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魔術師達は地上に出る

パソコントラブルのため、スマートフォンからの投稿になります。一部記号が今までと違いますが、パソコントラブルが直り次第修正します。

 シュナイゼルとともに復活した呪術師の1人は、このままで良いのかと考える。このまま、というのは、彼以外の呪術師は、下水道に棲むネズミに呪術を用いて下僕にすることで戦力の確保をしていた。


 自分まで同じでいいのか? ネズミだけでいいのか? という不安に襲われた彼は、別の下僕を手に入れるべく、先日仲間とともに見つけた地上への出口に向かった。

 

 「夜か、幸いだな」

 

 地上に出て星空を見上げながら、誰にも聞こえないような声でそう呟く。そしてそそくさと王都の外へと向かった。

 

 

 

 

 

 「コウモリに犬、猫、ウルフ……キツネはこの辺りには居ないだろう」

 

 王都の北側にある、森というにはいささか小さい木の密集地の中を歩きながら、呪術師は下僕にしやすい動物を探す。しかし、夜の森は非常に暗く、隠れて眠る動物をを探し出すことは出来そうになかった。

 

 しばらく歩いても何も見つけられず、ふいに上を見上げ、呪術師は自分を見下ろす彼らと目があった。

 

 「夜ガラス、か」

 

 木の枝に密集して止まる黒い鳥達を見て、フードのしたで笑みを浮かべる。

 

 夜ガラスは夜行性のカラスであり、群生する。下水道に本拠地を置いていることもあり、夜目が利く彼らは下僕として都合が良かった。

 

 「さあ我が下僕となり、我と共にあれ」

 

 ローブの袖を大きくまくりあげ、左の上半身を露出させ、濃密な魔力をもって仄かに光る灰色のペンタグラムを展開する。するとつい先程まで静かに呪術師を見下ろしていた夜ガラス達は一斉に羽ばたき、鳴き声をあげ、そして呪術師の左半身に吸い込まれるように殺到した。

 

 「いいぞ、従順な下僕は大歓迎だ」

 

 次々と殺到するカラス達は、呪術師に触れたとたんに真っ黒な1枚の羽に変えられ、肌に突き刺さっていく。そして気付けば、鳴き声も羽ばたく音も聞こえなくなっていた。

 

 「思ったより数が多いな。好都合だ」 


 呪術師は自身の左半身を見る。その姿は大きな変化をを遂げていた。

 

 左肩から手首にかけて、カラスの羽がびっしりと生えている。わずかに見える素肌は蒼白く変色し、右半身と比べると別人の肌のようだ。そして指先の爪は真っ黒で、くるりと歪曲した形は鳥の爪を思わせる。

 

 「夜ガラス、というかカラスは呪術と相性が良いらしいな。上手く使ってやるから、それまでは大人しくしていろ」

 

 左上半身に棲まわせた夜ガラスにそう語りかけ、ローブで左半身を隠した呪術師は、満足げに頷いてきびすを返した。







 

  

 王都北西区にある、かつて住宅がいくつも並んでいた場所。今その場所は、アンデッド襲撃時に失われた北西区の民達の共同墓地となっていた。彼らの遺体は火葬され、雑魚寝のように並べられ埋められている。棺の数が足りず、骨だけが埋るその場所に墓荒らしが出るなど、誰も予想していなかった。

 

 「死者には冥福を、魂に安らぎを」


 静かにそう唱えたシュナイゼルは、引き連れた死霊術師達とともに、共同墓地の土が盛り上がったところを掘り返す。ほどなくして、1人分の骨を堀当てた。


 「偽りの魂よ、来たれ」

 

 紫色に光るペンタグラムを展開し、シュナイゼルは魔力で産み出した魂を頭骨の内部、生前には脳があった場所に導いた。

 

 カタカタカタカタカタ、と頭骨が震え、背骨と繋がる。その後次々と肩の骨や骨盤等が接続される。 

 

 頭骨は魂を保持する器。背骨は魂から伝わる指令を各骨に伝える伝導体。その他の骨は骨髄で血液の代わりに魔力を生み出す生産機能を持つ。これがスケルトンの仕組みであり、定義である。シュナイゼルはこの定義をしっかりと重んじ、質の高いスケルトンを産み出した。

 

 「埋葬された骨を掘り出せ」


 今しがた生まれたスケルトンは、シュナイゼルの命令に従う。その一切の淀みのない所作は、シュナイゼルの死霊術の高度さを物語っていた。

 

 シュナイゼルに連れられてきた死霊術師達も、それぞれスケルトンを産み出し始める。彼らは一様に、魔力によって産み出した偽りの魂を頭骨に導いた。彼らは死者本人の魂に冥福を祈りながら、死者の遺骨を冒涜し使役する。それが死霊術師の在り方だった。

 

 夜が開ける頃、共同墓地には生者も、死者も、誰もいなくなっていた。

 



 

 

 

  

 「臭い」

 

 「言うな」

 

 下水道にて、錬金術師達は飲める水を全員分用意すべく、汚水に蒸留とろ過を繰り返していた。その結果飲み水どころか魔術師全員が毎日体を洗えるほどの清潔な水が用意されたが、問題もあった。

 

 「何とかしないと、全員の鼻がおかしくなる」


 「だがこの臭いは既に、地上にまで届いているらしいぞ」


 その問題とは、蒸留とろ過によって水と分離した、あらゆる汚物の悪臭だった。水分と分離したせいか、その悪臭は一段と強くなっている。

 

 「それは不味いな。下水道を調査なぞされたら面倒だ」

 

 「もう冒険者とか言う傭兵かぶれが、下水道の調査に来ることが決まっているそうだ」


 「不味いではないか」


 「物は考えようだ。今の我らがどれだけ戦えるか試すいい機会だと長が言っていた」

 

 「なるほど、確かに」

 

 「今地上で操鉄の材料を集めてもらっている。操鉄さえ錬成すれば、我らも力試しができるはずだ」

 

 一泊置いて、彼らは頷き会う。






 数日後、下水道の異臭の原因を調べに来た3人の冒険者は、彼ら錬金術師の操鉄によって撃退されることとなる。

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