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1話 私の想像力が貧困すぎる

【読者の皆様へ】 本作は第150話以降、心理的負荷の強い描写が含まれます。詳細な警告事項は作品トップページに記載しています。

私は久我唯芽(くがゆめ)38歳主婦。夫は久我律樹(くがりつき)49歳会社員、息子は久我和樹(くがかずき)19歳大学生。

義両親が残した古くて広い木造住宅に去年引っ越した。


それ機にパートを辞めて私は主婦になった。


私が高校時代母の居酒屋の手伝いをしていた時に常連だった夫と出会った。その頃のお客さんはお酒の勢いで絡んだり粗野で苦手な人が多かった中、夫だけは、当時人見知りで無愛想だった私を気遣ってくれた。忘れもしない高校3年の冬に私から告白して勢いのまま卒業してすぐ結婚した。


私はフルーツを選別して箱詰めするパートをしていたけれど、一昨年お義父様が、去年追うようにお義母様が亡くなり、夫はこの家を相続した。


夫は私に気遣って実家とは距離を置いていたので、その償いもあり、これからは私が夫の実家をしっかり維持しなくてはいけないのである。


実の所仕事に関してはようやくやめられてホッとしている。

それは私がコミュ症だからだ。


この家、部屋数は多い上に庭が広くて、実は維持が大変。夫は働いてくれていて息子は大学生、私は専業主婦、暇な私がやるしかない。


ちなみに私の趣味は歌う事と料理である。子供の頃母の居酒屋にはカラオケセットがあったから、昼間はタダで歌い放題だった訳である。子供が家に遊び道具があってハマらない訳がない。


ところで元来凝り性な私は好きな事を全力でやり過ぎて度々変人扱いされてきた。だが世間には、私の様な女が人前に出て張り切ってはいけないという何やら暗黙のルールの様なものがあるらしい。


理不尽で面倒臭く、とても生きにくい世の中だと思う。


だけど、料理だけは周りから見た私のイメージに合っていたらしく、力の限りやっても誰も私を咎めなかった。母が飲食業だからだ。母は料理がうまくできるとことさら私を褒めてくれた。

結婚してからは何もかもを全力でやるには時間がなさすぎたのもあって、家事の一部である料理が自然と私の趣味になった。


そういう訳で色々な事を諦めてきた私だが、今新たな趣味に挑戦しようとしている。それは家庭菜園!!


季節は夏。


放置していただだっ広い裏庭で、必死に雑草を抜いている。

庭の一部を家庭菜園にできれば、私の料理の趣味も捗るというものよ。

裏庭は目につかないからつい放置してしまう。


義両親が残してくれた立派な家。そしてものすごく大きな裏庭。憎き雑草は1日で私1人で抜いてしまう事は不可能だ。今まで全部やろうとして何度となく失敗してきたが、今日の私は違う!


一部だけを使える様にすれば良いのだ!


「ああ、草刈機欲しいなあ」

ちなみに草刈機は今までの人生で触った事もない未知の機械である。買うには少しハードルが高い。

「しまいにコンクリ打ったろか。腹立つわー」

コンクリートを打つと家庭菜園はできない。本末転倒である。私は痛くなった腰を伸ばそうと立ち上がった瞬間立ちくらみがした。


目を開けると何故か森の中に居た。

頭の中に、意識と同時に言語化される前の何か意思のようなものが直接刻まれた気がした。


[ステータス閲覧機能を解放しました。ステータスと念じてください]


は?


試しにステータスと念じると頭の中に情報が浮かぶ。ずらりと並ぶゲームの様な項目の最後には


[スキル習得率アップ][アイテムボックス]の文字。


アイテムボックスの使い方が何となくわかる感じがしたので試しに石を拾って収納してみた。


「ほ、ほんとに消えた!」

どこに行ったのかと考えると、頭の中に『聖域の石×1』と浮かぶ。

「聖域……?」


周りを見渡すと柵で四角く区切られている真ん中に私は居た。足元には鬱蒼(うっそう)と草が生えている。

「雑草に縁があるよな……」

微妙にベビーリーフに似ているが、ちょっと違う。見たことのない感じだったので観察していると、ふいに文字が頭に浮かんだ。


[薬草]


もう一度ステータスを見るとスキル欄に鑑定が追加されている。とにかく情報が欲しくて手当たり次第に鑑定した。


まず私が居るここ、柵で囲まれた10メートル四方のこの場所を聖域というらしい。柵の外側はバロア大森林。大森林と聖域の境目には結界があるらしかった。

足元に生い茂ってるのは薬草と、薬草と似ているけれど縁にかけて赤っぽい色になってる魔力草があった。石ころや大きな岩も結構落ちているし、木も生えている。


「待って、雑草トラウマで夢にまで見るとか意味不明なんですけど。普通は異世界って言えばお城でしょうが。つか私の想像力が貧困すぎる」


思わず乱れてしまった言葉に私は咳ばらいをした。

その時どこか遠くで音楽が聞こえた気がした。その音がだんだん大きくなってきて気が遠くなる。


ガバっと飛び起きて周りを見回すと見慣れた雑草まみれの庭だった。 


間違いなく自宅の庭だ。


ポケットのスマホが鳴っている。

見ると通知には『買い物』の文字。


「もうこんな時間じゃん。アラームのお陰で助かった……危うく熱中症になるところだったよ……」

私はアラームを止め、咳払いして周囲を伺った。


名前:久我唯芽 (くがゆめ)

レベル1

HP 32

MP 50

力 12

体力 16

素早さ 9

器用さ 28

魔力 25

運 18

スキル習得率アップ アイテムボックス

鑑定

初めての長編です。拙い文章ですが、暖かい目で見守っていただけたら有難いです。どうぞよろしくお願いします。

【2026.1.9 追記】

2025年1月の完結から、今も多くの方に読んでいただけて、おかげさまで30万PVになりました。ありがとうございます。

もし気に入っていただけましたら、

【☆☆☆☆☆】から評価をいただけると嬉しいです。

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