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最初、匠に作られたミラにそっくりな精巧な人形が座っているのかと思った・・・
父上と陛下も息を呑んだのが分かった。
驚きで声が出ないのか何も言葉を発しない。
「・・・ミラ?ミラなのか?」
動かない・・・人形なのか?
呼吸をしている感じもしない。
俺の声を聞いても反応もしてくれない。
「ミラ?」
ミラの視線に合わせるように腰を落としてミラっと呼んだ。
!!
間違いないミラ本人だ!
生きている。
「ミラ!!しっかりしろミラ!」
ミラの両肩に手を置いて優しく揺さぶると手に体温が伝わってくる。そして瞳が僅かに揺れた気がした。
だが、まだ動かない。
ミラの首には飼い犬のような首輪と細い鎖がついていた。
それは部屋の隅に繋がっている。
まるで逃がさないように・・・
表情の動かないミラが痛ましくて、でも手に伝わる温かさに安心もして自然と抱きしめていた。
あああぁ温かい・・・ミラだ。生きていた。生きていてくれた。
生きて俺の元に帰ってきてくれた。
とめどなく涙が溢れてくる。
「・・・ミラ帰ろう?
俺たちの、ミラが大好きだと言っていた家に帰ろう?
皆んなミラが帰ってくるのを待っているんだ」
反応しない・・・
行方不明の間ここで何をされていたんだ?
何をされれば人形のように反応しなくなるんだ?
・・・それは陛下が王妃を問い詰めてくれるだろうが・・・これは犯罪だ。
今はそれよりもここから連れ出す方が先だ。
ミラについている首輪を外そうとしたが止め具がない?
どうやってこれを外すんだよ!
特殊な作りだ。陛下ならコレが何か知っているんじゃないか?
「陛下!コレを外してください!」
ここへ入ってから呆然として動こうとしなかった陛下。
まさかミラを攫ったのが本当に自分の妻だとは思わなかったのだろう。
俺の声にやっと放心状態から復活した陛下が慌てて「や、やめろ!無理に外したらダメだ!」と叫んだ。
どういう事だ?
「兄上はアレが何か知っているのですか?」
「・・・あ、アレは・・・・・・魔道具・・・禁忌とされる魔道具、隷属の魔道具だ。厳重に宝物庫に保管されていた物だ」
隷属だと?
この時代に?
昔、科学が発展する前の時代、魔道具の中には今は禁止されている奴隷という存在が居た事は知っているが、この首輪が奴隷に使用されていたものなのか?
「これは契約者以外には外せない。無理に外そうとすれば・・・頭が吹き飛ぶぞ」
「じゃあどうすればいいんだよ!」
「だから契約者・・・王妃に外させるしか方法はない」
「な、何でこんな物を王妃が持っていたんだよ!」
「デューク落ち着け」
「落ち着け?そんなの無理に決まっているだろ!」
何でだ!何で王妃がミラに隷属の首輪をつけたんだ!
俺たちが夜も眠れず必死でミラを探していた事を知りながら、黙っていただけでなくこんな物を着けやがって許せねぇ
たとえ王妃だろうが絶対に許さない!
「兄上・・・ここまでした王妃を罪に問わないとは言いませんよね?」
「・・・当然だ」
陛下と王妃は仲睦まじいとこの国の人間なら誰もが知っている。
ミラの姿に呆然としていた陛下が今何を考えているか分からないが、厳しい顔付きに変わっている。
王妃を愛していようがここまで罪を犯した王妃を切り捨てることの出来る冷徹さも兼ね備えている。だからこそ国王なんだ。
ミラを攫うのに何人も死人が出ている。
それだけじゃない、人権を無視した禁忌の隷属の首輪まで使用するとは・・・こんな人間を国のトップに置いておく訳にはいかない。
罪は償ってもらう。
これだけ俺たちが騒いでも腕の中にいるミラは身動き一つしないんだぞ!
悔しくて、痛ましくて、涙が止まらない。
「・・・王妃を連れてくる。まずはミラを解放するのが先だ」
陛下の言葉と被るように勢いよくドアが開けられた。




