花を摘むか愛するか
あるところに、お花を愛する女の子がいました。
女の子が心を込めて世話をしたお花は見事に咲き誇り、女の子はそのお花を大切に大切にしています。
女の子には許婚と世話係と、幼馴染の男の子がいます。みんな女の子のことが大好きです。
自分を大切に思ってくれる人たちに囲まれて、女の子は幸せに暮らしていました。
そんなある日のことです。
女の子は階段をのぼる途中、談笑していた人たちとぶつかってしまいました。
女の子は階段から転がるように落ちてしまい、頭を打って意識を失いました。
次に女の子が目覚めた時、そこには泣きながら手を握る世話係と、苦しそうに俯く許婚と幼馴染がいました。
女の子が意識を取り戻したことに気がついた三人は驚きながらも喜び、女の子も笑ってみせました。
検査などが済んで、女の子は退院することになりました。またいつもの生活に戻れる、と女の子は安堵しました。
ですが、周りのみんなは違いました。
もし、女の子がまた似たような目にあえば、もし、女の子がまた危険な目にあえば、次は目を覚ましてくれないかもしれない。
そう考えてしまうようになったのです。
そして、次第にこう思うのです。
女の子を、失う前に手に入れたい。と。
それから、世話係と許婚は退院祝いと称して数々の贈り物をしました。
そして女の子が見せた笑顔や言葉を自慢し合うのです。
女の子のほんの少しの困惑した表情は、二人には見えていません。
それから、世話係は一層過保護になり、許婚はその立場を使って女の子に近づきました。
そして自分と女の子だけの、二人きりの時間を楽しむのです。
距離を保つために下がろうとする女の子を、二人は気づきません。
幼馴染の男の子は、その様子を一歩引いて見ながら、花柄の便箋に手紙を書いて女の子に送りました。
世話係と許婚は、みんなに愛される女の子が大好きです。しかし、それ以上自分だけを見てくれる女の子が大好きでした。
ある日、許婚は女の子が育てたお花を使って、栞を作りました。
女の子が丁寧に育て、枯れるまで大切に世話をするつもりのお花でした。
女の子は深い悲しみを抑え、ありがとうと言いました。許婚は喜んで、女の子はそれを見て更に悲しくなりました。
その様子を見ていた男の子は女の子に問いかけました。
「逃げたい?」
女の子は答えました。
「逃がして」
男の子が伸ばした手に、女の子は自身のそれを重ねました。
あるところに、お花を愛する女の子がいました。
今はもう、いなくなった女の子が何故姿を隠してしまったのか、許婚だった彼と世話係だった彼女には分かりません。
彼女の本音を知っているのは、彼女の夫である幼馴染の男の子と、少し遠くから見守っていた女の子の両親だけです。
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