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ロードスケルトンは襲撃する

 ギドは人間の国の東海岸で、海の底から自分の下に帰ってきた部下を見る。

 

 総勢40人のパイレーツスケルトンたち。彼らはギドが奪ってきた冒険者の装備を身に着けており、海賊というより冒険者のスケルトンにしか見えなかった。

 

 「よ~しお前ら、とりあえず復活おめでとう」

 

 ギドは元気よく声をかけると、彼らはカタカタと骨を鳴らし腕を振り上げて答える。声帯どころか皮も肉もない彼らは、そういう返事の仕方しかできない。

 

 「最初の命令は、待機だ」

 

 し~んと静まり返るパイレーツスケルトンたち。

 

 「まぁそういうなって、吾輩だってさっそく暴れに行きたいが、目標が内陸にあるのだ」

 

 ガタガタガタっと音をたてながら、40人の死体はギドに詰め寄る。”どういうことだ””なんで海賊船しかないのに目標が内陸にあるのか”などなど、彼らは様々な不満を込めてガタガタする。

 

 「落ち着けって、今考えてるからよぉ。内陸に用事があるのは吾輩ではなくご主人様なんだが、考えなしに戦車じゃなくて海賊船作り始めちまったのよ」

 

 ギドはこの後2時間ほどかけて部下たちを諫め、彼らを海に浮かぶ骨製の海賊船に詰め込んだ。

 

 「で、どうすっかねぇ」

 

 ギドはそう言いながらも、海賊船で内陸に攻め込む方法をすでに思いついていた。

 

 「とにかく王都の戦力をそがねぇと、いくら吾輩たちでも浄化されておしまいだしな」

 

 そこまで考えて、ギドはオリンタス山のふもとにいるホグダの下へ向かう。

 

 「ようご主人様。ちょっとやってほしいことがあるんだ。ギルバート様の解放のために」

 

 こう言えばホグダは断らないと、ギドは知っていた。

 

 「なによ? 言ってみなさい」

 

 「余ってる動物死体をアンデッドに変えて、山の近くの町や村を襲いまくりたい。吾輩よりご主人様のほうが死霊術うまいだろ? アンデッドの生成を手伝ってくれ」

 

 「はぁ!? なんで村や町を襲ったらギルバートが解放されるのよ。馬鹿じゃないの」

 

 復活してすぐのころのギドならここから喧嘩に発展していたところだが、ここ数日でホグダとのしゃべり方について学習していた。

 

 んんとつまりこれは”それはギルバート開放につながる理由はなに?”という意味だな。

 

 「今まで何度も吾輩が襲撃してるだろ? で、今度は大量のアンデッドを連れて襲えば、たぶん王都にいる手練れの冒険者が対応に来ると思うわけよ。王都の戦力が削がれれば、吾輩たちの襲撃がやりやすくなる」

 

 ホグダはギドを見ながら確認する。

 

 「いいわよ。ただしわかってるでしょうね。アンデッドだからって」

 

 「人間に被害を出していいわけじゃない、だろ? 出さねぇよう尽力するし、出しても最小限だと胸を張って言えるように抑える。これでいいんだろ?」

 

 ホグダのセリフをさえぎってギドは言う。ギドが活動するとき、ホグダは決まってそう言っていたから覚えてしまったのだ。

 

 「ふん、そうよ」

 

 スッと立ち上がって動物死体を集めた場所に向かうホグダ。ギドはもう一つ伝えるために声をかける。

 

 「ご主人様、もう一つ作ってほしいものがあるんだけどよ」

 

 「もう、なによ?」

 

 うるさい言わんばかりにギドを見ながら聞き返す。

 

 「3頭馬車を6台と、スケルトンホース18頭」

 

 「多いわね! そんなに作ってどうすんのよ。海賊船は置いていくの?」

 

 「いいやご主人様、海賊船で行くのさ」

 

 

 

 

 「ようしお前ら! 出港準備だ! キャプスタンにつけ!」

 

 すべての準備を終え、ギドは海賊船ボーンパーティにいる部下に命ずる。

 

 40人の部下はそれぞれ、マストやキャプスタンについて出航の準備を始める。

 

 「目標王都北門! 抜錨(ばつびょう)!」

 

 船長の命令を聞いた部下たちは一斉に動き出す。錨を巻き上げマストを下ろし、スケルトンホースがゆっくりと進み始めた。

 

 海賊船ボーンパーティ。その船底には6台の馬車が連結され地上を進むよう改造されていた。

 

 「取り舵いっぱぁい!」

 

 ギドがラダーを左に回すと、カッター型のマストが左向きに回ってゆく。

 

 改造されたマストはヨットのように風の抵抗を受けることによって、むりやり船全体を方向転換させる。

 

 速度の乗った海賊船は、とてつもなく大きな地響きと巨大な土煙をまき散らしながら王都へと向かっていった。

 

 

 

 

 王都の北門が目前に迫ってきていた。防壁の上にいる兵士は慌てて逃げているようだ。

 

 「総員! 衝撃に備えろ! 門をぶち破るぞ!」

 

 王都の兵士どもは北門につながる大通りの避難を済ませてくれたか? 大通りを直進して王城まで行くつもりなんだが、ここで大量に人を轢き殺したらご主人様に怒られるからな。 

 

 内心不安に思いながら、ギドも衝撃に備えて蹲った。

 

 船の先端に取り付けられた破城槌(はじょうつい)が門をぶち破る。

 

 派手な音とともに門の破片をまき散らす。その破片は近くの家屋や通りに降り注ぎ、時に突き刺さっていた。

 

 衝撃が収まるとともにギドは立ち上がり、今まさに進み続ける大通りを見る。

 

 「避難は済んでたようだな」

 

 まぁこの船が見つかってから十分な時間があったからな。

 

 内心ほっとしながら近づいてくる王城を見る。

 

 「囚われのギルバート様ね。囚われるのはお姫様と相場が決まってるんだぜ、普通はなぁ」

 

 海賊が王都を襲撃する時点で普通ではないのだが、ギドは自分のことは棚に上げてつぶやく。

 

 ギドを乗せ地上を進む海賊船は、表通りに捨て置かれた馬車や設置された噴水を破壊し、派手な音と煙をあげながら進んで行く。

 

 「ご主人様がお呼びだぜ。さっさと出てきてくれよ、ギルバート様よぉ!」

キャプスタンというのは、世紀末漫画とかで奴隷が回してるあれです。錨を巻き上げるために用いています。

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