半ヴァンパイアはいつも通り
初投稿、処女作です。
誤字脱字などありましたらどうか許してください。
「いってきま~す」
いつも通り家を出る。目的地もいつも通り小人の木槌亭というお店。
私たち冒険者が仕事を斡旋してもらったり、お酒を飲んだり、ご飯を食べたり、ほかの冒険者とお話ししたりするお店。
私が扉を開けると、いつも通りの、「エリーちゃんか、いらっしゃい」というマスターの渋い声が飛んでくる。
早朝なだけあって私のほかにお客さんはいないようだった。というかほかの冒険者がいなくてお店が開いている時間を狙って来ている。
カウンター席に座りながら、おはようと声をかける。
「お仕事ある?」
「あるよ。報酬が安いのばかりだけどな」
と言って仕事の内容を簡単に説明してくれる。
「護衛依頼、討伐依頼、あとは雑用かな。護衛依頼はこのピュラの町から港の方にあるルイアって町に向かう行商人の護衛。討伐依頼は、近くの村の家畜を狙う魔物を討伐してほしいとのことだ。魔物が何かはわかってないが、足跡がウルフのものだったらしいから、まぁウルフなんだろうな。雑用の方も聞くかい?」
「いや大丈夫。討伐依頼にするよ。村はどこ?」
「南門から街道を南西に行ったところにあるサジ村が依頼の村だ。徒歩だと3時間ってとこかな。護衛依頼のほうが報酬が高いけど、討伐依頼でいいのかい?」
「いい」
「そうか」
本当は護衛依頼のほうがいい。報酬が高いし運よく一度も襲撃を受けなければ、ただ行商人についていくだけで報酬がもらえる。でも私は、夜に誰かと一緒にいることはしたくない。
マスターとの会話をさっさと終え、私は出発することにした。何せ往復に6時間もかかるのだから、早朝に出ないと日帰りできなくなってしまう。
「それじゃ行ってくるね」
「おう、いってらっしゃい」
マスターの渋いいってらっしゃいを聞きながら店を出て南門へと歩く。朝焼けのピュラの町はとても静かだ。普段騒がしい表通りすら静まり返っていて、お店の開店準備の音がほんの少し聞こえてくる。この時間から空いているのはパン屋さんくらいだ。途中でパン屋さんに寄って一番安いガチガチの硬いパンを買って、南門を出てからパンをかじる。食べ歩きは町中じゃ控えないとね。外に出てからは知らないけど。
ガジガジと硬いパンに噛みついて、モグモグしながら南西の街道を進んでいく。
ちょっと前まではこのパンを食べるのは、硬すぎて文字通り歯が立たなかったけど、今なら余裕だ。むしろこの硬い表面に歯を突き立てるのが好き。このパンは安くて大きいという理由で食べていたけど、この歯ごたえが癖になりつつある。
パンを半分ほど食べたあたりでおなか一杯になり、残りは布にくるんで雑嚢に入れておく。
それから2時間ほど歩いてサジ村が見えてきた。見えてきたはいいがどうにも困った。
「本格的に眠い」
私が一日の中で一番眠い時間帯がまさに今で、もうこのままこの道の小脇で眠りたい。
「朝日なんか浴びるからこんなに眠いんだよ」
一人で冒険し始めてから独り言が増えた気がする。でも誰かと一緒に冒険なんて私にはできないし、でも独り言ばっかり言ってると寂しいやつだって思われちゃうしでも実際寂しいやつって言われたら否定できる気がしないし
そんなネガティブなことをふわふわ考えているとサジ村に到着してしまった。お百姓さんの恰好をした人が村の門のところから私の方をじっと見ている。
私もじっと見つめ返す。
ただこの人と見つめあうだけの時間が過ぎていく。
……
「この村に何の用だ?」
よかった。向こうから話しかけてくれた。変な間が開いちゃったからなんて言えばいいのかわからなかったんだよ。
「えっと、ピュラの町の小人の木槌亭で依頼を受けた冒険者。内容は家畜を襲う魔物の討伐」
「……もしかしてそうじゃないかと思ったんだが、まさか女の子一人が来るとはな」
そういうことは本人の前で言わないでもらえるかな。
「詳しいことはポルコっていう奴が話すことになってる。案内するからついてきてくれ」
と言って村の中へ歩いていくお百姓さん(仮)に黙ってついてく。
ああだめだ、この辺の人みんなお百姓さんだ。お百姓さん(仮)じゃ誰のことだかわからなくなりそう。でもこの人特徴らしい特徴ないし、あなたとかきみとかおまえとかじゃ失礼だし……
「えっと、お名前なんて言うの?」
とりあえず聞いてみることにする。よく考えれば名前を知らないから呼び名で困ってるわけで、名前が解れば問題ない。
「俺の名前か?モンドっていうんだが、別に覚えなくていいぞ。家が村の門に一番近いから、依頼を受けた冒険者がきたら案内しろって言われてるだけなんだ」
名前はわかったけど覚えなくていいって言われてしまった。ポルコって人のところまで案内し終わったらかかわる気はないらしい。女性の一人で活動している冒険者だからか、私がまだ子供に見えるからなのか、このモンドという青年は私が気に入らないらしい。全然こっち見ないし。
そんなモンドさんと、家群を抜け広い畑の横を進むと、これまたひろい牧場と家畜小屋が見えてくる。
モンドさんは家畜小屋の近くにある小屋の扉をたたき声をかける。すると中から白いシャツにオーバーオールを着た、まさに牧場主のようなおじさんが出てきた。
「モンドか。そっちの嬢ちゃんが依頼を受けた冒険者か?俺はポルコという。とりあえず入んな」
と言って小屋の中へ迎えてくれる。モンドさんは、それじゃ、とだけ言って家群の方へ帰ろうとするが、ポルコさんが
「おいモンド、お前もこい」
「なんでだよ。俺は冒険者をポルコさんのところまで案内するって話だったろ?後のことは俺には関係ない」
「俺は嬢ちゃんに依頼の詳しい話をした後は仕事に出なきゃならん、嬢ちゃん一人をほったらかすわけにゃいかんだろうが、魔物が出るまで嬢ちゃんの村での面倒見てやれ」
なんだか私子供みたいに扱われてない?冒険者なんだけど。
「子供じゃねぇんだからほっときゃいいじゃねぇか」
いいぞモンドさん。もっと大人の冒険者扱いするよう言ってやって。
「どう見てもまだ子供だろうが」
おもわずポカーンとしてしまった。そんなに幼く見えるのだろうか、ちゃんと冒険者らしい恰好をしているはずなんだけど。というか冒険者なんだから15歳以上の成人なんですけど!ほらモンドさんその辺ビシッといってやって!
「……はぁ、まぁそうっすね」
あれ?さっき子供じゃないって言ってくれたのに、なんでそこで説得されちゃったの?おかしいよ。こんなのぜったいおかしいよ。
しかし、私には初対面の人に子ども扱いしないでなんて言える度胸などないのであった……
小屋の中には小さな机とソファがあり、私はそこで依頼について詳しい話を聞くことになった。こざっぱりした小屋だなぁとか今どうでもいいことを考えていると、ソファの隣にドカッとモンドさんが腰かけて、対面にポルコさんが座ってお茶を出してくれる。
「改めて、今回の依頼を出したポルコだ。依頼を受けてくれて感謝する」
「冒険者のエリーです。よろしくお願いします」
「よろしくな。で、依頼の内容だが、家畜を襲う魔物の討伐で、襲っている魔物はウルフだ。昨日牧場を夜通し見張って確かめたんだ。というのも奴らが深夜から早朝までのあいだにやってくるんだ。数は正確にはわからなかったが少なくとも7匹以上いた」
「昼間どこにいるかはわかりますか?」
「わからねえ、村の西にある草原の方だと思うが、草原の草が俺より背が高いせいで、草原に逃げ込まれると追うのは大変だし、無理に追うのは危険だ」
「となると、夜まで待ってウルフを待ち伏せるしかないですね」
「そうなる。……嬢ちゃん一人で大丈夫か?一人でウルフ何匹も相手にするのは危険だぞ。何日かなら待ってもかまわないから、知り合いの冒険者を連れてくるなり、ほかの冒険者に依頼を譲るなりしてもいい」
ポルコさんは私を心配してくれたのだろうが、ウルフ7匹くらいなら問題ない。冒険者になってからもう2年ほど経つけど、2年も冒険者をしていればウルフの集団戦は何回か経験する。それに夜なら私のほうが有利だ。
「ああいえ大丈夫です。夜に待ち伏せて迎え撃つ作戦で行きます」
「おい、本当に大丈夫なんだろうな?お前が失敗したらまた家畜が食われるんだぞ!牛や馬を一頭育てるのがどれだけ大変かわかってんのか?」
ああ、モンドさんは私じゃなくて牛さんや馬さんを心配していたみたいだ。うん、まぁそうですよねハハハ……
「モンド、そういういい方はよせ。お嬢ちゃん本当に大丈夫なんだな?」
「大丈夫です」
「そうか、夜までに準備を整えておいてくれ、俺は仕事があるんでもう出ないといかん。何かあればモンドに言ってくれ。では頼む。……モンド、お嬢ちゃんと一緒にいろよ」
そう言ってポルコさんは出て行ってしまった。ポルコさん行っちゃったけど、私はこの小屋にいてもよいのだろうか……よくないよね、家主不在の家(小屋)に居座るなんて。
「ねぇモンドさん、牧場の近くに私がいてもいい小屋とかない?」
「農具置き場とか馬小屋でもいいならある。そこで何するつもりだ?」
そんなこと決まっている。
「夜まで寝る」
モンドさんは一瞬変な顔をしたけど、すぐ仏頂面に戻って
「まぁそりゃそうか。夜に待ち伏せてるときに寝落ちされてもこまるしな」
と言い放った。単純に今ねむいだけなんだけどな~。
プロットは一応書いておりますが初投稿にてプロット無視した展開になってしまいました。
第一話にしては話が全然進んでいないので、次投稿でなんとかまとめたいと思います。