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私の知らないエリー

 目が覚めて、エリーが居ない。

 

 私は夢のまどろみを引きずりながら、いつものように冷え切った思考を始める。

 

 ああ、今日もエリーは返ってこな……

 

 いや、もう帰ってきてる。

 

 「ハッ」

 

 ガバっと体を起こす。

 

 ここは……なんとか騎士団の兵舎。

 

 私はエリーを抱きしめて寝た。

 

 まだ日が昇る直前のようだ。

 

 私の腕の中には、かわいい寝顔で穏やかに眠るエリーが居るはず。

 

 居るはずなのに、居ない。

 

 「どうして……」

 

 部屋を見渡しても、エリーは居ない。

 

 ポツンと置かれたギドが沈黙を貫いていて、全力で背景に徹しているようだった。

 

 「ギド」

 

 「グー、グー」

 

 骨の癖に狸寝入りとは、ふざけているとしか思えない。

 

 「ギド。エリーはどこに行ったの?」 

 

 「さぁなぁ? トイレじゃねぇか?」

 

 「ベッドが冷たいです。エリーがベッドから出てからそれなりに時間が経っているはずです」

 

 「腹でも壊したんだろ。まだ日も登ってねぇし二度寝してろぉ。次起きたらエリーが居ると思うぜぇ」

 

 もったいぶられている気がする。 


 不愉快。

 

 「さっさとエリーがどこに行ったのか答えなさい。砕きますよ」

 

 「ほんとに知らねぇよ。お前が抱き着いて寝るから暑くて寝苦しかったんじゃねぇのかぁ?」

 

 ……

 

 この骨には表情が無いせいで、話しだけでは真意を確かめる術が無い。

 

 本当に知らないのか、答える気が無いのか。

 

 いずれにせよ、私は気になってしまって仕方がない。

 

 「ちょっと行ってきます」

 

 「どこにだぁ?」

 

 「お手洗いです。私もお腹が痛いので、時間がかかるかもしれません」

 

 「へぇへぇ」

 

 完全に目が覚めてしまった私は、当たり前だが尿意など感じていない。

 

 エリーがどこで何をしているのか、知りたくて仕方がないだけ。

  

 別にやましい事なんて、ない。

 

 きっとエリーにもない。

 

 だから、エリーが何か隠していたとしても、何も問題ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エリーがどこに居るのかなんて、正直見当がつかない。

 

 そこでとりあえずギドのいう通りお手洗いに苦戦している可能性を考えて、トイレを探し始めた。

 

 一応メイドにトイレの場所は聞いていたから、すぐに見つけられる。

 

 そしてそこで、偶然出会ってしまった。

 

 赤い目の男に。

 

 「あ、やべ」

 

 「ッ、そ、の目は」

 

 「あ~、よし、大丈夫だ。これは夢だ。知ってるか? 夢の中で眠ると、目が覚めるんだぜ。俺が今から眠れるように、子守唄を謡ってやる。大丈夫だ。悲鳴をあげる必要はねぇぞ」

 

 暗くてよく見えないけれど、男はヴァンパイアのようだった

 

 どうして人間の騎士団の兵舎にヴァンパイアが居るのか、詳しいことはわからない。 


 だけどピンときた。

 

 この男は以前ギドが言っていた、エリーの仲間のヴァンパイアだ。

 

 「名前は、ジャイコブか、ギンラクの、どちらかですか」

 

 「え? なんで俺の名前知ってんだ? エリーに聞いたのか?」

 

 ギドに聞いたのだけど、とりあえず頷いておく。

 

 「そうか。エリーが俺らのこと話してんだったらまぁいいか。俺はギンラクの方な」

 

 「マーシャです」

 

 「知ってる。チェルシーのアヒージョ食ってたよな。うまかったか? 俺も食ってみてぇんだけど、チェルシーにいくら頼んでも作ってくんなくてさ」

 

 「それより」

 

 そうだ。

 

 私の目的はトイレでもこのヴァンパイアでもない。

 

 「エリーがどこに居るか知りませんか?」

 

 「部屋に居ねぇ?」

 

 「居ません」

 

 「トイレにも居ないみたいだな。ちょっと待てよ。音良く聞いてみるからさ」

 

 なぜ女子トイレの中にエリーが居ないと断言できるのか、追及はしないことにした。

 

 ギンラクは少しの間耳に手を当てて、黙った。

 

 そしてなぜか鼻を鳴らした。

 

 「スン……あ、なんだ。探すまでもねぇや」

  

 「それはどういう意味?」

 

 「エリーならゼルマのとこだな。血ぃ吸ってんじゃねぇか? 匂いするし。エリーはゼルマの血ばっかり飲んでるからな」

 

 「……そう、ですか」

 

 そうだったんだ。

 

 エリーはゼルマ……ゼルマ? 誰?

 

 「案内してください」

 

 「えぇ……吸血してるとこ見られるの、俺は嫌だけどなぁ」

 

 そんなことは知らない。

 

 「いいから、案内して」

 

 「まぁ、いいけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギンラクの案内で、ゼルマという人物の部屋の前まで来た。

 

 扉の前に立つと、ほんの少しだけ、声が聞こえた。

 

 「れる……ぁ、ぁん」

 

 エリーの声だ。

 

 聞いたことも無いような声だ。

 

 大きなキャンディを、涎まみれにして舐めているかのような、リップ音。

 

 喘ぐかのような、高く甘えるような声。

 

 これが吸血の音?

 

 絶対違う。

 

 エッチなことしてるようにしか聞こえない。

 

 ギンラクは私を見ると、頬をポリポリと掻き、本当に微かな声で何か言い始めた。

 

 「エリーも普通の時は普通に吸うんだが、飢餓状態の時はこんな感じで吸うみたいなんだ。俺も見るのは初めてだけど、たぶんまだかかるな。前はゼルマの腕が噛み痕だらけになって、包帯グルグル巻きになってたりしたぜ」

 

 腕が噛み痕だらけ?

 

 そんなにその人の血が飲みたいの?

 

 そんなに美味しい?

 

 わからない。

 

 私の知らないエリーを、このギンラクも、ゼルマも、たくさん知っている。

 

 許せない。

 

 ギンラクはそっとドアノブを握ると、無音でそっと開いた。

 

 私と一緒に覗き見するつもりのようだ。

 

 

 

   


 

 

 

 

 

 


 うっすらと開いたドアの隙間から、エリーが見えた。

 

 昨日私たちを王都に連れてきた、エルマと言う女も見えた。

 

 なるほど、エルマは偽名で、本名がゼルマなのだ。

 

 そしてきっと、ゼルマはエリーと仲が良かったんだと思う。

 

 だって、エリーがあんなに必死にしがみついて、抱き着いて、濃密に絡み合っている。

 

 エリーのシャツが背中にぴったりと張り付いていて、もみあげが頬に張り付いている。

 

 汗だくになるくらい、何かしたんだ。

 

 私にあんな風に抱き着いてくれたことは無いというのに、ゼルマには、あんなに必死に。

 

 「ひゅちゅ、ん、ぐ、は、む」

 

 もぞもぞとエリーの首が動いて、うずめているゼルマの首か肩を舐めている。

 

 血を吸っているのだろう。

 

 私の血は欲しがらないのに。

 

 ゼルマの血は、あんなに必死に、なりふり構わず、貪るように飲む。

 

 エリーはこちらに背を向けているから、どんな表情なのかはわからない。

 

 きっと私には見せてくれたことが無いような、トロトロにとろけた表情を浮かべている。

 

 ゼルマの顔は見えた。

 

 痛がっているようには見えない。

 

 若干嬉しそうにも見える。

 

 羨ましい。

 

 ゼルマの服をギュっと握りしめていたエリーの手が、離れた。

 

 それを見たゼルマがエリーを離そうとするが、エリーは離れようとはしなかった。

 

 「ああ待て、脱ぐから」

 

 「やら、まれらい」

 

 エリーの人差し指が黒く染まって、鋭く尖って、ゼルマの襟から袖をシュッと引っ掻く。

 

 すると嘘のようにゼルマの服が切れて、肩周辺が露出した。

 

 ゼルマは惜しげもなく肌を晒して、エリーは狙いを首から肩に変え、また噛みついた。

 

 涎でテラテラと光る首が見える。

 

 どれだけエリーに求められ、噛まれ、舐め上がられたのか、まざまざと見せつけられているようだ。

 

 「まぁ安い服だからいいが」 


 「んん、ふ、ん」

 

 「聞いてないな、これは」

 

 エリーはゼルマの肩に噛みついた後、そのまま固まって、鼻から嬉しそうな吐息を漏らしていた。

 

 そしてゼルマはそんなエリーを、どこか愛おしそうな視線で見ている。

 

 おかしい。

 

 それは私の役割のはずなのに。

 

 しばらくゼルマの肩を味わっていたエリーは、一旦満足したのか、口を離した。

 

 血の混じった唾液がアーチを描いて垂れて、その様がなんだか艶かしく見えた。

 

 「んは……また、腕、噛みたい」

 

 「ああ、好きにしてくれ」

 

 腕を噛みたい。

 

 エリーはそう言った。

 

 どうするのか気になったが、見ていればわかった。

 

 エリーはゼルマの二の腕に噛みついて、肘に噛みついて、前腕に噛みついて、手首に噛みついて、親指の付け根にも噛みついた。

 

 血を吸っている様子はなかった。

 

 長い牙を肌に埋めて、その感触を味わっている。 

 

 ゼルマは痛いはずだ。

 

 それなのに、痛みをおくびにも出さない。

 

 静かにエリーに噛まれている腕を眺めては、エリーと視線を交わし、笑いかけていた。

 

 エリーもきっと嬉しそうにしているのだろう。

 

 きっと気持ちいいのだろう。

 

 悦に浸っているのだろう。

 

 妬ましい。

 

 私からは見えない、見たことも無いエリーの表情や一面を、ゼルマは知っていて、見ている。

 

 なぜそれが私じゃないの?

 

 「そこが好きなんだったな」

 

 「ふん、んちゅ、ここ好き」

 

 エリーはゼルマの親指の付け根に噛みつきながら、リップ音と共に、そう言った。

 

 好きだと。

 

 私じゃなくて、ゼルマに言った。

 

 そして手のひらから口を離すと、また首元にもどって唇を落とした。

 

 「血を吸うのはそこなんだな」

 

 「んん」

 

 ゼルマの腕からは、エリーの噛み痕からタラタラと血が流れ、赤く染まっていく。

 

 「んは……んぇ」

 

 エリーはまた首から口を離すと、舌を目いっぱい出して、ゼルマの腕を赤く染める血を舐めとる。

 

 「ん、ひゅ、ちゅ」

 

 何度も。

 

 「んんん、んく」

 

 何度も。

 

 「はむ、あむ」

 

 何度も。

 

 最後に血に染まった指を口に含んで、血を舐めとる。

 

 クチュ、ポチュという音がかすかに聞こえた。

 

 「はぁぁぁ」

 

 そして息が鼻から半分抜けたような息を吐いて、エリーはようやくゼルマの腕を手放した。

  

 「満足したか?」

 

 「うん……ごめん、急に血が飲みたいだなんて言って。人間になったはずなのに、結局また、ゼルマさんにこんなこと」

 

 「いいさ。いい加減血を吸われるのも慣れている……ああそうだ」

 

 ゼルマはそう言うと、エリーに噛まれなかった方の腕で、紙の切れ端に何かを書いた。

 

 「これを」

 

 「これは?」

  

 「私の住所だ。エリーのおかげで、隠れる必要が無くなったからな。家を買った」

 

 「そう、なんだ」

 

 「血が飲みたくなったら、来てくれればいい。マーシャさんからは飲まないのだろう?」

 

 「うん。マーシャさんには、痛い思いさせたくない。あ、ゼルマさんにだったら痛い思いをさせてもいいって思ってるわけじゃないよ?」

 

 「わかっている。あ、もし私が家に居なければ、大抵この兵舎に居るはずだ。手間だがこっちに来てみてくれ」

 

 「うん……ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 これ以上は見ていられなかった。

 

 もうすぐエリーは部屋を出るだろうってギンラクが言い出して、のぞき見を止めたのだ。

 

 エリーより先にベッドに戻らなければいけない。

 

 部屋に戻る時、ギンラクが聞いてもいないのに語り出した。

 

 「俺の知る限り、エリーはゼルマからしか血を吸ってなかった」

 

 わかっている。

 

 私が何もしないでピュラの町の家で待っている間、エリーを支え続けていたのはゼルマだ。

 

 エリーがゼルマと仲が良くて、エリーがゼルマにあんな風に頼ることを、私は咎められない。

 

 そんな資格はない。

 

 「あんまりよくねぇんだよな、それ。同じ人間からしか血を吸わないと」

 

 ギンラクはそこで言葉を区切る。

  

 「同じ人間からしか血を吸わないと、どうなるんですか?」

 

 そう聞き返すと、ギンラクはピタリと足を止めて私の目を見た。

 

 「な、なに?」

 

 「あれだ。全部夢だ。忘れちまえ」

 

 「は?」

 

 ギンラクは突然そう言うと、静かに歌い始めた。

 

 子守唄だ。

 

 何の冗談かと思う。

 

 思いはするけれど、口には出せない。

 

 「流れで色々言っちまったけど、余計なことだったらどうしよう」

 

 あまりにも眠たくて、ギンラクの声と自分が倒れ込む感覚を遠くに感じながら、私はまどろみに落ちて行った。

 

 

 

 

  


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝になっても、マーシャさんはなかなか起きなかった。 


 疲れてたんだね。

 

 私はちょっと激し目に吸血したせいで汗だくで、風邪ひきそうな感じだったから、騎士団の設備を借りて体を洗って着替えたりしてた。

 

 その後もマーシャさんが起きてなかったから、ジャイコブとギンの部屋に行ってみる。

 

 「ジャイコブ、ギン、居る?」

 

 「居るべ」

 

 「居るぜ」

 

 「チェルシーも居ます」

 

 うんうん。

 

 懐かしいね、この感じ。

 

 「入るよ~」

 

 部屋の中には大き目の机があって、サイコロとお椀が置かれてて、机をジャイコブとギンが囲ってた。 


 チェルシーはそれをつまらなさそうに椅子に座って見てる感じ。

 

 「久しぶり」 


 「久しぶりだべな~、元気だか?」

 

 「うん、元気だよ。何してるの?」

 

 「サイコロで今日の酒を賭けてるんだぜ。サイコロ3つ振って、出目の合計が高い方の勝ちだ」


 「楽しそうだね」

 

 「見ている分には退屈過ぎて眠ってしまいそうです」

 

 「……みんな元気そうだね」

 

 4人全員で集まるのは、久しぶりだ。

 

 なんだか嬉しい。

 

 マーシャさんはたぶんまだ起きそうにないから、チェルシーと一緒にサイコロで遊ぶ2人を眺めることにした。

 

 サイコロの出目で一喜一憂するジャイコブとギンを微笑ましく眺めてると、ギンがふと私を見た。

 

 「そう言えばエリーには言ったっけ、血の伴侶の話」

 

 血の伴侶? 

 

 聞いたことない。

 

 「ううん聞いてない。なにそれ?」

 

 「チェルシーも知りません」

 

 「おらも知らねぇだ」

 

 ギンだけが知ってることなのかな。

 

 「お前らも知らねぇのかよ。ヴァンパイアが同じ人間から血を吸い続けると、だんだん他の人間の血を飲みたくなくなっていくってやつ」

 

 「え」

 

 なにそれ知らない。

 

 「ああ、ヴァンペットのことだべな」

  

 「それならチェルシーも知っています」

 

 えぇ……

 

 「俺は血の伴侶って教わったけどな。要はアレだ。人間を1人攫ってきて、そいつから血を吸い続けると、人間1人の行方不明ってなるから潜伏がバレにくくなる。何人も襲って血を吸いまくるより安全だろ? 攫ってきた人間が死ぬまではずっと一緒に居るから、血の伴侶って言うんだって」

 

 「おらが教わったのとはちげぇべ。おらぁ人間飼って血ぃ吸い続けてっと、他の人間の血を受け付けなくなるからやめとけって聞いただ」

 

 「チェルシーもジャイコブと同じように習いました。この脳なしと同意見と言うのは気に入りませんけれど」

 

 「へ、へぇ……」

 

 私は今どんな顔になってるんだろう。

 

 きっと引きつってるよね。

 

 私、ヴァンパイアになってから、ゼルマさんからしか吸血してない。

 

 あ、トレヴァー邸でドロドロしたやつ飲まされてたっけ。

 

 でも、牙を刺して生き血を直接吸ったのって、ゼルマさんだけだ。

 

 夜明け前、ゼルマさんを見た時、吸血衝動が強くなったのって、血の伴侶ってやつが原因?

 

 「たぶんエリー、ゼルマを血の伴侶にしちまってるよな?」

 

 「は、伴侶とは違うんじゃないかな!」 

 

 私がそう言った途端、チェルシーが椅子から立ち上がって、部屋を出ようとする。

 

 嫌な予感がしたから、チェルシーの手をパシッと掴んで止めた。

 

 「どこに行くのかな。ねぇ、チェルシーはどこに行くつもりなの?」

 

 チェルシーはニヤァって笑って、私を振り返った。

 

 「ゼルマのところです。ゼルマがエリーの血の伴侶になっていることを伝えて差し上げようかと。喜んでいいですよ? お礼はいくらでも受け取ってあげます」

 

 「やめて! 恥ずかしいから!」

 

 「嫌です」

 

 「どうして!? ねぇどうしてそういう私が嫌がることするの?! お願いだから、血の伴侶とか、なんかすごく恥ずかしいからやめてよ!」

 

 「嫌です」

 

 私は明け方たっぷり血を飲んだ。

 

 だから今の私の体は人間にかなり寄っている。

 

 つまり、ヴァンパイアであるチェルシーに力で勝つ見込みはゼロってことだ。

 

 チェルシーは私を引きずりながらズンズン歩いて、兵舎の廊下を進んで行く。

 

 「待って! お願いします! 待ってください!」

 

 「良いではないですか、血の伴侶。ロマンチックです。あなたはいつまでもゼルマに依存し続けているのですから、割り切ってしまいましょう。一生ゼルマと生きていきます。毎日血を飲ませてくださいと言えばよいのです」

 

 「恥ずかしすぎるよ! ねぇ楽しい?! 私を虐めてそんなに楽しい?! すごくいい笑顔だけど!?」

 

 「楽しいです」

 

 「鬼! 悪魔!」

 

 「吸血鬼です」

 

 私どんなに引っ張ってもチェルシーの歩みは止まらなくて、私がどんなにお願いしてもチェルシーは聞いてくれなくて、結局ゼルマさんの部屋まで私は引きずられた。

 

 そして私は床に組み伏せられて、口をふさがれて、チェルシーはそのまま血の伴侶についてゼルマさんに説明してしまった。

 

 ゼルマさんはチェルシーの説明を全部聞いて、それからいつもみたいに苦笑した。

 

 「あ~、そうか。まぁいいんじゃないか? 私が死んだ後、エリーが誰の血を飲むのかが心配だが、それは自分で何とかしてくれ」

 

 私は顔から火が出そうだった。

これは寝取られ系ヒロインのマーシャなのか、寝取られ系主人公のエリーなのか、どっちなのでしょうね。

……両方ですかね。

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― 新着の感想 ―
[一言] めちゃくちゃ興奮しました(^.^)最高でした!!! あと『チェルシーもいます』って、エリーに自分がいることのアピールしてるところがなんだかグッと来ました!チェルシー可愛いです(≧∀≦)
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