つ、口元へ運んで目を細めた。


「スーパーの朝一で買ったの。たまたまだよ」

「ああ!あのスーパーかい!あの朝一は結構行列ができるけど駐車場がいっぱいになるんだよねぇ」

「え、母さんあんなとこまで行ったの?!」

「確かに、かなり遠いね。バスで行ったのかい?」

「えっと、クーラーボックス積んで自転車で」

「は?!無茶すんなよ!危ないだろうが!」

「ご、ごめんなさい」

「和ちゃん、この子の無茶は今に始まった事じゃないから、あんまり大声出さないでやっておくれよ」

「わ、悪ぃ。母さん怒鳴ってごめんな」

「し、心配、してくれて、ありがとう」


それから、スモークサーモンをお裾分けした。

「また新しい料理ができたんだね!」

「おっきな燻製機作ったの」

「お前は本当に努力家で偉いねえ。さすが私の子だよ」

お母さんは私の腕を優しくポンポンと叩いた。


「婆ちゃん何それ。遠回しに自分が偉いって言ってんじゃん」

「はははは。当たり前さ!この子の料理は私仕込みだ」


お母さんは、私がスモークサーモンを切り分けるのをじっと眺めていた。

お母さんは私が料理をすると本当に嬉しそうにする。だけどスモークサーモンなんて、道具と材料があれば、あとは作り方を知ってるかどうかだよ。できる様になるまで何度も何度も作ればいいもの。


家族は自分が作り方を知らないものを作るとすごいというけど、知ってるかどうか、やるかやらないか、その違いなんだってみんな(・・・)言ってた。

お母さんの方が何倍もすごい。毎日決めたおんなじ料理たくさん作って、お金の計算もして。そんな凄い人が私がやる事を喜んでいつも褒めてくれる。だから私は、何でもチャレンジするんだ。


——

異世界。

今日もココとお散歩。お魚は難しいみたいなので狩りがしたいと敵を探している。ボア君みたいな強い敵を拘束してトドメだけをココにさせたら良いのだ。

もし私がいなくなった時のためにしっかりレベルアップさせてあげなくては。


大岩のところに転移で来た。聖域間転移なのでMPは減らない。北と東は探索したから、次は西に行こうと思う。

グレートファングボア、見つかるだろうか。気配察知には何も反応が無い。


今日は秘策がある。グレートファングボアは攻撃の予備動作が長い。相手より先に見つけて拘束すれば勝ったも同然だし、もし見つかったとしても突進するまでの溜めがあるので今なら無傷で逃げられる。

静かに、なるべく音を立てずに歩く。何か居た!と思ったら凄いスピードで気配が遠ざかっている。もしかして避けられている

それからも何回か気配があったのに全部に逃げられてしまった。

「私はまだレベル19なのに。某ゲームなら転職もできない弱さなのよ?」

職業システムはあるのだろうか。


こちらの方にそれなりに魔物がいると分かった!今拠点から北西のつもりなのだけれど、魔物を探すのに夢中で現在地が分からなくなってしまった。

コンパスを見ながらココと南東へ向かう。


気配察知ばかりで探していたけれど、魔物にも魔力あるから魔力感知で探そうとした。が、空気中にも木にも草にも微量に魔力があるから選別が難しい。

足音を立てない様にと緊張して体力が消耗する。

アイテムボックスからポーションと魔力ポーションを口の中に直接取り出して飲み込む。ココにも与えて上を見るとかなり大きな栗の木だった。まだ実は取れなさそうだ。


気配察知に小さい反応があって上を見たらリス。だめだ、魔物が全く見つからない。歩いていたら……遠くに結界が見えてきた。

南西7番穀物畑。


「思ってた場所と違うじゃないの!」


疲れたらしいココが巣に戻った。

私は小屋で、忘れないうちに今日歩いて来た道を紙に書いた。

今まで意図的に異世界の事は紙に残さない様にしてきたけれど、このままではダメだ。


これまでやってきた事も起こった事も、時系列順に書く。思いつく限りこれからの予定も箇条書きにした。やる事の中には家の立て直しやハチミツ採取などもあった。優先順位や期限も書き足していく。


目の前の事ばかりですぐ忘れてしまうのだから、予定表を作って把握しておかないと。

「これで、いつここへ来ても大丈夫だわ」


アイテムボックスに入れておけば見つかる心配は無い。

思えば最初に出会ったボアがイレギュラーだったのだ。ここへ近付くにつれて魔物が少なくなっていき、最後にはリス。神様は私が死なないように考えてくれていた。


これからはちゃんと毎日スキルも確認しないと。

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