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半ヴァンパイアは悪人に会う

 マーシャさんがそろそろ仕事に復帰しないと不味いということで、今朝から仕事に行っちゃった。同時に一日中一緒にいるという約束も、とりあえず満了というになった。

 

 「よし」

 

 私は久しぶりに色々準備をして、一人での外出をする。行先はコルワさんのお店。もうずいぶん前になるけど、お店に入るために必要だという金属の棒をもらっていた。人差し指くらいの棒で、側面になにやら模様が彫られている。

 

 そろそろお昼になろうかという時間だから、小人の木槌亭には行かないことにした。私はいつもほかの冒険者が誰もいない早朝にお店に行っていたから、いまの時間にお店にいる他の冒険者たちとほぼ面識がない。初対面の人に会うのはともかく、いつもと違うことをするのはなんかちょっと怖い。

 

 「確か、魔女の入れ墨亭……だったかな? コルワさんとコルワさんのお父さんでやってるって言ってたっけ」 

 

 ―あ、お店の場所聞いてないじゃん。えっと、えっと……

 

 コルワさんとの話の中で、何かお店の場所がわかるようなことを言ってなかったか思い出してみる。

 

 「マイナーなお店で、貴族からの依頼が多い? って言ってたかな」

 

 それ以上思い出せそうになかったけど、大体の場所は想像できた。ピュラの町で貴族が居る場所と言えば、王都に近い北西区だ。北西区のど真ん中に店があるとは思えないから、たぶん北西区付近にある、と思う。

 

 「時間もあるし、ゆっくり探せばいいよね」

 

 なんの確証もないまま、私はふらふらとコルワさんのお店を探し始めた。

 

 

 

 

 

 気が付いたら夕方だった。どこをどう探しても見当たらないよ。

 

 「お店の場所ちゃんと聞いておけばよかった」

 

 久しぶりの独り言を言った。そのくらい探し回って、見つけられなかった。あるのは交流特区で見たようなお屋敷がいくつかと、薄暗い路地ばっかり。お店の類はさっぱり見当たらなかった。

 

 もう帰ろうかな、なんて考えていると、すぐ近くの路地から

 

 「……おいいいだろ? な、一発ヤらせてくれよ」

 

 「あなたが(うるわ)しすぎるから、僕のナニが腫れてしまってどうしようもないんです。どうか静めてくださいよ」

 

 ―うわぁ、嫌なセリフ。しかもどこかで聞いたことあるような声……関わりたくないけど、止めたほうがいいよね。

 

 ”幸いもうすぐ夜になるし、2人相手でもなんとかなるでしょ”なんてことを考えながら、私は声の聞こえた路地に走った。そこでは、まぁ予想通りの場面が展開されていた。

 

 「いや! 放して!」

 

 「こんな路地に女一人で来るってこたぁ、誘ってんだろ?」

 

 「そうですよ。いやだなんて嘘言わずに、ホラ……」

 

 ―うわ。

 

 「うわ」

 

 何というか、思った通りの2人組だった。ここに向かう途中で、私は声の主を思い出していた。 

 

 「あん?」

 

 「あ、あなたは」

 

 私は路地裏で女の子に乱暴しようとしていたこの2人と知り合い……じゃなくて、顔見知り、みたいな感じだった。うん、ちょっと違うかもしれないけど、何て言えばいいかわかんない。

 

 「えぇっと、その人放しなよ」

 

 「うるせぇな! お前には関係ないだろうが! 失せろ!」

 

 「そうですよ。あなたには関係ないことです。さぁ麗しい人よ。僕らと一緒に気持ちいいことを」

 

 女の子の手首をつかんでいた男、金髪碧眼の顔だけはイケメンで口が悪い奴がセバスターで、丁寧口調で気持ち悪いことばっかり言う黒髪糸目の奴が、アーノック。

 

 2人がそう言って私から女の子の方に振り返ると、いつの間にか女の子は逃げていた。というか、私が来て2人が私の方を見た瞬間に逃げ出してた。

 

 「お前のせいで逃げられたじゃねえか! ふざけんな! 死ね!」

 

 「てめぇふざけんじゃねぇぞクソエリー! 1度ならず2度までも僕らの邪魔しやがってよぉ!」

 

 アーノックの丁寧口調が崩壊してるけど、これがたぶんこの人の本性。

 

 ―そうだね、2度目だね。うれしくない再会だよほんと。

 

 「相変わらずそういうことばっかりしてるんだね。冒険者辞めて犯罪者になったんじゃないの?」

 

 この2人はそういう人。1年と少し前、この2人は小人の木槌亭の冒険者だったけど、いろいろあってお店に出入り禁止になって、それ以来会ってなかった。

 

 「誰が犯罪者だ! 冒険者だっつうの! お前こそなんでこんなところに居やがんだコラ」

 

 「それこそ関係ないでしょ」

 

 ―さっさと離れよう。この2人と一緒にいていいことなんかないよ。

 

 そう思って踵を返したら、セバスターとアーノックは”しらけた”と言わんばかりに話し始めた。


 「ッチ、最悪だぜまったく」

 

 「そうですね、僕もいろいろ治まらないんですが、今日はもういいです。飲みましょうよ」

 

 「そうだな。魔女の入れ墨亭行くか」

 

 「ちょっと待った。私も行く」

 

 聞き捨てならないセリフが聞こえて、私はもう一度踵を返して2人の方に行く。

 

 「は?」

  

 「はぁ?」

 

 2人に”何言ってんだこいつ”みたいな顔された。

 

 ―別にセバスターやアーノックとお酒を飲みたいわけじゃないよ。お店の場所が知りたいだけ。変な誤解しないでよね。

諸事情で約1週間ほど投稿をお休みしていました。お待たせしてすいません。

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