表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
286/304

意趣返し

全開書き忘れましたが、今回も胸糞注意です。

 「よぉ。その女、俺にやらせろよ」

 

 グラブスと呼ばれた男がそう言うと、細長い奴も肉ダルマもエリーから一歩離れた。

 

 こいつがリーダー格ってことか。 

 

 でもこいつ、結構ボロボロに見える。

 

 服が所々切れ込みが入っていて、切れ込み周りには血がついている。

 

 だがボロボロに見えるだけ、全然疲れているわけではないらしい。

 

 グラブスはエリーの横にしゃがみこむと、エリーの髪を掴んで頭を上に引っ張った。

 

 「うぐ……」

 

 痛そうに呻くエリーの顔が見える。

 

 肩頬がはれ上がっていて、口からも血と涎が垂れて、痛々しい。

 

 グラブスはそんなエリーの顔を覗き込んだ。

 

 「よぉ」

 

 ずいぶんとドスの聞いた声で、そう言った。

  

 エリーは答えない。


 「てめぇいくつだ?」

 

 何がしたいんだこいつ。

 

 年齢が聞きたいのか?

 

 「名前は?」

 

 なんだ?

 

 なんでそんなこと聞くんだ?

 

 俺にはわからん。

 

 だがエリーは何か思い当たったらしい。

 

 「ふ、ふ」

 

 エリーはグラブスの質問には答えないまま、笑ってみせた。

 

 そしてエリーの反応は、グラブスをイラつかせたらしい。

  

 さらにグイッとエリーの頭を上へと引っ張る。

 

 「おい。まだ自分の方が強いつもりでいんのかよ。この状況で何見下してんだ? 答えろよ! 答えろッ……チッ」

 

 グラブスはエリー髪をさらに引っ張って持ち上げ、そこから一気に地面に叩きつける。

 

 グシャって音が聞こえそうな程強く叩きつけられたエリーは、一瞬だけ体をビクっとさせた。

 

 悲鳴も上がらないし、悶えもしない。

 

 グラブスも面白くなかったんだろう。

 

 エリーの肩を掴んで力ずくで立ち上がらせ、細長い襲撃者の方に放った。

 

 「持っとけ」

 

 グラブスの命令通り、細長い奴はエリーを羽交い締めにして立たせる。

  

 腕を後ろに引っ張って、腰を前に突き出させる。

 

 肉ダルマが殴りまくったときと同じだ。

 

 鼻血まみれのエリーの顔に、俺は耐えられないくらいの不快感を覚えた。

 

 グラブスはそんなエリーに近づいて、顎を掴んで目を合わせる。

 

 「おい。私よりグラブスさんの方が強いですって言ってみろよ。そうしたら許してやる」

 

 許してやるって、何がだよ。

 

 楽に死なせてくれるってか?

 

 それとも見逃してくれるのか?

 

 どちらにせよ俺は……

 

 エリーはグラブスの顔を間近で見つめて、答えた。

 

 「ペッ」

 

 グラブスの顔面に血混じりの唾を吐き付けて答えた。

 

 エリーはこいつらには絶対屈するつもりが無いらしい。

 

 グラブスの顔は俺からは見えないが、流石にわかる。

 

 ブチギレてるんだろう。

 

 「……後悔すんなよ」

 

 グラブスはナイフを持って、一振りした。

 

 「いあ゛あ゛あ゛あ゛っ、、、ぐ」

 

 今まで以上に悲痛な悲鳴が聞こえた。

 

 エリーの両目と鼻の付け根がざっくり斬られていた。

 

 目元を押さえたいのか腕が暴れ、座り込みたいのか足が震えたが、羽交い締めにされていて動けない。

 

 俺は失明と言う単語が頭に浮かんで、胸糞悪さと怒りが限界に達しそうだ。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 羽交い絞めにされたエリーを、グラブスは容赦なく殴打する。

 

 両目を斬られ失明したこともあり、エリーは次どこを殴られるのか、事前に察知する方法が無い。 


 まずは頬に、頭が弾かれるほどの殴打を叩きこむ。

 

 悲鳴は出なかったが、折れた歯が口から零れ落ちた。 


 次は突き出された腹だ。

 

 わき腹を抉るように鋭く打つ。

 

 「はう゛っが、ぁ」

 

 わき腹の上の肋骨が折れ、衝撃と骨折の2種類の痛みを生んだ。

 

 もともと力の入っていない腹は、殴ると”ボチャ”という水っぽい感触をグラブスの腕に伝える。

 

 グラブスはエリーに、苦痛に悶える時間を与えない。

 

 すぐさま鳩尾を押し込むように打つ。 


 「ハッ……」

 

 呼吸が止まり、くの字に折れそうな体が、やはり羽交い絞めによって直立を強制される。

 

 エリーの目が開くなら、限界まで見開いたところだ。

  

 グラブスはエリーに、気絶を許さない。

 

 気絶しそうな仕草をエリーから感じ取ったグラブスは、千切られていないほうの腕を掴み、手首を掴み、指を掴む。

 

 爪の隙間に爪を差し込み、”ミ゛リ゛リ゛”と引き剥がす。

 

 「ウア゛ア゛ア゛ア゛ア゛、は、あ゛」

 

 一気に引き剥がすのではなく、ゆっくりとめくるように剥がすと、エリーは必ず大きな悲鳴と共に目を覚ました。

 

 グラブスはエリーの指の爪が無くなるまで、気絶するまで殴っては起こすを繰り返す。

 

 エリーが5枚目の爪をはがされる頃には、もうまともな悲鳴はあげられなくなっていた。 

 

 だがグラブスは止まらない。

 

 エリーの使っていた剣が転がっているのを見つけると、自分のナイフはしまって、剣を鞘から抜いた。

 

 それからエリーに近づくと、逆手に持った剣の柄頭でエリーの顎を突きあげ、上を向かせた。

 

 口から垂れる血と涎と胃液が、剣の柄とグラブスの手を汚していく。

 

 「なぁ、どうだ? まだお前は俺より強いと思ってるのか? それとも、考えを改めてくれたか?」

 

 グラブスはそう聞きはしたが、答えが返って来るとは思っていない。

 

 返事ができる程優しい暴力は振るっていない。

 

 そして案の定エリーは返事をしなかった。

 

 「ハー……ハー……」

 

 深い呼吸を繰り返すのが精いっぱいに見える。

 

 エリーの体は、満身創痍をとっくに通過している。

 

 羽交い締めにされていなければ、立っていることも無理だ。

 

 放っておいても死ぬと思えるほど、今のエリーは弱々しい。

 

 グラブスはそんなエリーを眺めた後、剣を降ろした。

 

 そして、エリーの両足の踵の上を斬った。

 

 アキレス腱を断ち斬るようにぱっくりと切れ込みを入れたのだ。

 

 自らの武器で傷つける。

 

 それはいわゆる尊厳の否定であり、侮辱の一種だ。

 

 「降ろして良いぞ」

 

 エリーを羽交い締めにしていた細長い襲撃者は、そっとエリーを解放する。

 

 エリーは重力に逆らうことなく、グシャリとうつ伏せに倒れ込んだ。

 

 倒れた際に周囲に血をまき散らして血だまりを作る。

 

 グラブスはエリーの背中に、エリーの剣を深々突き刺した。

 

 地面に縫い付けるかのように剣が深く刺さると、エリーは一瞬痙攣した。

 

 「ぁ、ぁ」

 

 エリーの漏らした嗚咽は、たったそれだけだった。

 

 酷く一方的に打たれ続け、骨を折られ、腕を捥ぎ取られ、目を抉られ、自分の武器で足をダメにされ……

 

 最後の最後まで見下されながら、己の武器で止めを刺されたのだ。

 

 エリーの全身が弛緩していくのを、グラブスもモンドも見ていた。

 

 エリーの胸も腹も上下しなくなった。

 

 力の入っていたはずの腕が、動かなくなった。

 

 エリーのズボンの股間部が濡れて、失禁したところまで見えた。

 

 ショックを受けたのはモンドだけのようで、襲撃者4人は、そのままエリーから興味を失ったようにお喋りを始める。

 

 「……あ~あ、殺しちゃった」

 

 「別にいいだろ。それよりザイン追っかけねぇとまずいんじゃね?」 


 「その前にこいつだろ。これ以上時間かけてたらグイドまで逃げられちまう」

 

 「うっせぇな。さっさと殺して追っかけりゃいいんだろ? ったくよぉ」

 

 そんな会話をめんどくさそうに断ち斬ったグラブスは、ナイフを抜く。

 

 未だに女に拘束されているモンドに近づくと

 

 「じゃあな」

 

 一方的にそう告げ、ナイフを振り抜いた。 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グラブスが近づいてくる。

 

 それは見えている。 


 だが、俺はグラブスよりエリーの方にばかり集中していた。

 

 グラブスがナイフを抜いた。 

 

 それでも俺は、グラブスにも、ナイフにも、俺を捕まえている女にも全く注意が向かなかった。

 

 もうすぐ俺は殺されるんだろうって言うのは、流石にわかる。

 

 だが、それ以上に気になるんだ。

 

 エリーが、笑っているように見えることが、気になって仕方がない。

 

 死んだように見えた。

 

 だけど、口が笑っている。

 

 舌先を口から零しながら、顔中血まみれ泥まみれなのに。

 

 心底嬉しそうに、ヘラリと笑う瞬間が見えてしまって、もうわけがわからん。

 

 グラブスの足下に、エリーの捥ぎ取られた腕が落ちている。

 

 アレは左腕だ。

 

 そしてエリーの体の方を見ると、腕が2本ともあるような気がする。

 

 ぶん殴られて腫れ上がっていた頬が、もう腫れていないように見える。

 

 死ぬ直前になって、俺の目はおかしくなったらしい。

 

 「じゃあな」

 

 グラブスが俺を見てそう言った。

 

 ナイフが振り上げられた。

 

 俺の首めがけて振り抜くつもりなのはわかる。

 

 なのに、俺はエリーから目が離せない。

 

 口から零れている舌先が、ペロッと地面の血を舐めとったような、そんな気がしたせいだ。

 

 次の瞬間聞こえてきたのは、俺の首がナイフで斬られる音……ではなかった。

 

 ”ゴキャリ”という、グラブスの手首が折れる音だった。

かなりあっさり虐待が終わってしまいました。

エリーのことは大体虐め尽くした感が作者の中にあるような無いような感じです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ