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キララの想い①【神酒視点】

 二階からの階段を下りたあたしたちは、そこですぐに地下まで降りていく階段を見つけた。あたしがその扉を開けると、その先には土がむき出しになった暗い通路が続いていたんだ。

 ちょうど炭鉱の坑道なんかを思い浮かべると分かりやすいかな?

あっちこっちに大きな岩や、天井を支えている木の柱があってさ。

 どこかから電気は来ているみたいで、真っ暗ってわけじゃなかったんだけど、いかにも地獄に続いています、みたいなイメージで、あたしもキララもあんまりいい気分はしてなかった。


「いかにも、って感じだね。キララ」

 あたしがキララに声をかけたんだけど、キララは何か考え事してるみたいで、返事をしてくれない。

「キララ、どうしたの?」

 あたしの呼びかけに、キララがはっとして答えた。

「考え事でもしてた?」

「ええ。ちょっと」

「?」

「ベルさんのことなんですけど・・」


 キララは立ち止まると、変なことを話し始めたんだ。

「ミキさんはおかしいと思いませんでしたか?ベルさんのこと」

「え?どこが?」

「あの服装です。ミキさん、私やミキさんの着ている服を見てください」

 あたしは自分の服装を見直した。

 もちろんと言えばもちろんなんだけど、全身が泥まみれ。まああの泥の中を歩き回ったり、パラケルススから逃げ回ったりしたからね。

「そう言えば、ベルは随分きれいな格好をしていたね。なんでかな」

「ミキさんもそう思いますよね。私にはこの屋敷に洗濯機や着替えがあるとは思えません。何故彼女はあんなきれいな服装でいられるのでしょうか?」

 言われてみると、確かにベルの服装には変な感じがあった。例え泥が付かなくても、この屋敷に居れば埃や汚れが付くはずなんだけど・・・。

 あれ新品だったよね。確か・・・。

「もう一つあります。ベルさん、パラケルススから逃げ回ったり、足を痛めたりしたわりには、随分この屋敷について詳しかったですよね。この地下室についてもいろいろなことを知っていました。でも、どうして彼女が一人でここまで知ることができたのでしょうか。私にはベルさんという人が、あのパラケルススと何か関係があるような気がしてならないんです・・・」


 あたしはキララの言葉を聞いて、黙ってしまった。


 確かにキララの言うとおり。ベルが何か隠してるような気がするし、それ以外にもいろいろと不自然なことも多い。


 でも、だからってキララの言うことに、あたしはそのまま賛成はできなかった。特にベルとパラケルススが関係があるって部分には。


 理由は、ベルの笑顔。

 あの時、あたしがベルのことを『お友達』と言ったその時、ベルは満面の笑顔を見せてくれた。その笑顔が、なんとなくいなくなってしまったナミの笑顔に似ていて、あたしはその光景忘れることができなかったからだ。

 あんな笑顔を見せてくれる人に悪人なんかいるはずがない・・・と思いたい。


「考えすぎだよ、キララ」

 あたしが自信がなさそうに小さな声で言うと、キララがフッと笑った。

「そうですね。そうかも知れません」

 そしてあたしの顔を見ると、背伸びして笑ったんだ。

「こんな場所にずっと居たから、ちょっと余計なことを考えすぎてるみたい」

「そうよ、キララ。考えてばっかりいたら、上手くいくものもいかなくなっちゃうよ。」


 あたしたち二人は、どちらからともなく自然に笑っていたんだ・・・。

 この雛の森に来てから、こんな風に声を出して笑うのは、これが初めてだったと思う。

 あたしはなんだかナミとリコも側で一緒に笑ってるみたいで、不思議な気分だった・・・。




「ミキさん・・」

 不意に、キララがあたしの手を強く握った。

「こんな時だけど、ううん。こんな時だから、私、どうしてもミキさんに伝えておきたいことがあります」

 突然のキララの改まった態度。

「どうしたの?キララ。急に改まっちゃって・・」

「お願い!言わせて!」


???????????????????


「私、ミキさんやナミさんやリコさんに会えて、本当に・・良かった・・」

「え・・・?」

 キララは少し顔を赤らめていた。

「キララ・・?」

 今でも思い出すことがある。あの時のキララの真剣な目。あの時キララの心の中には何があったんだろうってさ。

 だって、あたしキララとの付き合いは長いけど、あんな目をしたキララは初めて見たんだもん。

 もしかしたらなんだけど・・・・。

 もしかしたらキララ、あの時何かを予感していたんじゃないかな・・・。

 すごく嫌な予感を・・。


「私、4年生の時にこの町に来たでしょ?でも、ここに来る前。前の学校で、私、理由があって学校には行ってなかったの。登校拒否ってやつかな・・。」

「え?」

 あたしにとってキララの言葉は、とてもじゃないけど信じられないものだった。

 学校でのキララの存在は、ほとんどカリスマみたいなもの。

 いつも自分の行動に自信を持ち、その自信を裏付ける実力があるキララを、実はあたしはいつもうらやましいと思っていたんだ。

 そんなキララが登校を拒否していたと言うんだもん。信じられるはずない。

「私の話し方って、少しおかしいでしょ?考え方もちょっと違うみたいだし。

最初はみんな面白がって近寄ってきたけど、そのうち誰も相手にしてくれなくなったんだよね」

 キララの声は震えていた。

「でも、私がこの学校に来た時、ミキさんもナミさんもリコさんも、自然に私のこと受け入れてくれたよね。私は全然変わっていないのに・・・。私、いつもは当然みたいな顔してたけど、ホントはとってもうれしかったんだ・・。」


 そしてキララは、あたしに今までのことを話してくれた・・・。

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