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半ヴァンパイアは食べさせられる

 にこやかすぎるマーシャさんと軽く朝ご飯を食べる。私がさっき買ってきたカチカチパンは、マーシャさんの顎の力では噛み切れないという事故が起きたけど、とりあえず朝食は済んだ。

 

 お昼は外で済ませ、そのまま夕飯の買い出しをして帰ってきた。一日中ご飯のことばっかりしてる気がする。

 

 「というかマーシャさん仕事行かなくていいの?」

 

 「しばらく休むと伝えておきましたからいいんです。仕事に復帰するまではずっとエリーとイチャイチャします」

 

 「イ、イチャイチャ?」 

 

 「間違えました。一緒に居ます」

 

 へ、へぇ? 

 

 「それよりエリーはすごく眠そうですね。昨日眠れなかったの?」

 

 眠れなかったよ。マーシャさんがおいしそう過ぎて、血を吸うのを我慢してずっと起きてたよ。

 

 「うん」

 

 「じゃあ今のうちに昼寝してていいですよ。ごはんができたら起こします」

 

 う~ん、不安。何作るつもりなんだろう? 奮発して鶏むね肉いっぱい買ってたけど…… 

 

 「えっと、何作るの?」

 

 「鶏肉のソテー」

 

 あ、うん。

 

 「じゃあ、ちょっと寝るね」

 

 「はい、おやすみ」

 

 「おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 「エリー、夕飯できましたよ。起きて、ねぇ起きてエリー」

 

 マーシャさんの声がする。

 

 「ん、はぁ~~、あ、マーシャさん?」

 

 「夕飯できましたよ。食べましょう?」

 

 マーシャさんのすっごくいい笑顔が見える。

 

 「うん、食べる。食べるから、降りて?」

 

 すごくいい笑顔で、私に馬乗りになってるマーシャさん。乗られたままじゃベッドから出られないよ。

 

 「今日はこのまま食べます」


 よく見るとマーシャさんはお皿を持ってる。夕飯をベッドの上で食べようってことかな。でも私に乗ったまま食べなくても……

 

 「このまま?」

 

 「このまま」

 

 「な、なんで?」

 

 マーシャさんはすっごくいい笑顔をさらに深くして

 

 「約束を破ったエリーへのお仕置きを食事と同時にするため」

 

 って言った。なんというか、なんでそんなに嬉しそうなのかな。

 

 「えっと、ごめんなさい」

 

 「謝ってもお仕置きはします。さぁ口を開けて?」

 

 お皿の上から鶏むね肉を一つ掴んで、私の口元に持ってくる。おかしいな、鶏肉がすっごく赤い気がする。

 

 「んが! に、匂いが」

 

 鶏肉からすっごく辛いにおいがする。鼻が痛くなるレベル。絶対辛いよ! その鶏むね肉絶対唐辛子塗り込んだでしょ!

 

 「ほら早く、口を開けてください」

  

 「い、いや、ごめんなさい! そんな辛いの、食べられないよ」

 

 「ダメ。それに辛いのが好きって言ってたじゃないですか」

 

 「そんなに好きじゃない! 好きか嫌いかで言えば嫌いではないかなってくらいで」

 

 「なおさら好都合ですね、お仕置きですから」

 

 「いやムグ」

 

 ”いやだ”って言おうとして、口が開いたところに真っ赤な肉を突っ込まれた。

 

 ―あれ? 意外と辛くない? 

 

 「おいしい?」

 

 口の中いっぱいだから答えられない。

 

 ―ちょっとピリッとしてるけど、鶏むね肉なのにプリプリしてておいしいかも……? あんなに辛い匂いだったのに、案外ふつう……

 

 「ング!、んーーーー! んーーーーーーーー!」

 

 ―辛い辛いからいカライ! 急に辛い! すっごく辛い! 辛いよ!

 

 「吐きだしちゃダメですよ? ちゃんと食べてくださいね」

 

 辛すぎて暴れたいのに、腕ごと跨られてるから足をジタバタさせるくらいしかできない。それにあんまり力を入れるとマーシャさんを突き飛ばしそうで怖い。

 

 でも満面の笑顔で私を見下ろすマーシャさんが一番怖い。

 

 とにかく飲み込まないとずっと辛いと思って、必死で咀嚼して飲み込む。

 

 「エリーたら体がビッタンビッタンしてますよ? そんなに辛いですか?」

 

 ―辛いよ!

  

 「辛いよ!」

 

 「まだ一つ目なのにそんなに汗かいちゃって……かわいい」

 

 ―まだ、一つ目……?

 

 「はい、もう一口」

 

 そう言って2つ目のお肉を私の口に運ぶマーシャさん。私には口元に突き付けられたお肉が、死刑宣告のように見えた。

 

 「はい、あ~ん」

 

 「も、もう無理」

 

 「あ~ん」

 

 「許して」

 

 「あ~ん」

 

 ―マーシャさん”次は無理やり口に入れます”って顔してる。怖いよ。

 

 何を言っても許してくれそうにない。さっきみたいに無理やり突っ込まれると、喉の奥まで辛いのが来てむせそうだから

 

 「あ、あーん」

 

 自分で口を開けて、食べる。

 

 「ふ、、ん、ぐ、」

 

 辛すぎて涙出てきた。

 

 「泣くほどおいしい? 頑張って作ってよかったです」

 

 「んーーー!」

 

 ”泣くほど辛いんだよ!”って言いたいのに、口の中いっぱいで言えない。

 

 ―辛いよ、もう口の中が全部ヒリヒリする。

 

 やっとのことで飲み込んだら、マーシャさんがニコニコ笑顔で3つ目を用意してた。もう無理。喉とかお腹とか熱くて、もう食べられないよ。

 

 「はい」

 

 「やら、もうひゃら」

 

 舌があまりにも辛すぎてうまく動かない。

  

 「まだまだあるんですよ?」

 

 「こえ、これいじょ、食べたらひん、死んじゃう……」

 

 「そんなに辛いですか? どれどれ」

 

 そう言ってマーシャさんは手に持ったお肉を一齧りして

 

 「ん、そんなに辛くないじゃな、、、辛! 辛い!」

 

 ―もしかしなくても、マーシャさん味見しないまま私に食べさせてたの? 

 

 「でもあと一つですし、食べちゃってください」

 

 「え、あムグ」

 

 マーシャさんはさっき自分が齧った残りを私の口に詰め込んで、さらにもう一つのお肉を掴んで

 

 「はい、最後です」

 

 「んーー! 待っで! ングッ」

 

 さらに私の口に、無理やり、挿れた。

 

 ―カライ、辛い、辛い、辛い辛いカライからい、無理。もう無理。

 

 辛すぎて視界がグルグルする。目眩? ってこんな感じなのかな。

 

 ―あれ? なんだか……

 

 なんていうか、辛くてツライのは同じなんだけど、頭の中がブワッてなって、謎の多幸感が出てきた。

 

 「私が言うのもなんですけど、よくこんなカライのを何個も食べられましたね。あら? エリー?」

 

 たぶん、謎の多幸感でうっとりしちゃってたんだと思う。

 

 「なんだか気持ちよさそうですね? 大丈夫? トリップしちゃってない?」

 

 やっと口の中のを全部飲み込んで、プハーっと一息。

 

 ―口の中が全部痛い。息を吸ったら急に痛みが……でも、なんか、気持ちいいような?

 

 「エリー? はい」

 

 マーシャさんの声が聞こえてそっちを見ると、マーシャさんの親指と人差し指と中指が顔の近くにあった。お肉を掴んだ指だから、指先にお肉の油と塗り込まれた唐辛子がついてて、テラテラ光ってる。

 

 ―”舐め取れ”ってことかな……?


 中指の先を口に含んで、舌で指先を舐める。

 

 ―辛い。

 

 でも辛くてツライって思うたびに、頭の中でブワッってなって、謎の幸福感を感じる。

 

 辛みがなくなるまで中指を舐めて、チュパッって中指を口から出す。マーシャさんが人差し指を口元に持ってくるから、次は人差し指を口に含む。

 

 ふと、マーシャさんの手から顔に視線を移す。

 

 初めて見る表情だった。ちょっと頬を染めて、いつもより少しだけ目を細めて、微笑んでる。

 

 ―そういえば、ご主人様(ホグダ)も、私に指をしゃぶらせたりしてたっけ……指って舐められると気持ちいのかな……

 

 最後に親指。親指は口に入れずに、指の腹を唇で撫で、舌先で舐めとる。唇は指の腹を撫でるたびにピリピリするし、舌先に至っては痛みを通り越して熱さしか感じないけど、やっぱり頭の中は気持ちいい。

 

 ―私、辛いのを食べ過ぎておかしくなっちゃったのかな……

 

 「うふふ、エリー……うふふふふふ」

 

 ―マーシャさんもおかしくなっちゃったのかな。ちょっと怖いよ……

 

 

 

 

 

 

 「はい、お仕置き終了です。とりあえず許してあげます」 

 

 マーシャさんに跨られたまま、辛さが落ち着くまでじっとしてた。マーシャさんは私の顔とか髪とか首とかを好き放題してた。匂いを嗅ぐのだけはやめてほしい。

 

 「うん」

 

 「寝る前に体拭いてきましょう。汗いっぱいかきましたもんね」

  

 辛すぎて異様に汗かいちゃった。喉が渇い……これ以上考えない。下手なこと考えたら飢餓状態になりそうだし。

 

 「うん」

 

 「気持ちよさそうにトリップしてましたけど、ちゃんと素面(しらふ)に戻ってきてくださいね」

 

 「もう戻ってるよ」

 

 「先にベッドに居ますから、体を拭いたらちゃんと来てくださいね」

 

 「今日も同じベッドで寝るの?」

 

 「当たり前です。一緒にいる約束」

 

 「はい、了解です」

 

 下手なこと考えなくても飢餓状態にはなりそう。


 「何なら一緒に体を拭きま」

 

 「そこは一人にして」

 

 「は~い」

 

 マーシャさんの機嫌がよくなったのはいいこと。でもお仕置きはもういやだから、機嫌を損ねないようにしよう。

 

 ……何回もあんなことされたら、本当におかしくなりそう……

辛さ責めと脳内麻薬責めというジャンルを考えたんですけど、どうでしょう?

もうしばらくエリーとマーシャのイチャイチャが続きます。

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