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半ヴァンパイアは同居する

 

 ピュラの町に帰ってきて、小人の木槌亭で依頼達成の報告を終えた私は家に帰ってきていた。

 

 「ただいま」

 

 今は誰もいない家だけれど、一人暮らしではない。マーシャさんという人と一緒に暮らしてる。マーシャさんは一年前に私がパーティを抜けてすぐに出会った人で、この家もマーシャさんの家。宿を借り続けるよりいいだろうってことで、下宿させてもらっている。

 

 ちなみに今マーシャさんは服屋さんで働いているから夕方に帰ってくる。やたらスキンシップが多い人で、引っ付かれるたびに吸血衝動に駆られて抑え込むのが大変なんだけど、何度引っ付かないでと言ってもやめてくれなくて困っている。ハーフヴァンパイアだから血を吸いたくなるからやめて、なんて言えない。

 

 私は一日ぶりのお風呂に入ったあと、夕飯の準備とか着ていた服の洗濯とかをするつもりだったのだけど、なんだか疲れを感じてベッドで寝てしまった。

 

 

 

 「起きてエリー、ねぇ起きて?」

 

 体を揺すられ聞きなれた声が聞こえてくる。

 

 「んぅ? マーシャさん?」

 

 「そうですよ。ただいま」

 

 「おかえりなさうわぁ」

 

 ベッドから上体を起こした私にマーシャさんは飛びついてくる。私より大きな胸とか金髪の長い髪とかいろいろグリグリ押し付けてくる。

 

 「疲れたよ~毎日毎日チクチクチクチク縫物させられて、たまにお客さんの採寸するときとかお客さんが私の胸ばっかりジーっと見てきたりするし、もう私疲れました。エリーに慰めてもらえないと私動きません」

 

 とか言いながら私のあまり大きいとは言えない胸に顔を突っ込んでグリグリしたり、普通に正面から抱き着いてきたりする。いけない、特に抱くついてくるのはダメ。マーシャさんの首筋が私の口のすぐ近くに来るから、本気で襲って血を吸いたくなってしまう。

 

 「マ、マーシャさん離れてください……やめてくださいってば」

 

 「いやです、慰めてくれないと動かないと決めたの」

 

 「はぁ……えっと、よしよしすればいいですか……?はぁ……」

 

 私の胃袋がキュウッとなる感じがする。吸血衝動で息が荒くなってしまう。

 

 「いいです」

 

 血を*いたい

 

 「よしよし……よしよし……」

 

 私は無心でよしよしする。血を吸いたいとか思わないように無心で……

 

 「よしよし……はぁ、よしよし……」

 

 柔らかそうな首筋に噛みついて

 

 「はぁ……よしよし……よしよし……」

 

 「はぁ~エリーのよしよし気持ちいい」

 

 はしたなく伸びた犬歯で肌を突き刺して

 

 「はぁ……よしよし……」

 

 熱い生き*を吸いたい

 

 「……もう、いいですか?……はぁ」

 

 「ん~もうちょっと。というかエリー? なんだか息が荒くなってませんか? もしかして私に密着されて興奮してるとか? エリーって実はそっちの趣味があったんですね」

 

 マーシャさんは冗談のつもりで言ってからかってるんだろうけど、ある意味間違ってない。そういう趣味じゃなくて吸血衝動の方で興奮してしまっている。

 

 「はぁ……えっと、そうですよ?あんまり密着してると襲っちゃう……よ?」

 

 こう言えば離れてくれるかな?


 「え……あ、ああそういえば夕飯できてますよ。私おなかすいたのでもう食べてきますね」

 

 あ、離れてくれたけど、本気でそっちの趣味があると誤解されたっポイね。あとで訂正するとして、本当に少し落ち着かないとね。

 

 

 

 ハーフヴァンパイアになってから一年、今まで私は血を一度も吸わずに生きてきた。ヴァンパイアとはいえハーフだからか、血は飲まなくても生きていけるようだった。ただ、ハーブヴァンパイアになって一カ月が過ぎたころから、ふとした時(主にマーシャさんとのスキンシップの時)に強い吸血衝動を感じるようになった。吸血衝動を感じているとき、普段茶色の私の瞳が黄色く変色して、普段人間と変わらない大きさの犬歯が一センチほど伸びて、息が荒くなって、力が人間の子供並みに低下する。

 

 とにかく今は吸血衝動を落ち着かせないとね。犬歯はともかく、黄色くなった瞳は見られたら絶対詮索されるだろうし、もし瞳が黄色くなることが吸血鬼の特徴だって知っていたら、見られただけで吸血鬼バレしかねない。落ち着いてから私も夕飯を食べに行こう。

 

 

 

 夕飯はジャガイモとニンジンの入った塩味のスープとパン。この街だとこれが普通の食事だし、私もよく作る。そんな夕飯を食べていると、対面に座ったマーシャさんが、目を合わせないまま話しかけてきた。

 

 「エ、エリー? あの、私、エリーがその……そういう趣味の子だって知らなくて、もしかしたら今までの私のスキンシップって、もしかして迷惑だった……?」

 

 「さっきのは嘘です。早く離れてもらいたくて嘘つきました」

 

 ご飯食べてる時からもじもじしてたし、絶対聞いてくると思ってましたよマーシャさん。安心してください。そっちの趣味はありませんよ。

 

 ……マーシャさんポカーンとしちゃった。どうかしましたか? 

 

 「エリー、今日いつからお昼寝してたんですか?」

 

 え、なんで急にそんなこと聞くの? なんだかちょっと怖いんですけど。

 

 「えっと、昼過ぎくらいかな……」

 

 「私明日は仕事ないんですよね」

 

 「えっと、そうなんですかぁ」

 

 「私エリーに嘘をつかれて傷つきました。今夜一晩中慰めてくれないと……」

 

 「慰めてくれないと……どうなるんですか……?」

 

 「精神的ダメージによって一晩中歌って踊り続けます」

 

 「迷惑なうえにうっとうしいよ」

 

 「ふぅ~んそういうこと言うんだぁ、もう今から歌って踊っちゃおうかな~」

 

 「それじゃ私は口笛でもふきましょうかね」

 

 「え~一緒に踊ってよノリわるいぞ~」

 

 二人で笑いあう。こんな時間が私は大好き。

 

  

 

 私はマーシャさんと仲良しだ。

 

 

エリーの日常は大体かけたと思います。次話を挟んで、やっと物語を動かせそうです。

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