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非公式の異世界転生~神に抗う転生者編~  作者: ほろう
三章 それぞれの道編
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42話 ミヤビ

「で、あなたは私に何か言うことがあると思いませんか?」


 少しの間気絶していたリンに少女は問う。


「もうゴミ虫とは言わないんですね、えっとそうだなぁ……随分と怪力ですね?って痛たたたたた!ギブギブ!」


 リンはレイダの時と同じような感覚で畏まった言い方で煽るとまたアイアンクローを喰らってしまった。

 少女は呆れてため息を溢しながらリンを解放する。


「全くとんでもないドM精神ですね。呆れて言葉も出ません。あ、そういえばまだ名乗っていませんでしたね、私の名前は『ミヤビ・クラマ』で、この集落では神子と呼ばれている者です」


「お、おう……俺はリン・ウォルコットだ……ってミヤビ?」


 リンは拍子抜けな声をあげた。


(ミヤビって……明らかに日本でたまに聞く名だよな?偶然か?)


「偶然ではありませんよ?」


「なっ!?心の声が読まれた!?」


「別に心を読んだつもりはないですよ?あなたがあなたの反応が分かりやす過ぎるんです」


「あ、そうですか……」


 完全に見透かされて乾いた笑いをした。


(俺ってそんなに分かりやすいのか……初対面の子に言われるとちょっと心に来るな……カバーガラスのハートだからな、俺は……)


「まあ、余談話はここまでにしてそろそろ本題に入りたいと思います。あなたは自身の現状を何処まで理解してるつもりですか?」


 ミヤビは静かな声でリンに問いかけた。


「正直飛ばされてからの記憶はない。後俺は魔法を行使することが出来ないくらいだ。ここがどこかとかは全くわからん」


「はあ、そうですか。ですがそれだけ分かってるのあれば残りは私が補足する程度で収まりそうですね。1つを除いて」


「補足?一つ?どゆこと?」


「物事は順序よく、1つは置いといて補足から入ります。あなたは気を失った後〝空〟に転移(テレポート)されたのです」


「はぁ!?空にぃ!?」


 驚きの余り声が裏返ってしまった。


「そうです」


 そう言いながらミヤビは上を指した。

 指された方を見ると天井に修復された後が残っていた。


「ああ、なるほどねぇ……」


 つまり天井を突き破って落ちてきたから上空で転移させられたって話になるのか。


「分かってもらえましたか?ここでひとつあなたは私に言うことがあるとは思いませんか?あ、次ボケたら殺しますのでご注意を」


 ミヤビは覚めた目でリンを睨む。


「ひぃっ!?えっと……天井突き破ってすいません……あと助けて頂きありがとうございます……」


 リンは蛇睨みを食らったかのように一瞬硬直し、ワンテンポ遅れて土下座をした。


「はい、良くできました。茶番はここまでにして話を戻します。あなたはどれくらい意識を失ってたか分かりますか?」


「さらっと茶番って……まあいいか、わざわざ聞くなら大体3日とかそれくらいか?」


 リンはやれやれといった感じでミヤビの問を返す。


「そうですか……」


 ミヤビは呆れた感じで言うと、


「いくらなんでもその返しは酷くないか?」


 リンは軽くキレ気味になった。


「意識がなかったのなら仕方ないですね。あなたはここに落ちてから〝二年〟も眠っていたのです」


「……は?」


 それを聞いたリンは驚愕した。

 まさかそこまでの年月が経っているとは思っていなかった。というか信じ難い事であった。

 どうしたら二年も眠りにつけるのか?寝ていれば当然食事も取れないし動けなければこうしてまともに起き上がれない筈だ。

 しかし現にこうしていつも通りに動けている。

 正直不自然でしかない。


「まあ、二年眠ってたとは言いましたが、素の状態で寝てたわけではありません」


「素の?意味が……」


「ここに落ちてきたときのあなたは水晶の中に閉じ込められて居たのです」


「それって普通死ぬと思うんですけど……」


「そうです。普通は死にます。これは私にもわからないことなのです」


「つまりこれが1つを除いてということか」


「そういうことになりますね。ただ少しだけわかったのはその水晶が神秘的な物だということと、強力な水の性質を感じたくらいですね」


(水の性質?まさかレイダさん!?)


 恐らくリンが気絶した瞬間に水晶で覆ったのだろう。もし最悪の地に転移(テレポート)されてしまったら元もこうもない。


「どうやら心当たる節が有るようですね。まあ詮索するつもりはないですが」


(相変わらず洞察力は凄いな……って俺が分かりやすいだけか……)


「そう言えばえっと……」


「私の事は『ミヤビさん』って呼んでくれても構いませんよ?こう見えて精神年齢は大人くらいなので」


「それ普通自分で言うか……?まあいいや、ミヤビさん、気になってたんだけどどうしてあの時蹴飛ばしたんだ?というか水晶に閉じ込められてたのはわかったけどどうして痕が見当たらないんだ?俺は水晶から出て目覚めるのにどれだけ時間が……」


「長すぎます!」


「あ、悪い……」


 気づけばミヤビは威嚇する猫のように睨んでいた。


「分かったなら良いでしょう」と言いながら肩を竦めると一つずつ話始めた。


「先ず、水晶から何時解放されたかという疑問に対する答えは三日前。何故見当たらない聞かれれば

 三日前に破片を集めて鑑識に回したからで、何故蹴飛ばしたかというとその日に起きるという予知が見えたからですね」


「予知?それって……てか蹴りいれる必要あったのか?」


「いつまでも居座られてイライラしてついやってしまいました、てへぺろ(棒)」


「おい!ってかてへぺろとか急にやるとキャラ崩れるぞ!――待てよっ!まさか!」


 思わず突っ込みを入れたが、衝撃の自室に気づいて目を見開いた。


「概ね想像通りだと思いますよ。これは【固有能力】ですので」


「やっぱりか……」


 薄々気づいてはいたためかさほど驚きはしなかったが、ようやく確信が持てた。

 恐らく向こうもこっちが自分と同じ存在だと知ってる前提で話を持ち出していたのだ。

【固有能力】が予知ならば当然自身の身に何が起こるか当然分かってるとまでは行かなくとも神に対抗する存在という情報を先に得ていたに違いない。

 そうでなければ此方に対して自身が【固有能力】を持ってることを喋る理由がないし完全に悪手になるだろう。

 それと最初に名乗った名前は恐らく前世の名で、それを語ることによってこちらの反応を伺って確信を持って話に乗り出したのだ。

 将来はいいペテン師になれそうな気がしてきた。


 そんなことを考えていると、


「妄想は終わりました?」


 ミヤビはサラッと棘のある言い方をした。


「同士なのに相変わらず扱い酷くね?でもまあ、頭の整理はついたよ」


 リンは無気力ながらも言葉を返す。


「そう、ならよかった。これから酷な話をしなくてはいけないから」


「酷なこと?」


 訳がわからず聞き返す。


「はい、あなたは一年後に――友を一人殺さなければなりません」


「……は?なにいってるんだ……!?」


 リンは整理した筈の頭が掻き乱される感覚に見舞われるのであった。




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