半ヴァンパイアは馬に乗る
またもスマートフォンからの投稿になりまして、執筆が遅れてしまいました。しばらくはスマートフォンからの投稿になります。
オリンタス山の東側の海辺を適当に歩いていると、ギドの言っていたとおりスケルトンホースが何頭か固まってボーッとしているのを見つけた。
「鞍も手綱もないな」
シュナイゼルさんがそう呟いて、確かにと思った。裸馬に騎乗するのって難しいんじゃなかったっけ? と言うか跨がるのに身長が足りない気がする。
「……しゃがんでくれる?」
物は試しにと思ってスケルトンホースに話しかけてみると、普通にしゃがんでくれた。言葉で意志疎通出来るみたい。
「乗るね?」
一応一言伝えてから乗ってみる。
うん。無理。
「どうした?」
乗ってすぐに降りた私を見て、シュナイゼルさんが怪訝な顔で聞いてくる。う~ん、言わないわけにもいかないよね。
「骨がね、すごく食い込む。足場が無いから全体重がここに……」
と言いつつ視線を自分のお股に向ける。普通に痛かったし、あのままスケルトンホースに立ち上がられたら大変なことになっていたかもしれない。
「何とかしよう。また背負われては困る」
スケルトンホースに乗って帰るのは私のお股が耐えられないし、またおんぶして走って帰ろうかと思ってんだけど、困るらしい。何が困るのかな。
シュナイゼルさんは紫色の陣を出して、死霊術でスケルトンホースを改造しはじめた。
あばら骨が足場や手で掴めるようにグンニャリと変形していく。
「よし」
よしって、背骨は何にも変わってないよ? 絶対痛いよ。
「いやいや、座る部分手付かずだよ?」
「背骨には手を加えられない。布があれば巻き付けて痛くないように出来るが、無いので腰を下ろさずに足場と手すりだけで乗れ」
「布あるよ。着替え用の服。一応シュナイゼルさんの分も持ってきたから、巻き付けようよ」
馬なんて乗ったことないのに、立ち乗りなんて怖いことしたくない。着替えを座る部分の骨に巻き付けてから、もう一度跨がってみる。
「どうだ?」
「痛くはないかな。走り出したらどうかわかんないけど、足場があるから大丈夫だと思う」
「なら、もう1頭用意してからカッセルに向かうとしよう」
「おおぅおおぅおおぅ」
ヤバイ。早いし揺れる。頭が上下に揺れて変な声出る。思いっきりしがみつくことしかできない。
「静かに乗れ。舌を噛むぞ」
「んんぅんんぅんんぅ」
「腕を伸ばして上体を起こせ」
無理。怖い。あとちょっと痛い。
「足に力を入れて衝撃を受け止めろ。ずっと頭を揺らされる」
「そんなこと、言われても」
シュナイゼルさんをちらりと見てみると、私と同じスピードで走ってるのに余裕そうだった。両手両足でひたすらしがみついている私とは姿勢が全然違う。
「もう、そのままでいい」
諦めたようにそう言って、シュナイゼルさんは私の方から目を背けてしまった。
カッセルの町まで、結局私はずうっとしがみつきっぱなしだった。すごく疲れた。でも王都を出てからほぼ休み無しだったから、私よりもシュナイゼルさんの方が疲れていたみたい。
「ここで休んでから戻ろ?」
「……そうする」
となって、カッセルの町で一泊することになった。体も洗えるし着替えられるし、何よりベッドで休める。シュナイゼルにとっては仮死状態から目覚めてはじめてのベッドと言うことで、半日寝っぱなしだった。
私も久しぶりに一人で寝たんだけど、あんまり寝られなかった。なんでだろう?




