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14話 披露宴

「どうしよう、着る服がないんだけど……」


 リンは焦っていた。明日は披露宴というのに着る服が無かったのだ。


「お金はまだ貰ってないし、取り敢えずロドニのところに行って頼んでくるか」


 リンは王宮に向かうことにした。


 王宮の門には警備兵が立っていた。以前はロドニが事情を話してやっと入れたが、今回はすんなり入れて貰えた。それとやたらペコペコされた。

 どうやら、王宮内では僕がロドニの婚約者ということは認知されているらしい。

 王宮に入ると、すぐ横の壁にロドニが寄っ掛かっていた。


「来る思ったよ、リン。どうせ着る服がないから聞きにきたとかそんなところでしょ?」

「何も言い返せないのが何か悔しいよ。というか、何故わかった?」


 一発で来た理由を当てられてリンはロドニに質問した。


「女の勘よ」


(強すぎませんか? その勘)


「というのは冗談で、こういうことになると大抵前日近くになって、慌て出すんじゃないかって思っただけよ、リンって本当に分かりやすいからさ、困ったり隠し事をしてると大抵頭を掻いてるし、都合が悪くなったらすぐ目が泳ぐとか――」

「もういいです、結構です! それと何だろう、この物凄い敗北感は……」


 何気ない敗北感を感じたリンは力なく地面に突っ伏した。


「いつまでそうしてるの? 服でしょ? 付いてきて」

「あ、うん」


(完全に行動パターン読まれてるし、将来絶対尻に敷かれるんだろうなぁ……)


 と、死んだ魚の目をしながら思った。


 リンは言われるがままロドニに付いて行き、試着室に到着した。


 そして、扉を思いっきり開け、こちらを向いてきた。


「見よ! 我が王家に集いし服の数々を!」


 ロドニはこちらを向き、仁王立ちしながら自信に満ち溢れた顔をしていた。


「別にロドニが用意した訳じゃないだろうに……てか、ここまで来るのに時間掛かりすぎだろ? なんでこんなに広いんだよ、ここは?」


 と、ロドニの自信をへし折るかのように言った。


「さあ? 見かけ倒しなんじゃないの?」


 ロドニは口を尖らせながら言った。


「見かけ倒しとか……仮にも一国の姫がそんなこと言っていいのか?」

「プライベートなんだからいいんだよ、減るもんじゃないし、時には愚痴でも言ってないとやってられないよ、王家ってのは周りからの責務とか責任が重いからね」

「意外とめんどくさいんだな」


 と、他人事のようにリンは流した。


「そこは、もう少し気遣うとこのじゃないの?『大丈夫か?何かあったら俺がいつでも助けてやるからな』みたいな?」


 リンをからかうようにロドニは言った。


「んな、どこぞのフィクションみたいなこっ恥ずかしいこと言えるかっての。というかそんなこと言わなくても当たり前だろ?」


 そんなことを言うと「ロマンがないなあ」とか言われてそっぽを向かれてしまった。


「まあ、いいや。取り敢えず服選び始めよっか?」

「そうだな」


 暫くして着る服は決まった。


「そういえば、ロドニはなに着るんだ?」

「秘密だよ、そういうことは後でのお楽しみしないとね。それともなに? リンは食事のとき、最初にデザートを食べる派なのかな?」

「楽しみに取っておきます」

「それでよろしい」


(毎回思うけど素が出てからずっと会話の主導権握られてる気がしてならないんだけど……ロドニは本当に十歳なのか……)

 そんな事を考えていると、


「どうしたんだい? 少年よ!」


 上機嫌なロドニが聞いてきた。


「いや、何でもないよ。てかなんで時々口調を変えてるんだ?」


 と、素朴な疑問を聞いた。


「んー、ただの気まぐれかな? あんまり深く考えたことなあ」

「ほぼ、無意識というところか」

「大体そんな感じかな」


 それから一拍置いて、


「んじゃそろそろ帰るよ」

「随分早いお帰りだね? もう少しいたっていいけど?」

「することはしたからいいよ、それと家に帰って寝たい」

「自分の欲望には素直なのね」


 やれやれといった感じで、天井を仰ぎながら苦笑するロドニであった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 披露宴当日


「これ変じゃないかな? こういうの着たことないから良くわからないんだが」


 と、鏡越しで言う正装を着たリンの姿がそこにはあった。


「似合っております、リン様。その格好ならどの式に出ても文句を言う輩はおりませぬ」


 と、着替えを手伝った従者がリンの不安に対して述べた。


「ならいいけど」


 正直、この年で婚約者がいると自分がまだ七歳の子供だということを忘れそうになる。恐らく前世の記憶があるせいだとは思ってはいるが。


「リン様そろそろお時間でございます」

「ああ、わかった。手伝ってくれてありがとうございました」

「いえいえ、滅相も御座いません」


 そしてリンは会場内に入った。

 すると直ぐに横から声をかけられた。


「リン、遅いじゃない」

「いや、時間通りなんだけど、レーナ」


 そこには退屈そうなレーナの姿があった。

 披露宴なため今日は青色のドレスを着ていた。


(なにこれ愛いんだけど? お持ち帰りおっけい?)


「私、体内時計頼りだから過ぎてると思ってしまったわ」

「あまり擦れがないところがある意味すごい気がするけど」


 リンはちょっと引いてしまった。


「そういえば、ロドニは?」

「私はまだ見てないわよ?」


 ガランッ! と、リンが来た後ろの扉が開いた。


 後ろを向くと、白い純白のドレスを来たロドニがいた。

 それを見たリンは一瞬意識が飛びかけた。


「あ、リン? これ似合ってる?」

「ああ、意識が飛ぶくらい似合ってる」

「フフ、ありがとう! だからこういうのは後に取っておいてよかったでしょ? それとリンも似合ってるよ……」


 と、少し頬を赤らめて言った。


 すると今度は後ろから陛下とウォルコット一家が入ってきた。


「お? リン、始まる前からもうイチャイチャか? まだ若いんだからそういうのはもっと年をとって……ぐはっ!?」

「あらあら、アナタ? そういう言葉慎んでくださいね?」


 入って早々卑猥な発言をしようとしたハルターを首筋チョップで一撃で沈めるアルシャ。

 その一部始終を見た陛下は青ざめている。


(怒るときの母さんはいつ見ても怖いなぁ……てか、何したらあそこまで陛下が怯えるんだ……)


 やっぱり母さんは世界最強かもしれない。


 母さんの威圧に怯んでいた陛下はようやく我に帰り、披露宴の開始準備を始めた。


「ごほん、では始めるとしよう。今宵は二人の婚約者を祝って、乾杯!」

「「「乾杯!」」」


 するとすぐに、近くにいたレーナは一目散に料理の方へ行ってしまった。


(はやっ! 俺も何か食べに行くか)


 そう思っていると、周りから人が寄ってきた。


「よお、リン。おめでとうだな、もうお前は貴族で王族とのつ繋がりも出来た。これからも大変かも知れねぇけど、頑張れよ」

「ありがとう、ルクス」


 そう言ってルクスも料理の方へ行ってしまった。


 そのあとも他の貴族からお祝辞を貰った。


 そして、ようやく解放されたリンはやっとの思いで料理にありつけた。


(うまっ! いつも食ってるものとは段違いじゃないか! ロドニって毎日こういうの食べてるのかなぁ……)


 そんな事を考えていると、後ろから声をかけれた。


「社交辞令で疲れきってると思って心配したけど杞憂みたいね」


 と、微笑しながら言うロドニがいた。


「いや、かなり疲れたよ。特に言葉選びが……」

「まあ、これから貴族として生きていく身なんだから今のうちに馴れておけば平気よ」

「そうだな……」


 と、リンは遠くを見るかのように言った。


「そうだ、少し外にいかない?」

「いいけど、なんで?」

「気分よ、付いてきて」


(なんか適当に流されたんだけと……まあ、行かない理由もないし付いていくか)


 こうして二人は外に出た。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「んー!外の空気はいいわね」

「そうか?」

「そうよ、それとそろそろ聞こうかなって思ってたんだ」

「聞くって何を?」

「ほら、授与式前にした交換条件のことよ? 覚えてる?」

「ああ、私の質問に嘘偽りなく答えろって感じのやつだろ?」

「うん、今からする質問は恐らく、私たちの関係を大きく変えるかもしれない」


 リンはロドニの一言に耳を疑った。


「それって、どういう……」

「単刀直入に聞くわね、リン。あなたはもしかして“転生者”じゃないの?」


「なっ!?」


 リンはロドニの一言に驚愕した。

この後ようやく大きく物語が進みます。多分

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