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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

癒されるから生きていけるんだよ、きっと。

作者: れい馨

「癒し」は必須、ですよね。


人はそれぞれ、見えないいろいろなモノを抱えて生きてる。

たとえ幸せそうに見えていたとしても。

幸せの基準はそもそも千差万別。

他者との思考回路の違いを前提に、

誰かを物差しに考えることを止めたら

きっとみんな楽に生きることが出来る。

誰よりも自分を好きになればいいだけ。


★続編を書けたら嬉しいな、と思いますが…

読んでくださった方が「何か」を受け取ってもらえるような

そんな作品でありますように。

 気が付いた。

 そうか、これが自分の使命なのかも、て。


「キス…しても、いいですか?」

 あ、また。て思う。


「いいよ?」

 断ったことは無い。 減るもんじゃないし、て思う。

 飲みに行く相手はそれなりに気に入ってるか、不快感の無い人間。

 飲み屋でのキスはたいていライトだし、大抵相手はオンナの子だから可愛いもの。


 唇を軽く合わせた後はみんなとてもイイ顔をする。

 恥ずかしそうな、それでいて幸せそうな。


 些細な手当。

 うん。無害だからね、私。

 だって女のコだもん。



 デートて、楽しいなぁて普通に思う。

 今の彼氏は三年間も続いている3つ年上のエイイチ。私の最高記録だと思う。

 外見はごく普通レベルだけれど、どこに行くにも率先して計画してくれるし、頼りがいがあって想いやりがあって優しくて。一緒にいるといつも笑っていられた。

 でも、もうお終いにしようと思う。

 私から言い出さないと、私たちはどこまでもこのままだから。

 エイイチは既婚者。子供もいる。

 このフレーズで途端にエイイチは最低最悪男に格下げなのかな。

「そりゃ優しいはずよね!!」という罵詈雑言の嵐が吹き荒れるのかな。

 それとも、最低最悪なのは女の方ね!というのが一般的なのかな。

 どっちもか。そうだよね、私もそう思う。オンナの方か!ていう評価に対しては、感覚的にジェンダーレスな私にとっては腑に落ちないにしても、私が最低最悪でダメダメことには違いない。

 人の幸せを壊したいわけじゃない。なのに、こんな関係は初めてじゃない。

 キレイな言い方をすれば、私もエイイチも過去の関係した人間たちすべてが、その瞬間は癒されていた。ただそれだけのこと。



相談者1「友達の知り合い」


「わぁ~!噂通りお綺麗な方ですね」

 イベント会場で司会役の自身が使うマイクのテストをしていた時、ナツミさんが連れてきた女性の第一声。


「こちらがユウちゃん。ごめんね、ユウちゃん、どうしてもあなたにご挨拶したいて言うから。

紹介するわね、あたしの後輩のヨウコ。普段は会社で事務の仕事してるんだけど、今日はヘルプで受付係をお願いしてるの」

 私にヨウコさんとやらを紹介してくれたのは10年来の知り合いのナツミさん。外見も心も女性の人。彼女は自分がトランスだということを当たり前に生きている。とても波長が合う人で、私の数少ない友人と呼べるひとり。私よりかなり年上の素敵なお姉さん。


 その後輩というヨウコちゃんは私と同じくらいか、わずかに年下か。

 私は高身長のせいかこの切れ長の目のせいなのか、昔から老けて見られがちだからヨウコちゃんはきっと私のことを絶対に年上だと思っている雰囲気がある。

「今日、お仕事上がりにナツミ先輩がご飯に連れて行ってくれるんですけど、ユウさんもご一緒しませんか?」目をキラキラさせて私を見上げてる。

 大抵の女の子は私を見上げることになるわけだけど、いつも思う。このキラキラした眼差しにオトコは弱いんだろうなぁて。

「いいんですか?ナツミさん、私がお邪魔しちゃって」

 私は彼女の横に立つナツミさんに向かってそう確認した。

「お邪魔だなんてこれっぽっちも思ってないくせによく言うわね」アハハ!てナツミさんは豪快に笑う。ナツミさんと私の間ではよくある会話だ。私が全く人見知りしないのはとうに知れたこと。

「ヨウコ、ほら!もう開場の時間が近いから。向こうで準備してきて!」

 ナツミさんの指示従い、「はーい!」と、ニコニコと笑顔で返事をしヨウコちゃんはその場を離れた。


 私はユウ。分類、人間。生殖機能的には子供の産める身体。

 干支を三巡するくらい生きてる。

 職業は…いろいろ。アパレルの販売員をしていたころもあるし、メイクの専門学校を出ていて、ブライダル業界にいたこともある。

 ナツミさんは私がアパレルの販売員をしていたころの店のお客様だった人。

 今は親の残した僅かな遺産を証券会社に勤めていた前の前の彼氏のアドバイスで投資をしたら見事に当たり、数倍になったのをいいことにふらふらと好きなことをしている。

 前の前の彼氏、だったと思う。その前とかその前の前とかいろいろいたけれど、今じゃもう彼氏だったか彼女だったかも定かじゃない。私にとっては新たな人との出会いは全部刺激的なもの。興味が湧くと寝てしまうというお粗末な思考回路。そう、私はそんな人間。

 でも、みんな言ってくれるの「ユウといると癒される」て。


 そして現在、ふらふらしながら時々してる仕事の一つが、今日みたいなイベントの司会業。

 ど素人の私が食い逸れることもなくこんな仕事をしているのも、どこかで出会った誰かのご縁。

「私の居ないところでどんな噂話してるの?ナツミさん」

 本番前に一旦控室に戻りながら、横を歩くナツミさんとの会話。


 ナツミさんは某テレビ局のプロデューサーという肩書きを持っている。私がこのアルバイトを始めてから現場で出会うのは二度目。

「お邪魔虫はヨウコの方よ~。今日の仕事でユウちゃんの名前を見つけた時から絶対にご飯に誘おうと思ってたんだから。それを事務所で話してたら周りの女子に聞きつけられちゃって。普段からあたしがユウちゃんユウちゃん言ってるから皆の興味を引いちゃったのね!迂闊だったわ」

 曲がりなりにもテレビ局のプロデューサーさんにそんな風に言ってもらえて嬉しくないわけが無くて。本来ナツミさんは私なんかが親しくしてもらえる方じゃないはずなのに。

「ありがとうございます、ナツミさん。私、ナツミさんのこと大好き。今日も会えてとっても嬉しいです」

 素直にそう伝えた。

「イヤだぁユウちゃん。ホントにキレイくせに可愛いんだから!あたしの方がユウちゃんのこと何倍も大好きなんだからね!」ムギュと同じくらいの身長のナツミさんに抱きしめられて、背中をポンポンされる。

「ちゃんと食べてるの?相変わらず羨ましいくらい細いけど、しんどい時はしんどいて言うのよ?なんでも出来ちゃうユウちゃんだけど、自分のことを一番大事にしなきゃダメよ?」じゃあね、また後でね、とナツミさんは私の名前が書かれた控室のドアの前で踵を返した。


 どこにでも他人に優しい言葉を掛けてくれる人間がいるわけじゃない。

 私は、高いヒールをもはや自分の身体の一部のように自在に操り、足早に現場に戻るナツミさんのほんのちょっと逞しい背中を見送りながら…そんなことを考えた。

「人に優しく出来る人は、人に優しくしてもらった経験のある人。人に優しくしてもらった経験にある人は苦しんだ経験のある人。苦しんだ経験のある人は苦しみを知っている人…」これももう、誰の言葉かは思い出せない。それくらい私はたくさんの人と関わって生きてきた。

 私はロクでもない人間だけど、ナツミさんが素敵な人だということは分かる。


 両親が死んだのは私が成人してからだ。一人っ子だった私はすでにこの世になんの未練もない。

 寂しくて誰かに頼りたい、結婚したいとか思う前に自由に生き過ぎたのは認める。だけど、いろんな仕事をしていろんな人と出会い、自分の知らないことや知らない世界を広げていくことは私にとって、本当に楽しい日々だった。もちろん、今でもそれは続いている。

 私が人見知りをしないレベルは、どこかネジが外れているのかもしれない。でも、勝る好奇心が私を生かしているのも確かで…それを無くしたら本当に私は死んでしまう。とたんにこの世は色褪せてしまう。 

 だから許して欲しいと、私はいつも誰かにそう思って生きている。


 その日の夜、約束通りに私達三人は銀座の一画にある高級焼肉店の個室にいた。もちろん、ナツミさんの行きつけの場所。

「え~!ユウさんてプロの方じゃなかったんですか?声も良いしスラっとしてらっしゃるから私てっきり元アナウンサーさんか何かだったのかと!」これはヨウコちゃんの感想。

「だってじゃあどこでナツミ先輩とお知り合いに?」

 ナツミさんの横に座り、私の目の前で瞳を輝かせながら興味深々のヨウコちゃん。


「いや~ね、そんなこと簡単に教えるワケないじゃない!ね~、ユウちゃん」

 そんなナツミさんには申し訳ないけれど、

「昔アルバイトしてたショップのお客さんがナツミさんだったの」なんて、ヨウコちゃんに向かってにっこりと微笑みながらあっさり答えちゃうのが私。

「ちょっと!ユウちゃん…!せっかくのあたしたちのヒミツをっ」

「え~!アパレルですか!?きっとカリスマ店員だったんだろうなぁ~!ね?ですよね!?ナツミさん!」

 ナツミさんの言葉に食い気味に被せ、私の方へ身を乗り出したヨウコちゃん。可愛い反応に思わずふふってなる。

 そんな私を見て、ヨウコちゃんを見て、ナツミさんはヨウコちゃんを引き戻した。

「もうもう!ちょっと!ユウちゃん!なに微笑んじゃってるの!?」

 途端にプンていう顔をするナツミさんも可愛い。

「ほらもう!その顔よ!ユウちゃんはね、会う人たち全部を自分のファンにしちゃうんだから!」

 ナツミさんのこの言葉、もう何回も聞いてるけど自覚はない。


「私なんてなんの取柄もないお金もない、普通の人なのに。ナツミさんの方がよっぽどファンが多いですよ?ね?ヨウコちゃん」ヨウコちゃんにシンクロするような言い回しで投げ返す。


 合間合間に運ばれてくる高級肉はせっせとナツミさんが焼いてくれている。

 ね?と問いかけた私を相変わらずのキラキラしたまあるい瞳で見つめてくるヨウコちゃんに興味が湧いた。

 今でもこれだけ女子力があって可愛いのだから若い頃はさぞ可愛らしかったのだろうなあ、と。


「ヨウコちゃんは…ずっとナツミさんと同じ会社なの?ナツミさんは業界ではカリスマプロデューサーさんなんでしょう?、あ、ありがとうございますナツミさん」

 焼けたお肉を私のお皿へ乗せてくれたナツミさん。私の問に、ヨウコちゃんが答える前にナツミさんが答えてくれた。

「私がカリスマなのは当然よ。だって私は唯一無二の存在よ、良くも悪くも。誰も私の横には並べないわ」

 そんな風に言い切ったナツミさんはカッコよくて綺麗だった。


「そんな私が好きなのがユウちゃんなのよ!」と、ものすごくドヤった顔でヨウコちゃんを見たナツミさん。

「もう~っナツミさん私にマウントとらないでくださいよ!私にもお肉ください!」

イヤよ!食べさせないわよ!なんていう会話をしながら、楽しい時間が過ぎる。


 私とヨウコちゃんは途中からワインを飲み、ナツミさんはひたすらビールを飲んでいた。

「でね、私、ずっと結婚したいんですけどぉ~いっつも振られちゃうんですよね~。ユウさんはモテ過ぎて結婚しない派ですか?」

 酔っているのか、ナツミさんの前で結婚話を持ち出したヨウコちゃん。

「ちょっと何この子!結婚が女の幸せとでも思ってるのかしら?」

 ナツミさんも酔いが回っているのか、ナツミさんからすると小娘相手に真剣に文句を言ってる。


「どうして振られちゃうんだろぉ~私…一生懸命尽くすのになぁ。二股掛けられたこともあるし、騙されたこともあるし…」

 ああ。なんていうか、可哀そうに…ていうのが私の感想。


「ヨウコちゃん、恋愛て尽くすものじゃなくて、お互いに楽しむていうか…楽しい時間を共有することなんじゃない?そう考えたら多分もっと楽に…」

 て、言いかけて止めた。

 めちゃくちゃウルウルした目で見つめられてた。


「ちょっとっ!面白い話の途中で申し訳ないけど、お手洗いに行かせて!」

「…イっ!痛いですってば!ナツミ先輩っ」

 ヨウコちゃんの奥に座ってたナツミさんは我慢できないって風に彼女を押しのけて勢いよく個室を出ていった。

 面白い話て。人が悪すぎるナツミさん、と思いながらも…一瞬和んだ空気にホッとした。

「もう~…人が真剣に相談してるのに!酷くないですか?ナツミ先輩って」そう言うヨウコちゃんも泣き笑い顔になってた。


「酷いかもね?でも面白くて素敵な人だよね?」

 ニコリと微笑んでヨウコちゃんを元気付けようとした。

 私の目の前でパァと頬を染め笑顔を取り戻した彼女。

「ユウさんて、本当に優しいんですね」再びキラキラした瞳が私を映す。


「どうしてそう思うの?会ったばかりなのに」思ったことを口にした。


「私の言うことを…ちゃんと聞いてくれて、それから…否定しない、から…かな?」

 そんな答えが返ってきた。ふーん、なるほど、と思う。

 私には無意識のやり取り。

 私のは優しさじゃない。自分自身のネジが緩んでて、自分に甘い自身の許容範囲が広いというか、バーが低いというか…、そんな人間なだけ。

 ある時はそれが優しさとも受け止められる、ということなんだ。

 もちろん、優しさの本質がなんなのかなんて難しことは分かっていないけれど。


「ヨウコちゃんは同姓の私から見ても十分に可愛い人だと思うよ?結婚しなきゃ、なんてアセアセしなくても、ヨウコちゃんと結婚したい!て思う人が必ず現れると思うな」て言いながら…適当なことを言ってるなぁ私、と考えるもう一人の私。

 あ、またこちらを見る目がうるうるしてる。


「あの…ユウさん、私酔っぱらってると思うんですけど…」

 なんとなくもじもじとし出した彼女の様子に既視感。


「キス、しても…いいですか?」と言いながら俯いたヨウコちゃんがやっぱり可愛くて。

 人はね、自分に好意を抱く人間には親切になれるんだよ。


「いいよ?」

 立ち上がり、私の声に顔を上げた彼女にキスを送った。


 ほんの一瞬。

 ライト・キス。


 直後、今日一番の笑顔を見せたヨウコちゃんに私も微笑み掛けた。


「ちょっとちょっとぉ~!なになになに!?二人して何見つめ合っちゃってるのよ!ヨウコ顔赤くない!?やめてよもう!」

 戻ってきたナツミさんのおかげで空気がリセットされたように入れ替わった。


「癒されましたぁ~~」というナツミさんにとっては謎の言葉を漏らしたヨウコちゃんの嬉しそうな声に目を見開いたのはナツミさん。

「ホントに人タラシなんだからユウちゃんは!」私の顔を見て一喝する。

 その言葉にそうか、既視感じゃなかったや。と今夜も反省。

 毎度のこと、でした。


 ヨウコちゃんとの出会いは私にとってもまた一つの刺激。

 出会いに無駄はないと思う。ダメダメ人間の私だけれど、また誰かを癒すことは出来たみたい。


 笑顔て、素晴らしい。


「もう!じゃんじゃんお肉食べてもっと太りなさい!!」

 言葉通り最後のお肉を網に敷き詰める、そんなナツミさんもやっぱり可愛い。





相談者1、お終い。

最後まで読んでくださって本当にありがとうございます。

世の中は「不文律」だらけ。

なにが本質かを見抜けないにしても、

すべての何かよくわからない基準を一旦ゼロにして物事を見る癖を付けることは大切だと考えています。だけど、これもただの考えであって、正解でも不正解でもありません…

なんてねー!

小難しそうにグルグルと考える時間が大好きなんですよね~(笑)

だって、思考するって、人間にしかできないんじゃない?

悩もう!そして乗り越えよう!人の幸せを願えるくらい幸せになりたいもんだ!

と、日々思う~


最後にもう一度。

読んでくださってありがとうございます!!

愛してる!

いっぱいお話書きたいよ~!

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