31話 夫の危機感が足りない
金曜日
今日は曇り空、今にも雨が降りそうだ。
そんな天気にも関わらず今日の私は超冴えている。たまに来るのだこの冴えてるモードが。
ゴミを出しに来ると、川田さんが居た。最近エンカウント率が高い。川田さんはちょっと興奮気味に声をかけてきた。
「今朝旦那さんに会ったわよ〜。痩せてスタイル良くなって羨ましいわあ。ハーブティ飲んでるんだって?」
さては川田さん私のガードが硬いから家の前で待ち伏せして夫に聞き出したな?だって夫は車だからばったり出会うはずがないのだ。
怖いな川田さん。しかも夫も夫だ。あっさり話してしまったらしい。
「お、おはようございますー。」
夫が出掛けた時間からここに居た訳ではなさそうだが、詳細を聞く為にまた私を待ち伏せしていたのだろうか。
夫は女性のこういう欲求を舐めていると見える。人付き合いは完璧に見えて美にだけは疎い夫である。警戒心の強い息子だったら川田さんに聞かれても絶対に話さなかっただろう。
おっと。比べてはいけない。2人は別の人間なのだ。私だって比べられるのは嫌だ。人の嫌がる事はしてはいけないといつも父が言っていただろう。最近どうも気が緩みすぎている。
私は川田さんに対してすっかり警戒モードである。
「実は内緒で食事の管理してるんですー。本人は気付いてないから絶対に言わないで下さいね?」
完璧に誤魔化したつもりである。最近前にもまして息を吐く様に嘘がつける様になってきた。
こうもスラスラ嘘が吐けると時々自分が恐ろしくなる。時々自分の本心が迷子になる時があるのだ。
お直ししたスーツをクローゼットに片付けて、残り半分もお直しする。うっかり素材にしそうなので錬金には気をつける。これはダメ、とマーカーを付ける気持ちで収納すると、安全な場所に入った様な感覚はする。本当にアイテムボックスは不思議なスキルだ。これだけ万能なのにまだ使い勝手が良くなるとは。
それから、鶏の飼い方をちゃんと調べたら、虫じゃ無くて魚粉でも良いとわかった。とりあえず鰹節と煮干しを持って行くけれども、家にある分では全く足りる気がしない。全部持っていくと出し汁が作れなくなる。
そして昼からは鶏の処理を考える。
砂ずりも肝も軟骨も何もかもが大きい。それに何より鶏皮がぶ厚すぎるのが悩ましい。皮と身を別に調理するしかない。一度皮を剥いで皮無し鶏ももをどうしようかと思案する。
「皮がない鶏ももなんて。ん?まてよ?」
ふと思いついて、皮を錬金術で薄く伸ばし、身に圧着したらできてしまった。身も分厚いし不自然な見た目になってしまったからカモフラージュは必要だが、これで鶏皮問題が解決した。
夜は鶏と大根の甘辛煮と揚げ出し豆腐である。
「おお。これは…!味が染みて旨味も濃くて凄く美味しいよ!」
いつもふんわり褒めてくれる夫だけれど、感嘆詞付きの具体的なコメントが出るのは本当に美味しい証だ。珍しくおかわりもしていた。
「めちゃくちゃ美味しい!白飯が進むわ。」
息子も絶賛している。鶏肉の勝利である。
やはり異世界の肉は美味しい。
異世界は雨だ。
どうやらこちらも雨季らしい。あまりに雨が多すぎる。雨量など日本以上なのではないか。
甘辛煮があまりに美味しくできたのでお供えした。神様は喜んでくれているかな。
雨だというのにココは畑を走り回っている。
汚れるよーと抱き上げて浄化。飛び降りて走り回る、追いかけて抱き上げて浄化の繰り返し。もうきりがないので走らせておく事にした…。
子供とはそんなものだと昔を思い出し懐かしくなる。それでもうちの息子は大人しい方でかなり育てやすかった。しばらくしたら飽きたのかココは屋根の下に戻っていた。
ん?!さっきまで泥んこだったココが綺麗になっているぞ?!
ココが浄化を覚えた……
これはもう英才教育を始めるしかない。だけどネックは魔力の低さ。聖域内なら何とかなっても、そんな癖を付けて森に出てMP切れで魔法が発動しないというのは命に関わる。
とりあえずちょうど雨が降っているので水で玉を作ってココとボール遊びをした。水魔法は覚えなかったけれど。魔法ってどうやって教えたら良いのかな?
名前 ココ レベル1 唯芽の従魔
ビッグジャングルフォールの幼体 メス
HP 71
MP 28
力 13
体力 36
素早さ 27
器用さ 11
魔力 14
運 17
スキル 浄化




