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「ミラが決めればいい」
「会わなくてもいいのよ」
「俺は会わなくてもいいと思う。・・・いや、会わせたくない」
大体今さら何の用があるって言うんだ。
ミラがウチの養女になって何年経ったと思っているんだ。
これまで一度も手紙の一通すら送ってこなかった奴なんかに会わせたくない。
前回、後妻に好き勝手させて虐待されるミラを庇うどころか、存在すら無いものとしていた。
ミラが死んだ時も顔色一つ変えなかったと聞いた。
今回も俺たちが助け出さなければ同じ事を繰り返したはずだ。
そんな男に親の資格は無い。
それに、奴はライラ叔母上に一目惚れし、あの手この手を使ってライラ叔母上の心を掴んだ。と、聞いていた。
前国王に婚姻が認められる為に、領地を潤わせ、ボイル侯爵家が経営する商会は国で三本の指に入るまでに成功させた。
婚姻後は仲睦まじく幸せに暮らしていたと聞く。
ミラが生まれてからは更に仕事に力を入れながらも妻と娘との時間を大切にし、減るどころか増える一方の愛情を与えていたらしい。
そんな奴が変わったのは流行病でライラ叔母上が亡くなってからだと・・・。
確かにライラ叔母上が生きている時に母上とボイル侯爵家に遊びに行けば、ミラを腕に抱いた笑顔の奴に出迎えられていた記憶がある。
それがライラ叔母上が亡くなった途端、奴から笑顔が消えた。
母親を亡くしたミラを心配して俺たちが様子を見に行った時も顔を見せることは一度もなかった。
そのうち何処の誰かも分からない連れ子のいる後妻を迎えてからは何だかんだと理由をつけてミラと会えなくなった。
今回も俺たちが助け出すまでミラの事は後妻に任せ我関せずだった。
そんな奴とミラを会わせる事など許せるわけがない。
それでもミラが会いに行くと言うなら絶対について行く。
「これが最後だと思うから会ってきます。それに・・・デュークと結婚する事を報告したいと思います。自慢のだ、旦那様だと紹介したいので」
えへへって照れくさそうに頬をかくミラが可愛い!
そうなんだよ、卒業式の3日後俺とミラは結婚式を挙げる。
あと10日だ。
憂いなく結婚するなら、確かに最後に一度会ってスッキリした方がいいかもしれない。
聞きたいことや言いたいことだってあるはずだ。
「だからデュークと一緒に会ってきます」
「おう!任せておけ。ミラを1人で会わせたりしない。ミラの居場所はここなんだから」
「分かった。だが護衛は付けさせてもらう」
「そうね。どんな話か分からないけれどちゃんと2人で帰ってきなさい」
「はい」「ああ」
ボイル子爵は王都に来ているらしく、卒業式の翌日会うことになった。
結婚式の2日前だ・・・。




