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半ヴァンパイアは下水道を進む

 次の日の朝、私はセバスター、アーノック、そしてユーアさんと、下水道に降りてきた。

 

 「くせぇな」

 

 「これだから嫌だったんですよ」

 

 早くも文句を言い出す悪人2人。臭いのなんて来る前からわかってたでしょうに。


 「早くいこ? 長くいたら体に匂いが付いちゃう」

 

 昨日調査に行った3人の冒険者は、ここからしばらく進んだ先で怪我をしたらしい。壁に備え付けられたランタンの明かりだけが光源で、何者に何をされて怪我をしたのかはわからなかったらしい。ただ、刃物で切り裂かれたような傷だと言っていた。

 

 そう言うわけで、私たちは全員でランタンを持って下水道を進んでいった。

 

 




 「なにか聞こえる」

 

 しばらく進んだとき、風を切るような音がほんのわずかに聞こえた。ショートソードを引き抜いて、ランタンで音の方を照らすしてみる。


 「なんの音だ?」

 

 ユーアさんも剣を抜きながら耳をすませる。

 

 「わかんないけど、風を切るような……」

 

 狭くすぐそばを下水が流れる下水道は、音が反響するせいで正確になんの音なのかや音源との距離が掴めない。


 「ただ、近づいてきてる」

 

 「俺にも聞こえたぜ。来るぞ」

 

 セバスターがそう言った瞬間、下水道の壁に備え付けたランタンが、奥の方から順番に破壊される。そして私たちに一番近いランタンが壊された直後、鋭い斬撃が先頭にいたセバスターを襲った。

 

 「あぶねぇ!」

 

 とっさに後ろに飛んで避けられたけど、セバスターのシャツの胸元は斜めに切り裂かれている。

 

 「今の見えましたか?」

 

 アーノックがてに持っているランタンで辺りを照らしながら聞いてくる。その間も私たちのすぐ近くで風を切るような音がする。音が反響していて、近くにいるのがわかっても場所はわからない。

 

 「剣だ! 使い手は見えなかった!」

 

 ー私も剣は一瞬だけ見えた。黄土色の両刃剣で、黒い模様が刀身に描かれていた。多分昨日の冒険者に怪我を追わせたのはこいつだと思う。

 

 フォンフォンという音がずっとして、いつでも次の攻撃を出来るんだぞと威嚇しているようだった。

 

 「引き返せ、と言うことだろうな」

 

 ユーアさんは剣を構えながら冷静にそう言った。

 

 「何でだ?!」

 

 「こいつは帰り道のランタンは破壊していない。これ以上進むなら今のように攻撃するぞと脅している訳だ」

 

 「奥に見られたくないもんがあるって事だな?! 誰が引き返すか!」

 

 セバスターがそう怒鳴った瞬間、フォンフォンという音が一瞬変わった。

 

 ー来る。 

 

 私がそう思った時、私に迫る剣だけが一瞬だけランタンの光にあたった。

 

 「ハァッ」

 

 ギリギリだったけどショートソードを合わせ、弾くことができた。重い手応えがあったのは最初だけで、あっさりと剣は離れてまた見えなくなった。

 

 ー私も使い手は見えなかった。というか、居ないように見えたんだけど……

 

 「使い手居ないのかも」

 

 「なに言ってるんですか馬鹿ですか」

 

 「見えないんだもん! 手応えもなんか変だし」

 

 私がアーノックと話してる間にも、攻撃はどんどん激しくなる。セバスター、私に続いてユーアさんが狙われ、また私、その次はまたユーアさん。 

 

 風を切るような音が聴こえる度に、私とユーアさんに斬撃が迫ってくる。ランタンは一方向しか照らせなくて、攻撃が当たる直前にならないと剣が描く軌跡が見えない。本当にギリギリショートソードを合わせることができてる。

 

 ー攻撃の間隔がどんどん短くなってる……いつか捌ききれなくなる。何とかしないと。

 

 「アーノック! 氷出せ!」

 

 「見えなきゃ出しても意味無いでしょうが!」

 

 セバスターに命令されたアーノックは、狙われてないのに焦ってて、良くわからない敵にイライラしてる。 

  

 「壁床天井に氷を巡らせろ」 

 

 と戦いながらユーアさんが言う。床まで氷付けになるとちょっと困るんですけど。

 

 ーと言うか良くしゃべれるね。私はそんな余裕ないよ。

 

 アーノックはすぐに壁に手をついて、魔法を使う。一気に周囲の気温が下がって、壁が手をついたところから氷が広がる。あっという間に天井も床も氷に覆われる。

 

 ー靴が凍らないのはアーノックが上手く氷を制御してるせいかな?

 

 そして、ユーアさんが何を狙って壁や天井や床に氷を出させたのかもわかった。ランタンの一方向にしか出ない光が、氷に反射して辺り一体全方位を明るく照らし出す。

 

 ーやっぱり、居ない。

 

 「マジかよ」

 

 「どういうコトですか……」

 

 照らし出されたそこには、ひとりでに宙を舞う黄土色の両刃剣が2本見えた。

 

 ー2本あるってことは、私とユーアさんを交互に狙ってたんじゃなくて、2本の剣がそれぞれ私とユーアさんを狙ってたってことかな。

 

 はっきりと敵の姿を捉えることができた私とユーアさんは、攻撃の軌跡をしっかりと見切ることができた。

 

 ーこれなら簡単に対処できる。

 

 私は斬撃を上体を反らして避け、ショートソードの刀身で宙を舞う黄土色の剣を床に叩き落とす。すかさずセバスターが、ローキックで床の氷に突き刺さった剣を蹴り砕いた。

 

 ユーアさんは剣の柄を握って、壁に深々と刺していた。その後セバスターが、殴って剣を折った。

 

 「これで一段落だな」

  

 2本とも剣を破壊したセバスターが、得意げにそう言った。

 

 「まだ油断できません。あの剣が2本しかないとは思えませんし、おそらく操っている者がいます」

 

 ー私もそう思う。明らかに攻撃対象を選んでたもん。

 

 「あん? なんでだ?」

 

 「まず先頭にいたセバスターが狙われ、次がエリー、その次が俺だ。そのあとは俺とエリーが狙われ続けた」

 

 「だからなんなんだよ」

 

 「先頭にいたセバスターは最初だけ狙い、

あとは俺とエリーだけを狙い続けた。恐らく武器を持つ者を優先して狙ったということだ。魔物はそんなことはしないし、魔物には見えない。作って操っている者がいるはずだ」

 

 「……なるほどな。となるとその操っている奴は、この奥に見られたくないものがあって、近寄らせないためにこんなもん飛ばして来たわけか」

 

 ー思ったより大事になってきたね。魔物退治と異臭を何とかすれば終わりだと思ってたのに、下水道で何かしてる人が居るみたい。

 

 もしかしたら問題の異臭は、下水道で何かしてる人が原因かも知れない。私たちは誰も怪我をしていないことを確認して、手元のランタンの明かりを頼りに進むことにした。

しばらくスマートフォンからの投稿になります。もしかしたら投稿ペース落ちるかもしれません。

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