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半ヴァンパイアは街に帰る

 

 「モンドさん、ウルフ討伐終わりましたよ」

 

 ウルフの死体は後で燃やしておくことにして、とりあえず報告しに茂みに戻った。

 

 「最初の一匹を倒すところは見てたが、お前実はすごく強い?」 

 

 まぁ2年も冒険者してますからね。ウルフぐらいは余裕ですよ余裕。まぁ夜だからっていうのも大きいけど。

 

 「ウルフぐらいなら大抵の冒険者はあっさり倒せるよ。死体は燃やしちゃっていいよね?」

 

 「あ、ああ。ポルコさんの小屋の近くに焚火できる場所がある。ポルコさんたぶんまだ起きてるだろうし、報告ついでに焚火場を借りればいい。俺も一緒に頼んでやるよ」

 

 あれ?なんだかモンドさん優しくなってない? ”じゃあポルコさんに報告してくるから”とかいってさっさと行っちゃうと思ってたんだけど。

 

 「うん、ありがと」

 

 「どういたしまして」 

 

 うん、なんか違和感。

 

 

 

 かなり遅い時間、というか夜明け前の前くらいの時間だったけど、ポルコさんの小屋からは光が漏れていて、それを見てモンドさんが扉を叩く。

 

 「ポルコさん、モンドです。起きてますか?」

 

 するとすぐに扉が開かれポルコさんが出てくる。

 

 「どうした?ウルフが現れなかったか?」

 

 「いえ、討伐し終わったから報告に来まして、ウルフの死体を燃やすのでそこの焚火場を借りたいんですけど」

 

 「は、え? もう終わったのか!?」

 

 ポルコさんはかなり驚いているというか信じていないみたいで、牧場に放置してきちゃったウルフの死体を確認して、やっと信じてくれた。

 

 「お嬢ちゃん結構強いんだな。正直驚いた、もしかして新米冒険者じゃないのかい?」

 

 新米だと思われてたらしい。気づいていたけど。

 

 「2年ほど冒険者やってますよ」

 

 「そうか、俺はてっきり新米だと思ったよ。……ああ、確か焚火場を借りたいんだったな。死体を運ぼう。モンド、手伝え」

 

 ウルフの死体を焚火場まで運ぶのを手伝ってもらって、後は燃やすだけなんだけど、それは私一人でやるからと手伝いを遠慮した。手伝おうとしてくれたけど、二人は私と違ってお昼寝してないからね。眠そうだったし、死体処理も大抵依頼の範疇だからいいと言って遠慮した。

 

 薪をもらって並べ、火口箱(ほくちばこ)から火口、火打石、火打金をとりだし火をつける。組み上げた薪が燃え始めたら後は部位ごとに切り分けたウルフの死体を火に入れていくだけ……さすがに7匹も燃やすとなると時間かかりそうだけど、魔物は結構脂が多いせいか割と早く燃えてくれる。朝にはたぶん燃え尽きると思う。

 

 ひたすらウルフの死体を切り分けて火に入れてを無心で繰り返す。無心で繰り返すつもりになって、結局考え込んでしまう。私がハーフヴァンパイアになってしまったことについて……

 

 

 

 私だって最初から一人で活動する冒険者だったわけじゃない。4人で一緒に活動してた。15歳で冒険者になってすぐに3人のパーティに入れてもらって、ピュラの町の、砂金の泉邸っていう店に集まっては一緒の依頼を受けて、一緒に冒険してた。

 

 でも一年前、ちょうど去年の今くらい暑い季節に、私は一週間ほど高熱を出して寝込んでしまった。そして熱が収まったから、一応異常がないか水晶を使って自分のステータスを確認した……異常だらけだった。

 

 何が異常って、種族が人間からハーフヴァンパイアに変わっていた。ステータスも跳ね上がっていたし、おかしなスキルも見つかった。もう何もかも異常だらけで、どうしていいかわからなくなって、とにかく吸血鬼だってバレちゃいけないと思った。

 

 その日のうちにパーティを抜けた。一週間も休んで突然抜けるなんて、我ながらひどいと思う。でも3人はなにかあったんだと察してくれたみたいで、詮索も引き留めることもしないでくれた。

 

 ……それ以来ずっと一人で活動してる。吸血鬼はエルフやドワーフ、ワービーストのような亜人ではなく、人型の魔物だから。バレたらきっと殺されてしまうから……

 

 

 最後の死体を解体し終え、頭と胴体、前足を火に入れたあたりで、東の空から太陽が顔を出してきた。計算が甘かったらしい。思えば日帰りで依頼を終わらせるつもりでこの村に来たはずなのに、当たり前のように二日目に突入している。

 

 「うぁあ朝日が眩しい」

 

 朝日を浴びるととても眠くなるのに、じっと焚火の前に座ってウルフの死体が燃え尽きるのを待ち続けるなんて退屈なことしてたら本当に寝落ちしてしまう。

 

 最後に残った後ろ足をまとめて火に入れて、寝落ちしないように雑嚢から昨日買ったパンを取り出して食べる。もう私のこぶしくらいのしか残っていないけど、何か食べてれば寝ないでしょう。たぶん……

 

 村の方から話し声や足音がわずかに聞こえてくる。お百姓さんは朝早いんだね~モグモグ。

 

 とにかく眠いよ。早く燃え尽きてよ……

 

 「おはよう」

 

 「ううぇえ!?あっお、おはようございますポルコさん」

 

 突然後ろから声かけるからびっくりしたよ。

 

 「驚きすぎだよ嬢ちゃん、こっちまでびっくりしちまう」

 

 そっちが驚かすからだよ。

 

 「えっと、今燃えてるあの足が燃え尽きたら死体処理は終わりです。それで依頼完了でいいですか?」

 

 「ああ、依頼完了だ。言うことなしだ! 燃え尽きたら終わりなら後は俺が変わるよ」

 

 「いいんですか?」

 

 「ああ、嬢ちゃんすげぇ眠そうだしな、燃え尽きる前に寝ちまいそうだ。あとこれ報酬な。確認してくれ」

 

 そう言ってポルコさんは銀貨の詰まった小さな袋を渡してくれる。

 

 「重ね重ねありがとうございます。それじゃあ私は失礼しますね」

 

 「おう、お疲れさん」

 

 私はポルコさんに頭を下げて、昨日歩いてきた道を帰る。村の出口に向かって歩いていると、畑仕事に向かう人たちとすれ違う。みんなちょっと眠そうな顔をしている。私とおんなじだ。

 

 村をでてピュラの町への街道を歩きだす。今からまた3時間も歩くのかと思うとちょっと憂鬱だけど、まぁとにかく帰ろう。

 

 「本格的に眠い、朝日なんか浴びるもんじゃないね」

とりあえず町に戻るところまで

次話か次次話あたりで自分が書きたかったところが書けそうです。

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