転生したら蛇なんて、最近はよくあるよね
‥‥‥‥まぶたの裏側から少し光が滲み、意識をだんだん取り戻させていく。
目を開けば、異常に大きな木々や草むらに囲まれ。今までは見たこともない景色に囲まれていることを無理矢理にでも認識させられた。
「‥‥ここ、ドコ?」
なにもかもがわからないが、一番不安なのは先程から両手両足の感覚に違和感があるということだ。痛みや痺れというような不快のある違和感ではない。文章で起すとなると表現の方法が難しいがしかし、私の思い描く身体に必要なものが決定的に欠けているようなそんな感覚だった。
そんな嫌な感覚を覚えつつ、自分の身体を見てみると手も足もなくそこにはスリムで長い身体にうっすらと鱗のようなものが着いている姿であった。
人間と言うのは、とてつもないパニックに見回れると一周回って冷静になるものらしい。そんなどうでも良いことを考えながら私は無意識に呟いていた。
「‥‥‥蛇ですやん」
これが私の異世界生活の一日目であった。
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蛇として異世界に来てから、今日で記念すべき一週間が経過した。今のところ集まった情報は、この森近辺には私でも食べられるような果物があること。そしてこの森には私よりも強い生物が多数生息していることだ。
というか私より弱い生物の方が少ないレベルである。
そんな私だが、このまま森のなかで生活していても一向に埒が明かない。というかどうしたら良いのかすらもわからない。
そんな私の、異世界での生活の唯一の娯楽は睡眠をとることであった。
これには少し理由があった。
どうせ、今のままの小さい姿であちこち回るよりも眠りについて、サイズが大きくなるのを待ってからでも遅くないのでは?
という少しまともそうな理由を着けた現実逃避である。
しかしそんな彼を責める者も止めるものもいないため、彼は自分自身が寝やすそうな場所を探しだすとその上に身体を丸めて寝てしまった。
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????日後
既に異世界に来てから、何日経ったかもわからないが果物を食べて寝る生活にも数年が経過した。
前までは日本でも良く見るような小さなサイズの蛇だったが、今では頭の数が8本にもなり、その身体の大きさは山の一部と言われても納得のいくような巨体にまで成長を遂げていた。
流石にこんな変化が起こるとは想像だにしていなかったが、それもまたひとつの楽しさとして受け止め、今日もまた果物を食べて睡眠をしようと思っていたところに、彼は現れた。
明らかに通常の生物が持ちうる力を、超えた存在。
言うなれば超越者とさえ言える者。
その者は、『始まりの死』『死の獣』『神殺し』など様々な敬称で呼ばれるがこの世界でもっとも馴染まれている呼び名は俄然これだろう。
『魔王』
この世の中の魔族、その頂点に立つ存在が目の前に現れたのである。
『‥‥‥どうしよう』