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生徒会長の挨拶だと、壇上にはオズワルドが立っている。
俺は戻ってきた日から一度もヤツに会わなかった。
前回を思い出す度に、オズワルドを・・・殺したくなったからだ。
実際、前回は殺ったがな。
さて、久しぶりに前回親友だと思っていたオズワルドに挨拶に行こうか。
「ミラ、少しだけ離れるよ」
「うん、頑張ってね」
新入生代表には俺が選ばれた。
前回の俺は父上のスパルタ教育のおかげで様々な知識を叩き込まれていた。
知識は記憶として残っていたから、今回は前回以上に剣術や体術の腕を磨きあげてきた。
今の俺は前回よりも確実に強くなっている。
すべてはミラを守るため。
「久しぶりだね。デューク」
「ああ、元気そうだな」
数年ぶりに会う従兄弟同士だが、懐かしむ事はない。
「「・・・」」
「行ってくる」
このオズワルドの様子だと、陛下に聞かされたのかもな。
前回、ミラに何をしたのかを・・・
知っているのならお前は二度とミラに関わるなよ?
壇上から生徒達を見下ろす。
この中にマリアがいるはずだ。
目だけで会場を見渡す。
見・つ・け・た・・・
普通だな。
ミラと比べると可愛いワケでもなく、ミラと比べると綺麗な顔立ちでもなく、ミラと比べると存在感もない。・・・本当に普通の女だ。
前回は涙と鼻水でドロドロの汚い顔しか見なかったからな。
前回と同じ、その俺を舐めるような気持ち悪い目は許してやるよ。
何もしなければいい。
ミラにさえ何もしなければいい。
簡単だろ?
チラリとミラを見ると・・・
ミラ~~
膝の上で小さく手を振るなんて可愛すぎるだろ。
一気に俺の中のドス黒い感情が四散してしまったじゃないか。
さあ、さっさと挨拶を済ませてミラの元に戻ろう。
~マリア・フィガロ伯爵令嬢視点~
所謂、私は転生者だ。
前世を思い出したのは、今世の母親が死んだ時。
前世を思い出してしまえば、今世の母親など赤の他人。
そんな事よりも、異世界転生にありがちな乙女ゲームの世界なのか、小説の中の世界なのか、それとも漫画の世界なのかを思い出す方が大事だった。
唯一分かる事は、自分の名前が『マリア』だってこと。
思い出そうにも、数ある乙女ゲームや小説に『マリア』なんて名前は腐るほどあった。
思い当たる候補としては、実は貴族の娘だった説か、平民だけど聖なる力を持つ聖女だったとかよね。
このまま待っていれば誰かしら迎えに来てくれるのよね?
それまでどうやって生きて行くかだ。
今世の母親が少額ずつ貯めていたお金の場所なら知っている。だから、お迎えが来るまでは倹約して食べていかなければならない。
はぁ~来るなら早く来いよ!
まさか餓死寸前に迎えが来るなんてことはないわよね?
迎えが来るまで毎日前世を思い出していた。
普通の一般家庭の次女として生まれ。
両親は健在だったが、私が中学生の頃父親の浮気が発覚して夫婦仲はギスギスに。
母は父の文句ばかりを私たち姉妹に聞かせた。
そのくせ離婚しようとはしない母。
浮気相手がいるくせに家には毎日帰ってくる父も離婚は考えていないようだった。
そのうち姉は地方の大学へと逃げた。
残された私はそんな家に居るのが嫌で、高卒で就職する事を選び、就職先の寮に入った。
普通の見た目の両親から生まれた私は普通よりも少しだけ下の見た目だった。
髪は固くて多いから、髪をおさげにしても一本が綱引きの綱のように太かった。
中学からニキビができて赤ら顔だったし、そのせいで肌もボコボコだった。
そんな私は自分に自信なんか持てずに、働き出した職場でも親しい友達も出来なかった。
当然、彼氏なんて出来るはずもなく・・・せっかくの休日も寮でゴロゴロするしかなかった。
オシャレをしても、化粧で肌を誤魔化しても普通以下の私にはそれすらも無駄な努力だった。
だから現実から逃げたかったんだろうな。
異世界転生ものにハマってしまったのは。
悪役令嬢やヒロイン。
ざまぁや逆ざまぁ。
タイプの違う魅力的な攻略対象者たちとの恋愛。
現実ではありえないからこそ、私はのめり込んだ。
気づけば、高卒で働き出して10年以上も過ぎていた。
同期の女の子や、後から入ってきた子も寿退社していった。
・・・それからどうしたんだっけ?
結局死因は思い出せなかった。
でも実際私を迎えに来た人はいたし、そこで私の魔力や使い方も教えて貰えたし、12歳の時にフィガロ伯爵家の養女にもなれた。
だから、そこで自分磨きをしたの。
今世の私は緩く波打つピンクの髪に青い大きな目の可愛い女の子。
まさにヒロインだと思った。
だからって調子に乗ってざまぁされないように、マナーも礼儀作法も学んで、勉強も頑張った。
あとは15歳で学院に入学するのを待つだけ。
その間に立てた計画は、どこかの高位貴族の令嬢を私の魔法の声で唆し、一番いい男と結ばせること。
ここがどのゲームか小説の中か分からないけど、内容はそう変わらないはずだ。
攻略対象者は最低でも五人はいる・・・はず。
だから私は二番目の男で手を打つわ。
二番目でも権力と財力は十分あるだろうし、イケメン間違いなし!
悪役令嬢のポジションに相応しい子が居れば利用させてもらえばいい。
そして私の思っていた通り、学院にはどこを見渡しても前世よりもレベルの高い男がたくさんいた。
まず最初に目を付けたのは、入学式で生徒代表で挨拶をした王道の王子様。
ここまでは計画通りだったんだけど・・・
次に登場した男が私の好みのド真ん中だった。
新入生代表で挨拶をしたデューク・ティタニア。
背が高くて、引き締まった細マッチョの身体。
短い銀髪にキリッとした切れ長の目は神秘的な紫。
筋の通った高い鼻に薄い唇。
まさに理想の男がいた。




