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23話 ギルド

「んんっ……よく寝た……あ、おはようロドニ」


 リンは起きてぐっと腕を上げながら体を伸ばすと、恐らく今起きたであろうロドニと目が合った。


「はぁ~おはよう、リン」


 ロドニは口元に手をやって、欠伸しながら挨拶を返した。


「お主ら、起きるのがおそいのう。日が出てどれくらい経ってると思っておるのじゃ」


 リン達は声が聞こえた方に顔を向けると、そこには窓の外を黄昏ながら見ているレイダがいた。


「あ、レイダさんおはようございます」


 ロドニはレイダと目が合うと即座に朝の挨拶をした。

 すると、ロドニはキョロキョロして、あれ? って感じになっていた。理由はすぐにわかった。

 この部屋にハルターが居なかったのだ。


 まさかと思い、リンはゴクリとしながら恐る恐るレイダに「父さんはどこ?」と聞いた。


「あー、あやつは今は知り合いのところに行って船を出して貰えるかを聞いてくるとか言って、出払っておるぞ?」


 レイダはあっさりと返した。

 それを聞いたリンは心身ホッとして「そうですか」と言って胸を撫で下ろした。どうやら心配は杞憂だったようだ。


 すると、部屋にハルターが入ってきた。どうやら話はしてきたのだろう。だが、余りいい表情はしていなかった。


(いったい何が合ったのだろうか……)


 リンの思った疑問をレイダが聞いた。


「ハルターよ、何があったのじゃ?」


 すると、ハルターは暗い顔をしたまま、


「港に〝クラーケン〟が大量発生して、船が出せないらしい」


 と頭を抱えて、ベッドに乱暴に座りながら言った。


(クラーケンって、たしかイカの巨大化みたいなヤツだよなぁ……)


 リンが思っていると、


「それで対策の方はしたんですか?」


 ロドニは真面目な声で聞いた。


「町の連中はギルドに依頼して、討伐隊を編成したらしいが、全滅したそうだ」


 ハルターは苦しい顔をして言った。


「そ、そんな……」


 その事を聞いた二人は愕然とした。しかし、一人だけ、いや、ここにいる神だけは余裕そうに肘をついて欠伸をしていた。


「たかが雑魚(クラーケン)ごときに勝てないとは情けない話じゃのう、あんな雑魚(クラーケン)なんぞ、ワシらでなんとかなるじゃろ?」


 レイダは退屈そうに言った。水の神である彼女にとって、クラーケンなど相手にはならないのだろう。そう考えると、少し時間はかかるが、向こうに渡れなくなるわけではないだろう。


 リンは期待を胸に、レイダにお願いをしようとしたが、その前に期待を覆された。


「じゃが、ワシは無理じゃ。もしワシが戦ったら他の神にワシの存在が露見されてしまうからのう。そうなると余計に動きにくくなる。それと、リンもダメじゃ。お主もワシと同じく狙われてる者じゃからな、目立った行動は出来ん」


 リンの頼みの綱は一瞬で断ち切られてしまった。


「そうなると、私しか戦える人は居ないってことになりますね」


 ロドニはキリッとした顔でいった。確かにこの中でリンと同じくらいの力を持っているのはロドニしかいないため、これ以上の適任はいないだろう。

 ただ、相手は海にいる化け物だ。

 ロドニはどうやって叩くのだろうか……。リンは少し心配になったが、ロドニの顔を見ると、落ち着いていた。少なくとも何通りかは対策は立てているのだろう。

 なら心配は要らないか、とリンは思い、話を続けた。


「クラーケンの大群はロドニがやるとして、どうやって誘い出すんだ?」


 リン達は、クラーケンの生態をよく知らないため、ハルターに聞いた。


「ヤツは船や水中で動くものを見ると、襲う習性がある。そこをついて誘い出せば、狙いも定めやすくなるはずだ」


 ハルターは軽く説明した。


「じゃあ、それは誰がやるんだ?」

「リンとそこの神様(レイダ)が無理なら、ギルドの連中にお願いするしか無いだろうな」

「では、お願いが出来たらそれで行きましょう」


 最後にロドニが締め括って話は終わった。

 そして、リン達は急いでギルドに向かった


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ギルドへ


「へぇー、ここがギルドかぁ」


 リンは感嘆の声を漏らした。RPGをやり込んでいたリンにとって、ギルドは定番である。何せ、ギルドに加盟すれば、冒険者としてやっていくことができる。

 それは異世界を夢にしていた者にとっては、最高のイベントだ。リンはその中の一人だった。


(異世界ギルドイベント来たああああ!!!)


 リンは心の中ではしゃいでいた。すると、ハルターが肩をトントンしてきた。


「リン、お前、ギルドに入りたいのか?」


 リンがギルドに目をキラキラさせながら見ていたため、ハルターは気に掛けるように聞いた。


「うん、昔からこういうのは憧れがあったからね。父さん、ギルドに入ってもいい?」


 リンは心を踊らせながら言った。

 ハルターは「大いに結構」と言いながら快く承諾した。

 それを聞いたロドニとレイダもギルド加盟を希望し、三人はギルドに加盟することになった。


 リンはドキドキしながら入ると、驚きの光景を目にした。それは前世には無い存在だった。


「じ、〝獣人族〟に〝長耳族(エルフ)〟!?」


 あまりのことで、リンは驚いてしまった。それに、一瞬では判断はできなかったが、小さいおっさんや角などが露出してる男性がいた。恐らく〝炭鉱族(ドワーフ)〟と〝魔族〟だろう。

 しかし、リンはここで一つ疑問に思った。なぜ今まで見かけなかったのだろうか、と。


 リンはハルターに理由を聞いた。

 ハルターいはく、過去の戦争で境界線を引いたらしい。その影響で王都で亜人を見かけなかったという。

 実際、いないわけではないが、いても居心地が良くないため、ほんの極僅かしかいないらしい。

 それを聞いてリンは納得した。


 気づけば、さっきの驚きの声で一部の亜人に睨まれていた。リンはそれに気づいて頭をペコペコした。


 リン達はそのまま受付カウンターまで足を運んだ。

 そこには若いウサギ耳をした女性の亜人がいた。

 その女性はリン達の姿を捉えると「どのような御用件でしょうか」と、言いながら見事な営業スマイルをした。


「えっと、ギルドの加盟をしに来ました」


 リンは少し挙動不審気味に言った。


「畏まりました。ギルド加盟はここにいる四人でしょうか?」


 ウサミミの女性が聞くと、ハルターが「俺以外の三人だ」と答えて「畏まりました」とウサミミは女性が了承して、奥の部屋に入って行った。少しして、ウサミミの女性が出て来て、三枚の紙とカードを持ってきた。恐らく身元確認の用紙とギルドカードだろう。


 用紙に身元を書くと、ギルドカードに収納された。恐らくこれがギルド内の身分証明書になるだろう。

 ギルドカードを受け取った三人は書かれていたギルドの掟を一通り見た。


 ・冒険中に獲得した道具または獲物は最初に手にした者または止めをさした者に優先される。

 ・賠償が発生した場合、メンバーか個人で処理する。

 ・他者への迷惑行為及び妨害の禁止。


 特に重要視して書かれていたのはこの三つだった。


 リン達はギルドに加盟して、当初の目的をウサミミの女性に聞いた。


 それを聞いてウサミミの女性は一瞬目を見開いた。

 それはそうだろう。誘き寄せることはともかくとして、十歳の子供がクラーケンを倒すというのだ。驚かない方が可笑しい。

 最初は戸惑いながら「無茶ですよ!」と言われたが、ハルターが自らの名前を出し「ここにいるお嬢さんは俺の数十倍強い」と言うと、あっさり承諾してくれた。

 どうやらここでもハルターは偉大な存在らしい。


 そして、クラーケン討伐は明日に持ち越された。


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