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半ヴァンパイアはウルフを狩る

 

 モンドさんは牧場からほど近い位置にある干し草の倉庫に私を案内してくれた。


 「農具置き場で寝ると危ないから、干し草の上で寝ろ。日が沈む前に起こしに来る」

 

 「あ、はい。じゃあお願いしますね」

 

 会話が終わるとモンドさんはさっさとどこかへ行ってしまう。とりあえず寝よう。眠くて仕方ない。

 

 雑嚢をおろして、毛皮のポンチョを脱いで、ベルトを外してから干し草にダイブする。そのままあくびをしたらもう眠ってしまった。

 

 

 

 

 「おい起きろ。もうすぐ日が沈むぞ」

 

 そんな声を聴いて私は目を覚ました。扉を開けて仏頂面を向けているモンドさんがいる。

 

 「おはようございます。すぐ行きます」

 

 ベルトを着けてポンチョをかぶって雑嚢を腰につけ、左腰のショートソードを確認して、準備完了。

 

 倉庫をでてモンドさんに話しかける。

 

 「昨日牧場を見張ってたってポルコさんいってたよね?見張ってた場所はどこ?」

 

 「家畜小屋の近くの茂みだ。風下にあって小屋を見張るならあそこしかないって言ってた」

 

 じゃあそこで待ち伏せてればいいかな。

 

 「松明を使うと当然ウルフにバレれるから使えないし、今夜は月が出ないぞ。ほとんど真っ暗だ」

 

 確かに真っ暗闇でウルフと戦うのは危険だけど、私はわずかな光で十分視えるし問題ないね。真っ暗なほうが私に有利まである。

 

 「ダイジョブダイジョブ!私に任せてよ」

 

 モンドさんを安心させるためにニカッと笑ってみる。

 

 「おまえ……」

 

 あれ?モンドさんが困惑した顔してる。なにか変なこと言ったかな?

 

 「寝る前と性格変わってないか……?」

 

 「あ、」

 

 しまった。夜になったからテンションが上がってしまった。ちょっと恥ずかしい。

  

 「いやなんでちょっと赤くなってんだよ」

 

 「夕日のせいでそう見えるだけだよ」

 

 「もう沈んでるぞ」

 

 「じゃあ赤くなってないよ」

 

 「じゃあってなんだよ」

 

 ちょっと恥ずかしかっただけなんだからほっといてよ。

 

 

 

 「ここの茂みで見張ってた。さっきも言ったが牧場からこの茂みは風下だからにおいでバレることはないと思うし、ポルコさんや俺でも隠れられるくらい大きな茂みだ」

 

 「うん。ここで待ち伏せることにするよ。というかモンドさんも夜に見張ってたことあるんだね」

 

 「ポルコさんと交代でな」

 

 「そっか」

 

 とりあえず会話を打ち切って、うつ伏せで茂みの隙間から牧場と家畜小屋を視界に収められるか見てみる。……問題なく見えるね。

 

 雑嚢から水筒と朝買ったパンの残りを取り出して食べる。ウルフが来るのはもう少し後みたいだし、今のうちに腹ごしらえしておく。……というかモンドさんが帰らない。茂みについたらすぐ帰ると思ってたんだけどな。モグモグ

 

 「モグドさん」


 「飲み込んでからしゃべれ」

 

 言われた通り口の中のパンを水筒の水で流し込む。

 

 「モンドさん、もしかして一緒に待ち伏せるつもりなの?」

 

 「そうだ」

 

 「でも、戦えないんでしょ?」

 

 「この茂みから出るつもりはない」

 

 こんなにきっぱりと隠れ続ける宣言する人初めて見た。でもよく考えたらモンドさんは冒険者じゃないし当然なのか。

 

 「……あ、モンドさんもパン食べる?」

 

 「じゃあ少しくれ」

 

 カチカチのパンを割って少し分けてあげる。バギィッ!というパンが出しちゃいけない音がする。

 

 「おい、そのパンちゃんと食べられるのか?」

 

 「さっきから私が食べてるじゃん」

 

 言いながら割ったパンを差し出す。この場合は”ちぎった”じゃなくて”割った”が正しい……たぶん。

 

 モンドさんはパンを受け取ってかじってみる。でも、ちょっと前の私のように歯が立たないようだ。

 

 「硬すぎだろこのパン、どうやって食ってるんだお前」

 

 「私はちゃんとかじれるよ。あごの力足りないんじゃないの?」

 

 「こんな硬いもんかじれるほうがおかしいだろ」

  

 「一口サイズに割って、口の中でしばらく噛んでればそのうち噛み切れるよ」

 

 私のアドバイス通りパンを小さく割って口の中でモグモグし始めた。私も自分のパンをかじってモグモグする。

 

 二人してモグモグしながら牧場の方を見張る。なんだろうこの状況……

 

 それからしばらくしてやっとウルフが現れた。真っ暗なせいでモンドさんは気づいていないようだ。

 

 「ウルフが来たみたい。西側の柵を飛び越えたんだと思う」

 

 「もう来たのか?俺には何も見えないぞ」

 

 見えないというので一番家畜小屋に近づいているウルフを指さして教えてあげる。

 

 「ほらあれ」

 

 「おお本当だ、よく気付いたな」

 

 「それじゃ倒してくる」

 

 音をたてないように腰に下げたショートソードを引き抜き、姿勢を低くしたまま一気に駆けだす。わずかな足音と風切り音を発しながらウルフとの距離を一気に縮め、家畜小屋に一番近かったウルフを走りながら切り捨てる。

 

 昼間と比べて体が軽い。五感が鋭くなった気がするし、ウルフを一撃で仕留める攻撃を軽々と放つことができた。私がこうなってから何度も確認したことだけれど、私は夜のほうが強い。

 

 家畜小屋の周囲にはさらにウルフが5匹見えた。ポルコさんの情報が正しければあと何匹かいるんだろうな。

 

 私がウルフを見つけたということはウルフも私を見つけたということ。5匹のウルフは一斉に私に向かって駆けだしてくる。私も彼らに向かって走りながら武器を構え、ウルフの初撃に対抗する。

 

 先頭を走るウルフが牙をむきだして飛び掛かってくる。こうしてみると結構大きなウルフだ。こういう狼系の魔物の一番強い攻撃は噛みついてブンブン振り回す攻撃で、結構大きな体躯でそれをされると手足くらいなら引きちぎられてしまう。

 

 私の首に噛みつこうと口を開けたウルフに対して、私は走るスピードを一気に上げて近づき、向かって右に反れながらショートソードの切っ先をウルフの口の中へ入れ、そのまま振りぬきながら駆け抜ける。

 

 先頭の一匹がやられている間に2匹が襲い掛かってくる。右からくるウルフは私の武器を持った右手首狙い、左からくるウルフは首狙いかな。ほぼ同時の攻撃、連携が取れているね。

 

 前に出してる左足を軸にして、右のウルフの頭に回し蹴りを打ち込む、手首狙いで飛び掛かりの高度が低いから簡単に蹴飛ばせる。

 

 蹴った後すぐに一歩踏み出して、左のウルフの飛び掛かりをくぐりながらがら空きのおなかをショートソードで切り裂く。これでもう左にいたウルフは倒せたはず。

 

 頭を蹴飛ばされたウルフがふらふら立ち上がろうとするけど、その前に首を刺してとどめを刺した。

 

 ふぅ、と一息つきたくなるけど、5匹いたはずだからあと2匹残っている。周りを見渡すともういなくなっていた。

 

 「……逃げた?」

 

 もしかしてと思い西の方を見る、西側の柵を飛び越えてきたなら、帰りも西側の柵を飛び越えると思ったんだけどいなかった。

 

 ということは牧場の中のどこかにまだいる。家畜小屋は静かだから、ウルフは家畜小屋には入っていない。入っていたら家畜が暴れるだろうし。

 

 「いったいどこに行ったんだろう」

 

 開けた牧場の中で、家畜小屋以外に大きめのウルフが隠れられる場所は……

 

 とりあえず家畜小屋に行ってみよう。

 

 ……いた。というかいそう。足跡が残ってるね。

 

 家畜小屋の裏側、陰になっているところに足跡が続いている。狭い場所に固まっているなら好都合だ。

 

 姿勢を低くしてショートソードを構えて、一気に家畜小屋の裏に突撃する。案の定3匹固まっているウルフが見えた。私の出現に驚いているようだし、このまま一気に仕留めよう。

 

 一番近くにいたウルフから順に振り下ろし、切り上げ、刺突の順に首を打ち込んで倒してしまう。昼間ならともかく夜ならウルフより私のほうが素早く正確に動けるのだから、そう難しいことではない。

 

 さて、モンドさんに報告してからウルフの死体を片付けて依頼完了だ。

とりあえず討伐完了です。次はピュラの町まで戻りたいですね。

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