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11話 婚約者

「ちょっと待ってください! 婚約者って、どういうことですか!?」

「そうですよ! お父さ……じゃなくて父上!」


 余りにも突拍子もない発言に気が動転してしまった。


(てか、今、お父さんって言い掛けなかったか?プライベートではそう呼んでるのだろうか?いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない!)


「まあ、落ち着きたまえ」

「「落ち着けるか!」」

「息ピッタリじゃないか」

「からかってるんですか!」


 頭の中が全く整理できてない。

 ロドニ殿下に至っては、顔真っ赤にして陛下を睨み付けている。


「冗談でこんなことは流石に言わないさ、私にとって娘は可愛い大事な家族。そんじゃそこらの男には嫁になど出せん」

「なら何故っ!」

「お前が彼を認めているからだよ」

「え?」


 ロドニは一瞬硬直した。


「べ、別に、そういうわけじゃ……」

「なら、なんで彼はここにいる? 普段のお前ならもっと警戒していたはずだ、だが、今彼と話していて、お前からは一切その様子を感じなかった。だから私はお前が彼に何らかの感情を抱いていると、そう思ったのだ」

「べ、別にそんなつもりじゃ……」


 と、言いかけたところでリンと目があってしまった。

 そして、一瞬で目を逸らした。


(どうしよう、なんで私はこんなに……、わからない、わからないわからないわからない……。頭の中が支離滅裂になって自分がなにしたいのかわからない……。ああ、穴があったら入りたい……)


 ロドニー壁に踞りながらそう思った。

 それと同時に、


(ヤバい、つい最近まで男だと思ってた相手にどうしてここまで心を動かされてるんだ? あんなうるっとした顔見せられてドキッとしない方が可笑しい。だけど、それでも……。あーなんも言葉が思い付かねぇ……。今後どう接すればいいんだ……)


 リンも似たように壁に踞りながら思った。


 ((この想いどうしたらいいんだ(の)!?))


 二人は少しの間、離れて踞っていた。


「ククッ、その反応だと満更では無いようだな」


 二人の反応を見て陛下はニヤニヤしていた。


(コイツ絶対性格悪いだろ! 後で母さんに言って報復してやる!)

 

「まあ、といってもまだ決めたわけじゃない、答えは授与式の前日に聞かせてもらうとしよう、因みに、式は五日後に行う予定だ。それまでに話し合ってほしい」


 そう言って陛下は応接室を出ていった。


 ついに二人だけになってしまった。


 正直、さっきのことで頭がいっぱいでこのまま帰るわけにも行かない気がした。また明日も会えるとはいえ、この関係をほったらかしにして、明日気不味い雰囲気を出していたら、要らぬ誤解を生みそうな気がした。だから、そうなる前にハッキリさせておかないといけない。


「あの、殿下?」

「……でいい」


 壁に顔を埋めてぼそぼそになってよく聞こえなかった。


「ごめん、よく聞こえなかった」

「ロドニでいいと言ったの!」


 ロドニは荒い声で言った。


「分かりました。ロドニ」

「敬語も要らない」

「わかったよ?」

「何故、疑問文なの?」

「たまにためで話してたけど、ロドニに対して普通に話すって思うと長々難しいなぁって、なんか敬語に馴れすぎて」


 リンは苦笑いしながら頭をポリポリと掻いて答えた。

 そんな様子をチラッとみたロドニはクスッと笑った。

 それを見たリンは嬉しそうに微笑んだ。


「少し心が落ち着いてきた。そうだリン、少し話をしないか?」

「いいけど、何を話すつもりなんだ?」

「リンが一度は疑問に思っていたであろう事だ」

「それは?」

「気になってはいたんだろう? 何故私が男装をしていたのかを?世継ぎがいるのにする理由が見当たらんだろう?」


 確かに気になっていた。

 何故、第二王子として偽っていたのかってくらいには。


「まあ、気にはしてました」

「実は大した理由ではなくてね、私自身が誰かと政略結婚とかされることを恐れていたからなんだよ。結婚相手くらいは自分で選びたかったしね」

「本当に大した理由ではないですね」


(うん、真面目に)


「私個人の意思にとっては結構大事なことだよ、私は政治の道具だけは嫌だったからね、それに男装していた方が何かと都合がいい時の方が多かったし、男子同士の方が素が見れるから」


「わからなくはないですよ、僕も逆の立場だったら嫌ですから、それと、男装して素が見れても、後々女子でしたって言っても男としての印象が強すぎて出来ない可能性の方が高いと思うよ?」

「うっ、確かに」


 どうやら一番の落とし穴に気づいていなかったらしい。


「それで、さっきの婚約の話はどうしますか?」

「リンはどうしたい?」


(どう? って言われてもなぁ、正直行きなりの事だったから、選べない。しかもさっきのロドニのことを聞いたら尚更……)


「まだ、わからないです。それに僕はまだ七歳でロドニは十歳なのに決めろって言われて決められないです」

「だろうね、それにしては発言だけは七歳とは思えないけど?」

「将来のことを考えて男装してるロドニだけには言われたくありませんよ?」

「痛いところをつくなあ」


 ちょっと苦笑いをしていた。


「それで話を戻しますけど、婚約の話はどう致します? ロドニは政略結婚が嫌でしょうからこの話は無かったことにしても――」

「私はいいと思うなあ」


 「え?」


リンは思っていたことと違う回答が来て間抜けな声をあげた。


「私ね、ここまで気が合う人って初めてなんだ。それと初めて一緒にいて楽しいと思えたんだ。だから、私的にはむしろお願いしたいところだよ。まあ、お父さんの掌で踊ってる気がして癪に障るけど。でもね、あの時助けられたときはドキッとしたんだ。今でもあの時の感情は忘れない。改めてだけどありがとう。それとリンがよければ私と婚約者になってくれないかな?」


(なんか、段々言葉が砕けてきたな)


 どうやら向こうはその気らしい。


(俺もロドニは、親しみやすい友だった。尊敬すらした。王族なのに、周りと同じように接してくれた。そんな人と一緒いられるなら俺は……)


「喜んでお受け致します」

「ちょっ!? 畏まらなくていいのに」

「少し位の礼儀としてですよ」

「ならいいけど……」


 少し期待していたのと違っていたのか、少々不満そうだ。どうやら言葉の選択を間違えたらしい。


「というか、さっきからいつもと口調が違う気がするんだけど?」

「これが素の私だからね、一々気なんて張ってられないよ。王家の恥さらしだけはごめんだから、みんなの前ではあんな喋り方してるんだけどね」

「まあ、確かにわからなくもない」


 それを聞いてリンは納得した。


 それから一拍置いて、


「ロドニ」

「なに?」


 いきなり呼ばれてきょとんとしていた。


「授与式が終わったら一緒に遊びに行きませんか? その時は男装をしないで」

「え?」

「ダメ……ですか?」


 少し落ち込んだ顔をしていると、


「だ、ダメじゃないよ!? 寧ろ久々にラフな格好でいられるし別に構わないよ?というか、授与式の時に婚約者になったこと言われるんだし、もう男装する理由もないんだけどね」

「そういえば、そうか。忘れてたよ」


 そのあとは途方もない会話をして二人で場を和んだ。


「流石に泊まるわけには行かないからそろそろ帰るよ」

「別にいてもいいのに」

「家でやりたいことがあるので」

「なら仕方ないか、また明日ね」

「はい、また明日」


 そう言いながら、ロドニ手を振って別れた。


 そして、俺は王宮を出てアパートに帰った。


 因みに帰ってやることとは、母さんに陛下を報復させるための手紙を書くことであった。




















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