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初恋  作者: 木染維月
4/10

「一般的に考えたらそれはもう酷い話なんでしょうね。だけど私、彼がそうしたいのならそうすべきだなって、そういう発想にしかならなくて。


 そりゃもちろん悲しかったですよ? めちゃくちゃ悲しかったし、あの幸せな時が二度と戻らないって考えたら悪魔に魂を売り渡してでも戻りたいと思いました。普通に過ごしているつもりでも何が悪かったのかなって気付いたら考えてましたし、もしやり直せたらもっと上手くカノジョしてあげられるのに、ってずっと思ってて。


 でもね、私、追い縋ろうとは思えなかったんです。だって、彼がそうしたかったんでしょう? 私と別れたかったんでしょう? ならそうしてほしいんですよ。そりゃ叶うことなら私が彼の隣にいたいし、彼が幸せになる相手と理由は私であってほしいし、何なら私が幸せにしたいって思います。身を切られるくらい、切実にそう思います。そうなるのだったら何でもします。


 ──でも、そうはならない。


 なら、仕方ないじゃないですか。彼が幸せであること、幸せになることが前提条件で最優先事項なんです。



 変ですよね。自分でもそう思います。変っていうか、重すぎるんです。たぶん。別に彼が初めての彼氏ではないですし、今までに何人もの男の人とお付き合いしてきました。でも、それなのに今まで自分がこんなに重い女だなんて全然気付きませんでした。

 まぁそれは思い返すと当然といえば当然で、今までのお付き合いはずっと振る側だったんですよね。向こうが愛想を尽かすより、私が愛想を尽かす方が先だったんです。だから、こんな歳になるまで気付けずに来た。



 ここまでが、振られてから半年経つくらいまでの話です。




 半年経ったところで私の彼に対する気持ちは、薄まりこそすれどなくなることはありませんでした。いえ、薄まったというよりは、現実逃避が上達したと言った方が正しいのかもしれません──ふとしたきっかけで彼との幸せな時間を思い出してしまった時には、まだ涙してましたから。

 或いは、諦念だったのかもしれません。振られた当初から変わらない、彼への思慕とあの日は戻らないという諦念の入り混じった感情──それの、諦念の割合が大きくなっていっただけの話だったのかもしれません。


 とにかく私は、半年経っても哀れな失恋女のままでいました。


 けれど私にだって大学やバイトがありますから、いつまでも彼のことばかり考えているわけにはいきません。現実逃避のもと、他のことを考えたり目を向けたりする余裕が出来つつあるのもまた確かでした。


 そんなある日のことです。ふと私は、高校時代の恋のことを思い出しました。高校在学中に付き合った中で一番続かなかった人──一ヶ月と保たなかった人のことです。


 その人は、私が初恋の相手なのだと言いました。その頃の私は男を取っかえ引っ変えして、彼氏と呼べる相手さえいれば誰でもいいと思っているようなどうしようもない女でしたけど、誰かの初恋の相手が自分というのは純粋に嬉しかった。だから私は彼とお付き合いをしました。


 結局その人は凄く重くて、すぐに別れてしまいました。誰でも良いからにはもっと楽な相手と付き合いたかったんです。正直面倒でしたし。


 けれど私、気付いたんですよ。──いえ、気付いたというか、自分がこんな人間だと分かってから何となく抱いていた既視感があって、それの正体がやっと掴めたという方が近いでしょうかね。


 そうです。本質的なところで、私とその人は、とてもよく似ていました。


 そう思ったら、その人は今どこでどんな人生を送っているのかが気になって仕方なくて。これだけの質量と重量を持つ感情を抱えて、それを自覚して生きるだなんて、私には到底考えられませんでした。そして、会えばきっと何か変わると思って、その人を探し始めたんです。



 もう察していただけましたよね?





 ──あなたのことですよ、青山さん」

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