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結局、王妃は療養を理由に幽閉された。
王族が罪を犯した場合に閉じ込められる塔に・・・
毒杯を与える、または密かに処刑するには精神に異常をきたした元王妃に反省を促す意味すらなく、塔で人形を相手に空想の中で生きている。
もう、元王妃には陛下のことも、カイルやオズワルドのことも分からないと聞く。
ミラの生存すら分からず、眠れぬ夜を過ごしていた俺も母上も納得する事は出来なかった。
『王族の犯した罪として軽すぎる』と母上は怒りを顕にし陛下に抗議したが、実際にいまの元王妃の姿を見てから何も言わなくなった。
それに一番の被害者であるミラがトラウマになることも無く元王妃を許したことが大きい。
『最後までお母様と思い込まれていたけれど、すごく丁寧に扱ってくれたの。ずっとお母様との思い出を何度も聞かせてくれて嬉しかったの。だって私の知らないお母様を知ることが出来たもの』
5歳で母親を亡くしたミラは、父上や母上からライラ叔母上の話を自分からは聞こうとしなかった。
ミラなりに気を遣っていたのかもしれない。
今回の件で母親が犯した犯罪に責任を感じていたカイル。
母親のライラ叔母上に対する異常な執着を目の当たりにしたカイルは、自分の異常性に漸く気付くことが出来たそうだ。
それだけに、国を導くに相応しくないと王位継承権を放棄すると言ったがそれを認められる事はなかった。
カイル以上の能力はオズワルドにはなく、罪を犯したワケではなかったからだ。
それにあの後、俺の父上の助言で未練を断ち切るために玉砕覚悟でミラに告白した。
まあ、ミラに『カイル兄様気持ち悪い』と前回頬を舐められたミラは嫌悪感を剥き出しで言われた事にショックを受けながらも、スッキリした顔をしていた。
こっぴどく振られたカイルは目が覚めたのかずっと渋っていた婚約者を見つけることに。
そして、以前の日常が戻ってきた俺たちは休学していた学院に通うようになった。
既に3ヶ月が経っていた。
ミラが行方不明の間俺と同時に休学していたセナも一緒だ。
ローガンだけは教師を退職し捜索していた。
3ヶ月ぶりに登校した俺たちは注目を集めた。
気を遣いながらミラの回復を本気で喜んでくれる者が何人もいて、その度に照れくさそうにお礼を言うミラの可愛らしさに多数の男たちが胸を押さえる場面も何度も見た。
俺はミラに見つからないようにこっそり威嚇したがな!
その後も順調に何事もなく過ごしていたある日、あの男の身内からミラに連絡があった。
『会いたい』と・・・
それは俺たちの卒業式が行われる一週間前だった・・・。




