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半ヴァンパイアは弟子に会う

 助けてと叫んでもがいていると、ふとスケルトンたちが動きを止めた、そしてカラスの鳴き声もはばたく音も、ひとりでに宙を舞う剣の音も聞こえなくなっていた。

 

 「え、えぇっと」

 

 ―ギドやご主人様がスケルトンたちを止めてくれたのかな?

 

 カツンカツンという硬い靴の足音がして、ランタンの明かりがこっちに近づいてくるのが見える。スケルトンたちはその近づいてくる人に道を譲るように下がる。

 

 ―足音的に、ギドじゃないのかな。カチャカチャっていう音がしないし。となると、ご主人様(ホグダ)

 

 だいぶ近くまで、その人が近づいてきた。ランタンの逆光で姿が全く見えないし眩しいけど、いきなり攻撃してきたりはしないみたい。

 

 「貴様、先ほどギドという者に助けを求めたな。ギドとはなんだ?」

 

 わずかにしわがれた男の声で、ギドについて問われる。

 

 ―なんて答えるのが正解……? この人がギドの敵とかだったら、ギドに迷惑がかかるかも。でもここでちゃんと答えないと私が死んじゃうかもしれないし……

 

 「ギドは喋るスケルトン」

 

 「それだけか?」

 

 「そ、それだけ」

 

 「……」

 

 嘘はつかず、できるだけ情報を出さないようにと思って言ってみた。ランタンの逆光のせいで全く表情が読めないけど、何か考えてるような感じがする。

 

 「では、ご主人様というのは死霊術士ホグダのことか?」

 

 「え?!」

 

 「違うのか?」

 

 「あ、合ってる」

 

 あっさりと言い当てられ、とっさに答えてしまう。

 

 ―てことは、いろいろ知ってる人なんだね。とりあえず、ご主人様たちの仲間だって言えば助かるかも。できれば他の3人も襲わないようにお願いしてみよう。

 

 「もしかして200年前のご主人様の知り合い?」

 

 私がちょっと距離を詰めようと質問すると、その人はちょっと間を置く。

 

 ―あれ? 間違った? 共通の知り合いについてなら話題としていいと思うんだけど……

 

 「知り合いではなく、弟子だ。ホグダ師匠が生きている間の話だがな」


 ―んと、確かギルバートを王家に取られちゃって、取り返しに行って殺されちゃったんだっけ? それ以降会ってないのかな。


 「お前こそ、師匠やギドとどういう関係だ?」

 

 「えぇっと……攫われて捕まってわき腹揉まれて血を飲んだり指しゃぶったり一緒に王都で暴れてギルバートを奪い取ったりした関係かな」

 

 ホグダやギドと出会ってから別れるまで、大体あったことを詰め込んでみた。

 

 「ふむ。便利な愛玩用下僕と言ったところか」

 

 「どういう意味かな?!」

 

 「血を飲んだりというのは何だ? ヴァンパイアか何かか?」

 

 「ハーフヴァンパイアですけど」

 

 ―ヴァンパイアと間違うのはやめてほしい。ヘレーネさん思い出すから。

 

 「それならスケルトンの5.6体振りほどくくらい簡単だろう。なぜしなかった?」

 

 「パニックというか、ヴァンパイアレイジが頭から抜けてたというか」

 

 逆光で見えないけど、肩をすくめたようなため息が聞こえた。

 

 「師匠やギドの話が本当だというなら、証拠を見せてもらう。証明できる何かはあるか?」

 

 「ええっと、ご主人様たちの居場所知ってるよ」

 

 「では明日にでも案内してもらおう。その話が本当なら、我々にとってもうれしいことだ」

 

 トントン拍子で話が進んで行くけど、私は重要な部分はちゃんと聞いていた。

 

 「明日?」

 

 「明日だ」

 

 「今日は帰してくれるの?」

 

 「そうだ。明日の夜、一人で下水道におりて適当に進めば迎えに行く」

 

 ―よし! とりあえず生き延びた! 生きて帰れる! 助けを呼んでみるもんだね。

 

 「もし来なければ面倒なことになるだろう。必ず来い」

 

 「はいはい、わかってますよ」

 

 ここまで話して、やっとスケルトンたちが解放してくれた。ずっと私の体中を掴んで背中から組み付いて、いろんなところに噛みついたままだったからしゃべりにくかった。

 

 「他の3人は?」

 

 「分断してそれぞれ違う位置で戦ったり休んだりしている。スケルトンで誘導して出口に向かわせるから、お前も出口に向かえ」

 

 ―そんなこと言われても、帰り道完全に頭から抜けちゃったんだけど。 

 

 「帰り道わからない」

 

 「スケルトンに案内させる」

 

 ―至れり尽くせり。

 

 

 

 

 

 結局お互い名乗らないまま別れて、スケルトンに手を引かれて真っ暗闇の下水道を進む。

 

 本当にこっちであってるのか。スケルトンが案内している先は、本当に出口なのか。なんて考えてしまったけど、しばらく進むと壁に備え付けられたランタンと見覚えのある道が見えた。

 

 スケルトンは私の手を放してそのまま帰って行っちゃった。とりあえず下水道に降りたときに使った梯子のあたりで3人を待つことにする。

 

 ―まだ他の3人は着てないね。

 

 私がご主人様やギドに助けを求めた声は、3人に聞こえてしまったかもしれない。ご主人様はともかく、ギドに助けを求めたのを聞かれていたら不味いかもしれない。ギドは王都を襲撃したときに堂々と名乗っちゃってたし、私がギドの仲間だとバレたら困るかも。

 

 「どうか聞こえていませんように」

 

 「何がだ?」

 

 「どわぁああああああああ!」

 

 独り言を言ったらすぐ背後から聞き返されて、心臓止まるかと思った。

 

 「ユーアさん! よかった。帰ってこれたんだね」

 

 「ああ、だがセバスターやアーノックとはぐれた」

 

 「うん。セバスターはともかくアーノックは心配だね」

 

 それからしばらくして、アーノックを担いだセバスターが合流した。

 

 「アーノックが熱出しちまった! なんとかしろ!」

 

 「不衛生な場所で怪我をしたから、感染症になっちゃったんじゃない? 早く治療院に連れて行こう」

 

 「おお! そうか!」

 

 ―まぁご主人様の弟子の人に聞いたことの受け売りだけど。

 

 「よし! すぐに帰るぞ!」

 

 いろいろあったし、依頼も達成できてないけど、全員無事に帰ってこれた。とりあえず、今日はこれでいいことにしよう。

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