ドラマは夏風と共に
茜差す団地の一角、長く細い廊下で感じた母の温もり、母の言葉、母の涙は今でも覚えている。
「ごめんね……千晶」
だが、その言葉の内容も意味も、当時の俺には理解できなかった。
もしあの時に戻ることができたなら、ちゃんと話を聞くことができたのに。
「もう、大丈夫だから……」
さて、その後俺はなんと言ったかな? いや、何も言っていない。何か言おうとしただけで、それは自分の流す涙と共に流れて行ったのだ。
空が赤から群青に変わり、黒に覆われるまで、それは止まることはなかった。
*
午後の日差しが強烈に照りつける一学期終業式。
そんな日に、美少女に屋上に呼び出され、告白された日には、どれだけ甘酸っぱい青春の一ページになっただろうか?
だが、俺の目の前に立っているのは、古今無双、最強を我が手に捕まんとばかりに振る舞う悪友、宗方拓人とならば、それはそれは苦い高校生活の思い出にならざるを得ないだろう。
「時に我が親友、柊よ」
突然、いつの時代の言葉を使っているのでしょうね、この阿呆は。
「私は性という壁に悩まされてきたが、この期を機会に伝えておこう。お前が好きだ」
「……は?」
人生で初めての絶句。それがまさか、友人からの言葉とは夢にも思わなかった。
そんな絶句した俺は眼中に無いといった有様で拓人は続ける。
「ああ、お前が好きで堪らない。この腕でお前を強く、強く抱きしめたい」
ここまで来ると冗談半分、いや、冗談十分というのがよくわかる。顔が綻んでいるぞ、私至上最も厄介な友人よ。
これ以上言わせると、拓人が腐海の世界に飛び込んだっきり戻ってこなくなりそうなので、そろそろ引き戻さねば。
「お前のその唐突なギャグには飽きた。いいから用件だけ言え」
「あ、バレました? いやー、結構自信あったのだけどね」
「何の自信だ?」
「もちろん、貴方のハートを掴む自信ですよ」
「そう簡単に掴まれてたまるか!」
黙ってさえいれば、メンズモデルとしてもやっていけそうな顔立ちなのに、この馬鹿な友人は「黙ったら死ぬ!」と俺に堂々と宣言するのだから損をしているとしか思えん。
「それで、俺をこんな茶番に巻き込むために呼んだのか?」
「まあまあ、理由はちゃんとありますとも」
「なんだよ?」
「旅行ですよ、旅行」
「旅行?」
前々から慮外なことを言い出す奴だとは思っていたが、これはあまりにも。
「いきなりだな」
「はっはっは、いつだって劇的な出来事は突然なものだよ」
「お前は本や映画の観過ぎだ」
だが、その話が魅力的なのは確かである。夏休みにも関わらず、ただ過ごすというのはあまりにも不毛だ。そんなことの為に、華の高校生活、もとい長期休暇を棒に振るなど毛頭ない。
しかし、俺には不安要素が一つだけ存在する。
「それで、旅行、行きます?」
「別にいいが、親の承諾とかあるだろ」
「おっとそうでしたな。あー、あと我が盟友よ、私の父上に顔を出してはくれんかね?」
「なんで?」
「まあ、あれですよ。貴方と行っても問題ないかという検査みたいなものですよ」
なんとも矛盾した物言いだ。誘ってきたのは拓人というのに、検査とは。
「なんだよ、検査って?」
「まあ、男子高校生二人旅では、いろいろ問題があるでしょう。そのために私の父が調べたい様です。ですが貴公ならしっかりしているので、問題ないでしょう」
「は、はぁ……」
どんどん一方的に話が進められているような気もするが、これが彼のスタンスで、内心俺も諦めている。
「とりあえず、親が家にいて、行けそうなら連絡すっから」
「はいはーい、では朗報をお待ちしておりますね」
拓人はにこやかな笑顔で俺に向けて手を振る。まだ行けるとも言っとらんだろうに。
*
マンションの一角にある我が家に帰宅後、すぐにカバンを置き、ベランダへと向かった。
現在、時刻は学校が早く終わったこともあり三時。ちょうど洗濯物が乾いている頃合だ。
我が家は母子家庭であり、母親は仕事の人なので、家事は専ら俺がこなしている。
朝に干しておいた衣類を入れ込み、洗濯物を分けて畳み、それぞれの部屋に入れる。
そうしているだけでもう一時間が経った。
だが、休む暇もなく、部屋に掃除機を掛け、風呂掃除も済ませ、弁当箱を洗っているうちに時刻は六時。時が経つのは早すぎる。神様はどうして俺からこんなにも時間を奪うのか。
そんなメランコリックな気分になっている間も、時間は相対性理論に従って順調に進んでいく。
暇なく夕食の準備。料理は幼少期から作っていたので、今では趣味も兼ねて用意している。
簡単に下ごしらえしていると、玄関の方から扉が開く音がした。
「ただいまー、千晶」
滑り込むようにしてキッチンダイニングに入ってきたのは、俺の母親、柊梨香子である。
「母さん、そんなとこで寝ないで、早く着替えてよ」
「ごめんごめん、でも床が冷たいからもうちょっとだけ」
「駄目です! ほら、クーラー着けるから、風呂に行った行った」
襟元を掴み、引きずるようにして、母親を脱衣所へ連行。どっちが保護者なんだか。
母親が風呂に入っている間に、夕食の支度を済ませ、皿に盛り付けて、完成。
「はぁー、いいお湯でした」
タイミングよく風呂から出てきた母親と共にテーブルにつき、食事を始める。
しっかりと手を合わせ、様々な物に感謝を込めながら「いただきます」
「うん、いつにも増して美味しい」
「そりゃどうも」
しばらく静かな晩食を食し、俺は早速あの話題を持ちかけた。
「母さん、ちょっと相談があるんだけど」
「ん? なに?」
「俺、拓人と一緒に旅行に行こうと思っているんだけど」
「旅行?」
母さんは、口にすすめる箸を止め、じっと俺の方を見た。
「別に、行きたいと思うんだったら、行ってもいいと思うけど」
「なら、いいんだけどさ。ただ……」
「ただ?」
「母さん、一人で生活できるの?」
一瞬の沈黙、その後大きな笑い声がそれを破壊した。それは紛れもない、母の笑い声だった。
「あんた、そんなことで悩んでいたの?」
「当たり前だろ、母さん、一人じゃ生活できそうにないし」
「うーん、確かにね。でもね、私だって一応女なんだし、出来ると思うよ。多分」
多分って、どんだけ楽観主義なのでしょうこの人は。
そんな突っ込みは置いといて、次の疑問を母にぶつける。
「でも、料理できないじゃん」
「三食カップ麺でも、大丈夫よ」
「で、でもよー」
「何? 行きたくないの?」
ギンといつもの朗らかな光を消した瞳が俺を睨む。
「そ、そういう訳じゃないけど」
その迫力に気圧されたように、俺は答えた。
「なら、心配しないで行ってきなさい。少年よ、青春を謳歌しなさい」
そう母は言い、俺の頭をそっと撫でた。
何というか、この人は兎に角俺を子供扱いする。父親を早くに亡くして、寂しい気持ちは分からなくもないが、俺は今年で十八なのだから、ちょっとは大人として扱ってもいいと思うんだが。
「それで、いつから? 何日くらい?」
「それは、まだ決めてないけど」
「ま、学校生活に支障がでない程度なら、大丈夫よ」
「わかったよ」
*
夕食の食器を洗ったあと、俺は部屋に戻り、早速宗像に電話をかけた。
『ハロー、我が同志よ」
相変わらずの謎挨拶に、早速ため息が漏れる。
『おやおや、お疲れですな』
「ああ、誰かさんのせいでな」
『それは悪質な人だ。おのれ許すまじ』
「それが冗談だと捉えておくよ」
『それで、お返事の方は?』
「ああ、問題ない」
『そうですか、では今晩、八時頃に父と会ってもらいましょう。待ち合わせ場所は、駅前で』
「お、おい、突然過ぎないか?」
『朋友よ。我が名言語録には明日よりも今日、思い立つ日が吉日、明日やろうは馬鹿野郎という三つの言葉が収録されております』
「は、はぁ……」
『それに例え期日を延ばしたとしても、私の父上の都合上、どうしてもこの時刻になってしまいますぞ』
「わかったよ、じゃあそれでいいよ」
『では今晩、暫しの別れ』
一応同意はしたが、それならば事前に通知してくれてもよかったのでは?と心の奥で愚痴を漏らし、時計を見る。
時刻が現在七時半。自宅から駅まで徒歩三〇分。あれ、これギリギリじゃね?
「母さん、ちょっと出かけてくる!」
「えっ、どこに?」
「拓人んとこ!」
玄関に移動しながら受け答えし、素早く靴を履いて外に飛び出した。
外は昼に篭った熱と無機質な光を帯びながら人の往来を見守っている。
その流れに逆らいながら、奥へ奥へと進んでいき、駅前の時計塔に到着した。現時刻は八時五分前だった。
「やあ、我が類友よ」
その下には微笑を浮かべる、拓人の姿が。
「誰がお前の類だ」
息を切らしながら来たのが馬鹿らしくなるほどのこの顔に、ヘッドバッドを喰らわした際は、どれほど気持ちのいいことか。
そんな俺を余所に、奇怪な踊りを舞ながら拓人は言う。
「いやはや、胸が踊りますね。私なんか楽しみでここに三〇分前に来てしまいましたよ」
何だろう、この言葉に違和感というか、不自然な何かを感じた。そして俺はそれに直ぐに悟った。
「三〇分前って、俺がお前に電話した時刻だろ?」
「んー、覚えていませんね」
そう言いながら、拓人は携帯の着信履歴を眺める。
「ああ、そうでしたね。あなたが私に電話を掛けた時刻は、きっかり三〇分前ですね」
「てことは、お前俺がここに来るかどうかすらわからない状態でここに来たのか?」
「そう言うことになりますね。貴君の電話に出た場所も、丁度ここでしたし」
これを阿呆と呼ばずになにが阿呆か。頭より体が先に動く代表例として、国語の教科書に名を刻みたいのか? そんなの末代の恥だぞ宗方拓人よ。いや、お前が恐らく末代だ。
「今あなた、私が頭より体が動く男だと思いませんでしたか?」
「ふぁ?」
思わず変な声が出てしまった。図星だ、図星である。いつの間にか俺は口に出していたか? そこまで頭が弱くはないと自負はしているつもりだが。
「な、なんでわかったんだよ?」
「一体貴方と何年の付き合いだと思っているのかね? もう十五年ですぞ? 保育園で共におやつの強奪に励み、小学生では開かずの間と呼ばれた部屋への進入に試み、中学校では第二ボタンを奪っては捌き、そして現在、共に旅に出ようという有意義な約束まで交わしている仲だというのに」
「ちょっと待て! 前半三つは俺が止めに掛かった奴じゃねぇか」
「おや、そうでしたか?」
「そうだよ! 共犯にしてんじゃねー!」
「そんな細かいことはいいんです。私は貴方に何を説いたいかというと、私は決して頭より体が先に動く男ではないと言うことです!」
「細かくねーよ! 早急な修正と誠意ある謝罪を要求する!」
「ええい、黙らっしゃい! 話が進まぬではないか! 黙らなければ、ここで男二人、服を脱ぎ、淑女一同に我々の青々しい肉体を見せつけるか?」
これ以上ヒートアップすると、猥褻物陳列罪など公にしては行き過ぎた行動などを平気でやってのける馬鹿が本当にやりかねないので、一歩引いて、わざと折れてやった。負けたのではないぞ、大人の対応という奴だ。
「わかった。訊いてやるから話せ」
「うむ、よかろう。私は貴方の母上のことをよく知っている。特に詳しいのは性格である」
「あ? あの男っぽい感じか?」
「気っ風の良い、と言った方が適していますよ」
少し修正した後、宗像は続ける。
「あの人の性格なら、意味合いは違いますが、我が子を旅に出すくらい屁とも思いませんよ。私はそれを見透かした上でここに来たのです」
たまに見せるこいつの人を見通す様な行動や言動は、途中の要素を全部飛ばして行う。例えば。
「何でお前、俺の母親にそんな詳しいんだよ」
「何を言いますか。貴方とは十五年の仲ですよ。保育園の時には」
「もう、その話はいい! 幼なじみだから知っているんだな! よくわかったよ!」
「そんなに怒らなくても……さて」
拓人が時計を見るに連れられ、俺も下から覗くと、時間は八時十分を刻んでいた。
「茶番が長くなりましたな、父上を待たしているので、急ぎましょう」
拓人は踵を返して、人混みの中に消えようとしていた。
「あ、待てよ」
俺も慌てて、霧のように消えそうな拓人を追った。
夜の街は、アルコールに酔いしれた親父、適当にあしらう水受け嬢、不埒な道をひた走る学生、生徒共々。かなり怪しい雰囲気を醸し出している。
そんな空気を気にする余暇もなく、俺が気になったのは宗方拓人の父親である。
保育園の頃からこいつとは一緒にいるが、こいつの父親と顔を合わせたことは一度もない。
蛙の子は蛙、親は子に似るとよく耳にするが、その理論で行くと、宗方父は相当な奇人変人っぷりで俺に近付いてくることになる。
そんな親父、願い下げである。
だが、一応俺たちの旅行を見守るという名目上では、それなりの道徳心と威厳はあるらしい。その証拠に、この検査である。
つまり、今現在、推測できる予想図は、高田順次並の適当親父か星一徹の様な威厳の権化。この二通りだ。
「さっ、こっちですよ」
拓人が向きを変えると、そこは地下へ続く階段だった。従うまま、降りていくと、青いネオンで書かれた「BAR underground」と言う時が目に入った。
「おい、ここ間違えてんじゃないのか?」
階段の途中で足を止め、拓人に問うと肩越しに俺を見つめる。
「おや、父上からはBAR undergroundで待つと訊きましたが?」
平然と言ってのけるが、我々は健全、いや俺は健全な高校生なのだからさすがに大人の社交場に踏み入れるのはどうかと。それより宗方父よ。なぜここなのだ? 今、貴方の予想図は高田順次だ。
「まあまあ、入ってみましょう」
そう言って、拓人は一段飛ばしで、階段を降りていき、扉に手を掛けた。
「どうなっても知らんぞ」
俺も階段を降りきり、中を覗くようにして店内に入った。
中はダークウッドを壁や床に使ったモダンな店で、橙色の電球が空間を照らし、天井扇が部屋の空調を整えていた。
「父上、連れてきましたよ」
拓人がカウンター席に駆け込むと、そこには一人の初老の男性が物静かに、だが威厳を感じさせる佇まいで座っていた。
俺は店内に警戒の目を配らせながら、その男性の顔をのぞき込んだ。
その顔は目つきが鋭く、鼻は凛々しく高い。そして鼻下には立派な髭を蓄えた老紳士であった。
「ああ、ご苦労だった」
その男性が軽く手を挙げ、拓人に軽く礼をすると、椅子を回し、俺の方を向いた。正面で見ると、よりその厳格な様が映える。そしてその重々しい口がゆっくりと開く。
「すると、君が拓人が言っていた友人の、千晶くんかね?」
「は、はい。そうです」
緊張のあまり、それ以上の言葉が思い浮かばなかった。途方もなく続く空白の脳裏から、文字を見つけだして形にする。何という労力を要するのか。
「まあ、掛けたまえ」
そう、宗方父は進めるので、吸い込まれるように、俺は椅子に着く。
「君とは初めましてかな。私の名前は宗方風吹だ」
「は、はい。よろしくお願いします」
「君、酒は飲むかね?」
「い、いえ。まだ未成年なので、アルコールは遠慮します」
道徳的な問いに問われ、俺は正直に目を向けて返した。
「ふむ、道徳的には心配なさそうだな。ならオレンジジュースでも出させるか」
風吹さんはそう告げ、目の前には金色に輝くオレンジジュースが出される。なんともおいしそうな色をしているが、とても飲む気にはなれない。
まさか拓人の親がこんなにも威厳ある人だったとは。初対面という緊張感と相俟って、ろくにしゃべることができない。そんなところでダーツなどやってないで、会話のアシストをしろ、偏屈な友人よ!
「それで、君は今回の旅行をどう思っている?」
曖昧な質問が俺を襲う。そんな「我が社に入社したいと思った理由は」みたいな質問をふっかけるな! 何となくだよ、そんなもん!
「そ、そうですね。この旅行で仲が深められたら、良いと思います」
心にもない言葉が口からベラベラ出る。ああ、閻魔様。私のような嘘つきめをお許しください。
「そうか、そう思ってくれて非常にうれしいよ」
何かよくわからないが、誠意らしきものは伝わった。気がする。
「なら行ってきなさい。後のことは頼んだ」
なんか任された。そんなに我が息子の旅が心配か?
「話終わりました? なら帰りましょうか」
丁度ダーツをやり終えた拓人が俺の首に腕を回し、引っ張るようにして、外に出ていく。
「放せ! 歩きにくいだろうが!」
BARの入り口辺りで拓人をふりほどき、ズンズンと階段を昇って行き、街の汚染された空気を胸いっぱいに吸い込んだ。そんな空気でも、アルプス山脈並にうまく感じられる。
「はっはっは、緊張していましたね。我が愛友よ」
ゆっくりと昇って来た拓人を睨むが、その後しゅるると堪忍袋の中身が抜け、口から中身が出てきた。
「だいぶお疲れですな。私が送っていってあげよう」
前を毅然とした態度で歩く我が悪友の背中を恨めしそうに見た後、俺はうなだれながら付いていく。まるでゾンビみたいに。
「いやー、よかったですね。旅行に一緒に行けて」
「お前の親父は極道でもやってんのか?」
警戒が解け、胸中を吐露すると、彼はそれを滑稽に答える。
「いえいえ、私のお父様はヤの付く自由業ではなく、お医者様でございます」
「医者?」
「そう、人の命を救う素晴らしい職業です」
「医者ねぇ……」
そう言われれば、そんな気もしなくもないが、せめて愛想笑いはお覚えておいて欲しいところである。
「おっと、そうでした」
拓人が歩みを止めたかと思うと、こちらを振り向く。ああ、顔を鷲掴みにしたい、いい顔だ。
「明日の待ち合わせ場所と時刻と日数ですが」
*
俺は家に帰ると、早急に部屋へ行き、修学旅行でしか使わないだろうと思っていた鞄を引きずり出し、その中に今あるありったけの服をぶち込む。
「ん? どったの?」
騒がしさに耳を傾けた母親が、ひょっこりと廊下から顔を覗かせるのも、目を向けずに答える。
「明日の五時半には家を出る」
「えっ、家出!?」
「違うわ、旅行じゃ!」
母との茶番中にも休むことなく、手を動かし、取っては投げ入れ、取っては投げ入れを繰り返す。
何度も繰り返すようだが、先に言え、友人よ! 帰宅時に「明日、駅前に六時きっかりにお願いしますね。日数は夏休み全てを使いますから、それなりの準備を」では時間がどう考えても足りない! 「うっかりしてました」では収拾つかんぞ!
母の手伝いもあって、一頻りの荷物をぶち込むことができた。忘れ物がないかという自信はないが。
今日の混乱の責任は明日にしっかりとってもらうぞ。今日は疲れた、俺は寝る。床に着き、目を閉じると、暫くしないうちに眠れた。