1.筋トレは頑丈な場所で
「9998…9999…10000」
ムンムンの熱気のがこもった部屋の中上半身裸でただひたすら筋トレをする28歳独身無職の木村武。
「ガチャッ」
「ただいまぁぁぁ」
「……」
「ちょっとおにーちゃーん!可愛い妹のご帰還におかえりのひとこともないのー」
そのまま二階兄の部屋へと駆け上がり勢いよくドアを開けた。部屋の中にはおびただしい数のメダルとトロフィーと兄の汗臭い匂いが充満していた。
「うわっっなにこの匂い。ちょっとお兄ちゃん筋トレするなら窓くらい開けなよ」
そう言うとそそくさと窓開け兄のベットに倒れ込む。
「ふぅ。妹よそこのタオルを取ってくれ」
「はい」
「なぁ、今日のお兄ちゃんはどうだ」
「うーん。いつもより大胸筋と腹筋の張りが弱いかな」
「やはりそうか、次のボディビル大会までに完璧な体にせねば」
「そうか!それならあと5セットずつやるか」
そう言って筋トレを再開した武はまるで取り憑かれたように腕立て伏せをする姿を見て呆れた顔で武の部屋を後にする妹。
「バタンッ」
「まだまだまだまだまだまだぁぁ」
鬼のような形相でものすごい速さの腕立て伏せをし床はミシミシと悲鳴をあげていた。すると次の瞬間床が抜け武は抜けた床と共に下の階へ落下して行った。
「うわぁぁぁぁあ」
「ドォォォン」
ものすごい勢いで頭を打ち気を失ってしまった。
「うっ痛ってぇ」
「ん?!なんだここ?!病院、じゃねえよな」
目を覚ますとそこは森の中で武の周りには信じられない光景が広がっていた。空を舞う竜、見たことのない緑色の生物、二足歩行の豚。そのどれもが自分を見ていた。