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1話 誕生の始まり

途中から主人公の名前が変わるのでご了承下さい。

 ――あれ? ここはどこだ? 確かさっきまで俺は下駄箱にいた気がするのだが……


 寝起きのような感覚でゆっくり瞬きをすると、俺は全く別の空間にいた。

 その場はコンクリートの校舎ではなく、どこからどう見ても木造建築にしかみえなかった。といっても天井しか見えないのだが。


(まあ、ともあれ、起きなきゃ始まらないか――ってうおっ!?)


 そう思った瞬間、いきなりの密着感と浮遊感に見舞われた。慌てて視線をキョロキョロさせると、気がつけばは誰かに軽々しく持ち上げられた。

 見た目は20代の女の人で、綺麗な金髪だった。

 この年でお姫様抱っことか誰かに見られたら悶え死にそうな気分になる。

 そう思って隣を見ると男の人がとても微笑ましそうに見ていた。

 孝は内心、終わったなと悟った。


(もう、お婿に行けないよ……)


 恥ずかしすぎて手で顔を隠そうとしたが、腕が思うように動かない。


 なんとか頭を少しだけ動かすと衝撃の光景が目に飛び込んできた。自分の手が余りにも小さかったのだ。

 孝は今になってようやく自分が〝赤子〟になっていることに気づいた。


(おいおい!なんだよこれ!どうなってんだよ!早く帰ってゲームしようって矢先にこの姿はいったいなんなんだってんだーーー!!)


 孝は完全に思考が支離滅裂になっていたが、金髪の女性から茶髪の男性に手渡されて産湯に浸かされた瞬間に少しだけ冷静さを取り戻した。


 最初は夢かと思った。なにせ、たかが手紙一枚で赤子になっているのだから。

 しかし気を失う前の事を少しずつ思い出すと今までの経緯を思い付く限りの可能性を考えた結果、〝異世界転生〟という結論に至った。

 恐らく転生する前に思ったことが鍵となって現象化したのだろうと孝は分析する。

 だからといって、今の現状に納得するはずもない。

 気づけばベッドに寝かされており、『これは非現実的だし、夢に違いない』と思いながら現実逃避しながら眠りに落ちた。

 

 そしてそれから五年の年月が流れた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 孝はリンと名付けられた。



 リンはウォルコット家の長男として産まれた。そのリンの両親だが、父の名は『ハルター』で母の名は『アルシャ』というらしい。さらに、リンの上には二人の姉がいる。長女の名は『ナタリー』で、次女の名は『ビッケ』といい、細かいことは後々話すとしよう。



 リンは産まれ間もない頃は体が思うように動かず、退屈日々を過ごしていた。

 一度は望んだ転生だが、間もない頃は前世の自分はどういう扱いになってるだろうか? とか、まだやり終えていないゲームのことで頭がいっぱいだったが、二、三日過ぎると、少しずつ現実味が出てくるようになり、帰れないことを想定して、動けるようになったらまず、生きてる上で一番大切な言語を学ぶことにした。といっても暫くは暇で死にそうになったが、せめて早く行動をとれるようになるために体は出来る限り動かすようにしていた。


 それから一カ月経つと、寝返りが出きるようになり、「あうあう」と声を発することが出きるようになった。時々、親らしき人物が声をかけてくるが、何を言っているのかさっぱりという有り様であった。


 そして半年が経過するとハイハイが出きるようになり、家の至るところをドタバタを行ったり来たりした。

 理由は単純にこの世界の地理を知ること、自分の所在する場所くらいは確認して置きたかったからだ。


 さらにリンは一歳の誕生日を迎えた。

 リンは壁で体を支えれば歩けるようになり、アルシャを「かーたん」と発するまでに至った。両親は俺の密かな行動力によって普通より早く歩けるようになって驚いた表情を浮かべ、勢いよく俺を抱き上げて上機嫌な笑みを浮かべていた。

 どこの家庭も子供の成長はうれしいものらしい。


 リンは二歳になり、よちよち歩きが出きるようになると書斎に籠って、当初の目的である言語を学びだした。


 やがてリンは三歳になり、一年かけて言葉を覚えた。少数の言葉の意味を理解し、勉強という概念を捨て、パズルゲームをやるような思いでやっていたので、何とか覚えることができた。


 そしてこのまま二年が経ってリンは五歳になった。

 この時リンはあるものに夢中になったが、それはまた後での話である。



 次に家族を紹介しよう。


 ハルターはいつも場を和ますかのようにいつも冗談話をよくして結局自分で笑い、なにがしたいのかよく分からない人で、とにかく笑い声が五月蝿い。見た目は爽やかヘアーの茶髪で体は毎日剣を振っているため、ガッチリしている。

 そんな父親だが、アルシャ曰く、時々近くの同情で剣を教えてるらしい。弟子はかなりいるとのことで、剣の腕前はナタリー曰く、長々のものだそうだ。

 教えてるところは見たことないため、普段一緒にいる身としては考えにくいが。

 


 アルシャはとても穏やかで怒るとかなり怖い。

 一時期、父さんがうっかり母さんのお気に入りのマグカップを落としてしまったことがあった。

 その時の母さんは、怒鳴り散らさなかったが、言葉一つ一つがかなり重く、顔は笑ってはいるものの目が笑ってない。怒鳴ってるわけでもないのに、体が動かない。それどころか、辺り一面が凍りついた雰囲気を感じさせる、所謂無言の圧力というやつだ。あれには誰も逆らえる気がしない。

 だがその反面、誰よりも家族に融通をきかせている。それに頭の悪そうなハルターと違って、頭の回転が早く、家事万能、おまけに腕っぷしもかなりあるパーフェクトヒューマンだ。

 髪は綺麗なブロンドのロングストレートで、引き締まった体つきをしており、その辺男が見たら通りすぎただけで目線を誘うような美貌で、とても三児の母とは思えない自慢の母親である。



 ナタリーはリンの二歳上で、気がとにかく強く、行動力が尋常ではない。そして彼女に捕まったらところ構わず連れていかれ、ヘトヘトになるため、いつもは近づいては行けない危険生物である。時々ハルターと出掛けては剣を習いに行ってるらしい。興味がないので深く検索はしてないが。

 髪はアルシャ譲りの金髪で髪を一束に縛っており、いつも凛としていて、いつも外で遊んでいるのにも関わらず、全く焼けない引き締まった肌は前世の女性からしたら羨ましく思ってしまうだろう。恐らく気候が関係してることもあるかもしれないが。



 ビッケは一歳年上で、気が強い姉に対してかなり消極的で、口数が少ない。また、リンがナタリーの玩具にされたあと、よく心配して駆け寄ってくるお人好しでもある。

 姉弟じゃなかったら将来告白してしまうほど可愛く、家族の心の安らぎ。こちらもアルシャ同様、自慢の姉である。普段はアルシャの傍にいることが多い。

 髪はハルター譲りの茶髪でツインテールであり、顔付きはアルシャの面影がある。


 そしてここは《ハルクーム》という田舎町らしい。

 窓の向こうを見ればたくさんの畑が広がっている。住人の殆どは老人ばっかりで、しかもここは王都の外れにある町。滅多に人が立ち寄ることはない。なので基本的に顔見知りしかいないため、町に入ってきたばかりの人は直ぐに見分けがつく。


 そんな辺境の地で生まれたリンには楽しみがある。それは前世にはなかった無かったものだった。

 

 リンは親や姉達目を掻い潜ってアルシャの書斎に入っていった。


 書斎には植物や動物や国の歴史などの本が並んでおり、リンが取り出したのはそれらの本では無く『魔法の書』と書かれた本だった。


 そう、この世界には前世にはなかった『魔法』が存在していた。RPGをやっている民なら一度は想像したであろう、異世界の魔法である。


 この世界には“土、雷、水、火、風”という『攻撃魔法』と“光”という『癒し魔法』や『治癒魔法』、“闇”の『召喚魔法』や『幻惑魔法』や『時空魔法』、“無”のその人の個人の『ユニーク魔法』が存在する。


 本によると適正魔法は三、四種類持が普通らしく全属性持ちはここ数千年存在していないらしい。

 しかし、リンは異世界人特権かどうかはわからないが全属性持ちだった。


 書斎には適正を見るための色付き魔石がいくつかあり、魔石に魔力を流し、色が出れば適正らしく、試したら全部光ったのだ。それからリンは書斎に籠り魔法の練習をしていた。

 

 全属性持ちだったリンは攻撃魔法よりも先に闇魔法を覚えた。理由は親や姉達にはバレずに魔法が使うには『時空魔法』の“異空間”を覚えた方が辺りを壊さずに出来るからである。

 それからリンは異空間で本の通りに試し、独学で全属性の初級クラスの魔法を覚えた。原理を理解し体内の魔力で操作して発動させるため、さほど難しくはなかった。

 だが、リンは余計に親や姉達にバレるわけには行かなくなった。書物によればこの年で魔法を使えた者はほんの一握りしかいないらしい。

 なのでもしバレたら、どういう扱いを受けるかわかったものではない。

 それに千年も存在しなかった全属性持ちが存在したことが公になったら隔離されるのでは無いかと思ってしまうと、自分のやりたいことが出来なくなるかもしれない。だから、家族の前ではできるだけ使わないようにした。

 

 それから更に二年の年月がたった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 リンは七歳になり、全属性の上級魔法が使えるくらいになっていた。

 

 だが、今のリンに隠れての魔法練習に終わりが来てしまうとは知りもしなかった。


 リンは上級魔法じゃ飽きたらず、更に上の雷の高等魔法を覚えるために成り行きでいつもみたいに異空間で放ってしまったのだ。


 すると異空間はリンの高等魔法には耐えきれず、忽ち壊れてしまったのだ。

 急いで止めたが、壁を思いっきり貫き、書斎が焼け焦げた痕が部屋の至るところに残ってしまった。

 

 そしたら庭からハルターの叫びが聞こえた。

 リンは悟った。これは詰んだな、と。

 

 扉からは姉のナタリーが脇に剣をぶら下げ、カチカチと音を鳴らしながら入って来る。

 それと同時にリンの顔は少しずつ真っ青になっていった。

 

 ナタリーは「賊が来たの!? それとも魔物!?」と両手を肩に乗せて前後に揺さぶりながら聞いてきて、内心どっからどう見ても僕がやったようにしか見えないだろと思いつつ、姉が脳筋のバカで助かったと同時に思った。


(てか、揺さぶらないでぇ、脳が揺れるぅ……)


 今度はハルターが駆け込んできた。

 入ってきて早々「魔物はどこだ!? 家に無断に入ってくるとはいい度胸だ! 今すぐ叩ききってやる!」と叫んでいた。


 (まあ、実行犯が俺なんだからいるわけないんだけどなぁ……というか、二人揃って俺を揺さぶるな! 死ぬぅ……死んじゃう……)


 泡を吹きながら、もしかしたらワンちゃんやり過ごせるかもと期待した瞬間、今度はアルシャとビッケが入ってきた。


「あらあら、これはどういう状況かしら」


 アルシャは困ったかのように辺りを観察していた。


「実は魔物か賊が入ってきたみたいなんだ」


 ハルターは周囲を警戒しながら言った。


「そう? 私にはどっからどう見てもリンが撃ったようにしか見えないのだけれど? それに、この痕跡を見る限り内側から放たれたものと推測も出来ると思わない?」

「――確かに言われてみればそう見えなくもないが……」

 

 アルシャは辺りを分析しつつハルターに問いかける。リンは、また次第に顔が真っ青になり始め、冷や汗を掻く。


 そんな様子を見ていたアルシャが、リンの隣にある本を見つけた。


「ねぇ、リン? もしかしてだけどこれ読んじゃったのかしら?」

 

 リンは流石に騙せないと思い、ゆっくり頷く。

 そして体をアルシャに向けて正座をし、頭に両手をに付けて、そのまま額を床につける。


「ごめんなさい」


 見事な土下座であった。

 前世では、成績を見せる度に許しを乞うためによく土下座をしていたので形は様になっている。


「あら、どうしたの? リン?」


 しかし、アルシャはキョトンとしていた。

 どうやらこの世界に土下座という概念は存在しないらしい。


(あー恥掻いたなぁ……)


「だが、リンはまだ七歳だぞ? 見た限りこれは中級以上の魔法の放った跡じゃないか!? 中等部の卒業生くらいの魔法だぞ! それをこの年で扱えるとは思えないのだが……」

 

 ハルターは少し混乱していた。


「でも、痕跡の跡を見た限り、リンから放たれたようにしか見えませんよ? そうでないと説明が付きませんもの、実際リンだって認めてるわけですし、それともしこの子が本当にこれくらいの魔法が使えるのなら将来は優秀な魔法使いになるわよ? そうだリン、外に出て魔法見せてくれないかしら?」

「えーと、わかりました」


 アルシャに頼まれて外に出たウォルコット一家はリンの魔法を一通り見て呆然としていた。


「あの、母さん……どうでしょうか?」

 

 リンはやらかしたと思いつつアルシャに 恐る恐る聞いた。

 

「あら、ごめんなさい、少しぼーっとしてたわ。それよりもまさか無詠唱まで使えるとは思っていなくて驚いただけよ」

「え? 魔法って無詠唱が普通じゃないんですか?」

「普通じゃないわよ? 無詠唱が出きるのは極僅かな高等魔法使いくらいなの、それを普通と言っちゃう辺りこの子は天才としか言えないわね。あっ、因みに私も無詠唱の高等魔法使いなのよ?」

「へぇーそうなんですか、では、母さんもかなりの魔法使いなんですね」


 アルシャは最初は状況についていけなかったものの、リンの魔法使いとしての才能があるとしってとても嬉しそうだった。

 それを見たリンは少し照れ臭くなった。


 そして、前世の幼いときもこんな感じだったなって思った。

 周りがまだやってないことが出来てよく誉められてた時の頃を、その時もうちの子は天才だとよく言われていた。

 その優越感に浸りすぎてなんでも簡単に出来ると勘違いして落ちこぼれてしまったことも、そしてリンは今度こそは天狗の鼻を伸ばさずにコツコツと努力する。そう心に誓った。


 ――二度と同じ過ちを繰り返さないと。


 そんなことを考えてると、アルシャからある提案が聞こえた。


「リン、魔法学校に通う気はない?」


「……はい?」


 突然のことで拍子抜けしてしまった。

誤字、脱字等あれば、連絡ください。

そして、ここを何とかしてほしいとか、そう言った助言を下さるととても助かります。

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