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蠱毒姫は孤独を嗤う

行間のスペースを変えてみました。今回は短めです。

 今日も新しいお薬を試して見ました。結果は予想通り、被験体の全身を麻痺させ激痛を与えました。うまくいきましたわ。

 しかし、痛みが強すぎたようですぐに死んでしまうか、気絶してしまいます。人間を被験体にしているとよくあることですが、もうちょっと苦しんだり悶えたりしてほしいと思ってしまいますわね。

 

 「人間じゃなくて、私たちヴァンパイアで試してみたいですわ」

 

 最近よく思うことを口にしてみます。作ったお薬が満足の行く結果を出して満足していたはずですのに、口に出してしまったせいか考えないようにしていた不満感があふれ出てきてしまいました。

 ですが、(わたくし)には仲間もお友達もいません。同族(ヴァンパイア)は私から離れていくか……私が壊してしまいました。

 強靭な生命力を持つヴァンパイアをも殺すお薬、それに興味がわいてしまって、作って、試してみただけですのに……

 

 もう少し痛みを弱めたお薬に調整してみますか。貧弱な人間でも10分くらいは意識を保てるようにすれば、痛みと苦しさでのたうち回りたいのに、全身が麻痺してしまって呼吸もできずにうずくまるようになるでしょう。そんな被験者を観察すれば、不満感や鬱憤(うっぷん)もきれいに忘れてしまうはずです。

 

 もっとも、ヴァンパイアの被験体があれば調整などしなくても、きっと私の望むものがみられるのでしょうけれど……

 

 先ほど試したお薬の材料を見直し、痛みのもとになる素材、シロイラクサの葉を見ながら思案する。

 この白い葉に生えている刺毛(しもう)は、触れたもの、触れた部位に激痛を生み出す毒を注入します。この毒を用いて、先ほどのお薬の痛み成分としていたのですけれど、シロイラクサではちょっと効果が強すぎたようです。別の痛み成分を模索してみましょうか。

 

 私の調合部屋の、”痛み”の薬品棚を確認してみます。我ながらいろいろと集めてみたものです。もう一つ棚を増やしたほうが良いかもしれません。なにせもっともっと集めて試してみたいのですから。

 

 ……ちょうどいいのが見つかりましたわ。これはカピリャータというクラゲの毒ですわね。毒を持つ触腕に触れると、触れた部位にかなり強烈な痛みを長い期間味わうそうです。シロイラクサとの大きな違いは、このクラゲの毒の症状が知られているということ、つまりカピリャータに刺されて生き残った人間さんがいるということですわね。これを調合して調整すれば、先ほどの薬のように、刺された部位ではなく全身が痛みを感じるようにできますし、シロイラクサのお薬より長く意識を保ってくれますわ。


 しかし困りました。今あるカピリャータの毒の量では、せいぜい二つほどしかお薬が作れませんわ。それに、被験体の数も随分減ってしまいましたし、補充しないといけませんわね。

 

 とりあえず試作として二つ作って、それから毒と被験体の補充と行きましょうか。海のきれいなあの町なら、きっと見つかりますわ。カピリャータとちょうどいい被験体がたくさん。


 「ちょうど喉も乾いてきましたしね……」

次話からエリーの冒険にもどります。

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