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最初、匠に作られた精巧な等身大の人形が座っているのかと思った・・・
王妃宮までは逸る気持ちを抑えて陛下の後をついて行った。
だが、王妃宮に入ってしまえば我慢も限界で陛下を押し退け王妃の私室を蹴り破る勢いで飛び込んだ。
「ミラ!ミラ!・・・ミラ?」
・・・・・・無人?
物音一つしない?
「デューク!!先走るな!・・・おいデューク?」
「ミラはいたのか?」
後ろからついてきた父上は怒りながら、陛下は確認するように声を掛けてきたが・・・。俺が首を振ったのを見て2人は落胆の溜め息を零した。
「はぁ・・・居ないな。大体我が王妃がミラを攫う理由もない。さぁデューク疑いも晴れただろう?」
まだだ!
まだ諦めない!!
「もう少し、探させてくれ。生前爺様が王宮には隠し部屋があると教えてくれた事がある。王妃の部屋ならそれがあるはずだ」
この王妃宮は父上が王子の時ですら入った事がないと言っていた。
父上や陛下が王妃宮の隠し部屋の存在を知らなくても可笑しくは無い。
だが探せば隠し部屋のひとつやふたつあるはずだ。
俺の必死な訴えに陛下が何とか頷いてくれた。
俺は壁、床、本棚と、怪しいと思うところは部屋中くまなく探したが何も見つからなかった。
「時間だ」
王妃に断りもなく王妃宮に入れたのは陛下のおかげだ。
そろそろ王妃の執務が終わる時間らしい。
侍女達に口止めを言い渡しに席を外していた陛下が戻ってきた。
それでも俺は諦める事が出来ず部屋を見渡していたその時、王妃の部屋には相応しくない懐かしい本が本棚の端にあるのを見つけた。
『お爺様、ミラあのお話が大好きなの。読んでください』
幼い頃王宮に遊びに来ると忙しい爺様とは滅多に会うことがなかったが偶に顔を出しては俺たちを可愛がってくれた。
その時、決まってミラが爺様にお強請りするのは"お姫様と騎士の物語"の絵本だった。
古くて普通の本よりも小さいし、内容も子供にしか通用しないような夢物語だった。
まったく興味もない俺が大人しく聞いていたのは、その絵本を聞くミラの嬉しそうでキラキラした目をしていたからだ。
その本が何故か本棚の端にあった。
懐かしさに思わず手に取ろうとした時、『カチッ』と不自然な音がした。同時に本棚が横に動き出した。
思わず振り向いて父上を見れば『まさか、本当にあったのか?』と目を見開いていた。
「父上、陛下行きますよ」
・・・入った先に階段があった。
窓の無い階段は灯りの着いた道具がポツポツと点って扉を灯している。
距離で言えば10メートルもない。
幅は1メートルぐらいか?
外からこの部屋の存在を確認するのは確実に無理だ。
本来なら王宮が攻められた時などに避難する部屋だろうが・・・
そんな事を思いながら扉に向かって駆け下りた。
後ろからはいい歳のおっさん2人も走って付いてきているようだ。
10メートルなんてすぐだ。
あっという間にドアの前に着いた。
どんな姿でもいい!ここに居てくれミラ!
振り返って追い付いた父上と陛下に俺は無言で"開けるぞ"と目で伝えれば頷いてくれた。
ここでミラが見つかるかもしれないという期待と、居ないかもしれない不安が交互に頭をよぎる。
頼む・・・ここに居てくれ。
ドアノブを掴んでそっとドアを開けた。




