ポケットの中に・・・【神酒視点】
「だからさ、今度雛の森探しに行ってみようよ。案外石着山あたりにあるかもよ」
「リコ、まだそんなこと言ってんの?そんなのあるはずないでしょ。ね、キララ」
「そうですね。まあそんなもの信じているのはリコさんぐらいでしょう。あんまりそんなお話ばかりしてると、そのうちバカになりますよ、バカに」
「あー!キララがバカって言った!バカって・・・」
学校帰り。あたしはキララたちと一緒に歩いていた。
前にも書いたけど、あの日石着山で起きた不思議な出来事は、あたしと神父様以外に憶えている人はいない。
繰り返される日常の日々。
あれからあたしたちは、いつもの生活に戻っていた。
「ねえ、ミキは信じてくれるよね!」
急にリコがあたしに話を振ってきて、あたしはびっくりしてリコを振り返った。
「へ?なに?なんの話?」
「あー、ミキ話聞いてない!」
「またですね、ミキさん。最近心ここに有らずって感じですよ」
自分では気付いていないんだけど、どうやら最近あたし、ずいぶんボーっとしている時間が多いらしいし、よくキララに指摘されている。
まぁもともとそういう性格なんだけど、やっぱりちょっとは自覚はあるんだ。
「ゴメンゴメン。で、本当になんの話だっけ?」
「だから、本当に雛の森はあるかって話!」
「ああ、雛の森ね・・・」
そんなの言えるはずないじゃん!って言いたかったけど、あたしは言葉を濁した。
「さぁ、どうだかね・・・」
「ほーら、やっぱり最近ノリが悪いんだよな」
「いやリコ、別にそういうわけじゃないんだけど・・・」
その時だった。
リコの方を見ながら歩いていたあたしは、誰かにぶつかったんだ。
その人はあたしにぶつかった拍子で転んじゃって、そこにしりもちをついて座り込んでた。
ヤバイ・・・・。
「すみません!大丈夫ですか!?」
あたしがその人の顔を見た時・・・。あたしは自分の目を疑った。だって・・・。
「・・・ベル・・・?」
そう。その人はベルそっくりの外人さんだったんだ。
「アタタタ・・・。」
ただし、その人はベルと違っているところも多かった。
年齢でいうと20歳ぐらいだったかな。大人のお姉さんだったんだ。
「ちょっと君たち、よそ見しながら歩いていると危ないわよ」
そのお姉さんは外人さんだったけど、キレイな日本語を話していたよ。
「ごめんなさい!つい・・・」
あたしが平謝りすると、お姉さんはニッコリしながら立ち上がったんだ。
「でも、元気な子たちは大好きよ。あなたたち、お友達同士?」
「はい!」
「そう。私のところにも君たちよりもっと小さい子がたくさんいるけど、みんなあなたたちみたいな元気な子よ」
「お姉さん、その歳で子どもがいるんですか?」
リコが理由のよく分からない質問をすると、そのお姉さんは愉快そうに大きな声で笑った。
「まさか!私はアメリカで幼稚園の先生をやってるのよ。ちょうどあなたたちみたいに日本人の子もたくさんいるわ」
そうか・・・・。
あたしはなんとなく、あの雛の森の地下にいた幼子たちのことを思い出して、少し救われた気分になっていた。
あたしは思い切って自分の疑問をぶつけてみた。
「あの、お姉さん、お名前教えていただけますか?もしかしてベル・・・」
「ベル?あなたのお知り合いに似てるの?残念だけど違うわ。私はリベラ。誰かに似てた?」
やっぱりそうだよね・・・。
そんな都合のいい話あるわけないか・・・。
ベルの生まれ変わり・・なんて、やっぱり都合が良すぎるよね・・。
「どうしたの?君」
リベラさんは、なんとなくあたしのガッカリした表情に気付いたみたいで、あたしに優しく言葉をかけてくれたんだ。
「いえ、なんでもないです。すみません・・・」
「どうしたの?謝ることないよ」
リベラさんはあたしの肩に手をかけると、キララたちの顔を見てからこう言ったんだ。
「君はなにか悲しいことがあったみたいだね。でも、心配すること無いよ。
ここにステキな友達がいるじゃない。今は心にポッカリ穴が開いているみたいでもね、それを慰めてくれるのが友達なんだからさ。」
そして、リベラさんは腕時計を見ると、飛行機の時間があるからと言って
あたしたちに手を振りながら行ってしまった。
でもね、この時。
リベラさんがあたしに信じられないことを言ったの!
ネームプレートをしてたわけじゃないよ。でもね・・・・!
「それじゃ、またね。ミキさん!」
リベラさんが知らないはずのあたしの名前。
呼んでくれたのを、確かに聞いたんだから!!
「あれ?ミキ。何か急に元気になったんじゃない?」
「判る?ナミ」
「変なミキさん。あ、もしかして今の人知り合いでしたの?」
「そうだよ!」
あたしは少し前に歩み出てから、みんなの方を振り返ってこう言ったよ。
「キララ!ナミ!リコ!あたしたちみんなの友達なんだからさ!」
そして・・・、あたしはみんなに抱きついたんだ!!
ベル 今度こそ幸せになってね・・・
落ち葉が舞い散る小さな町・鳳町。
遠ざかる4つの赤いランドセル。
心地好い風が彼女たちの髪を揺らして吹き抜けていく・・・・。
今、神酒は不思議な森での不思議な物語を静かにポケットに隠し、そして少女たちの輝く時間が緩やかに流れていった・・・・・。
終
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この作品はあたしが趣味で書いている『君のポケットに届いた手紙』シリーズというもので、大きなくくりから言うと、むしろフリーゲームの方が番外編の扱いになります。
両方とも出演人物は同じですがストーリーの流れは違っていて、両方に関わっていただいた方には『どっちもあり』みたいな感覚で受け止めていただけるとありがたいです。
調子に乗って次作品も掲載したいので、こりずにお付き合いいただけるとうれしいです☆
ありがとうございました♪
次話【卒業 ~あなたのうしろのメアリーさん~】




