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一ヶ月以上も生死さえ分からないミラだが、学院は体調不良で療養している事になっている。
俺も付き添いを理由に届けを出している。
「デューク・・・聞いて欲しいことがある。今から時間を取れるか?」
今日も動きは無しか、と日課となるカイルの執務室の前で落ち込みそうになる。
そんな時に、中から出てきたカイルが申し訳なさそうに声をかけてきた。
頭では分かっている。
カイルの計画は失敗に終わり、ミラの居場所を知らないことも・・・
今も影がカイルを見張っていることも・・・
カイルの隠し部屋が塞がれたことも・・・
それでも疑ってしまう。
これだけ捜索してもミラの痕跡が一つもないのは大きな力を持った者の仕業としか思えないからだ。
毎夜のように夢に見るんだ。
前回は死ぬ間際まで傷つけられていた身体を。
『リュー・・・会い・・たかった』と微笑んで僕の腕の中で冷たくなっていったミラの姿を。
今回、ボイル家の小屋で丸まって眠っていた小さなミラの姿を。
この時も既にミラは身体中アザだらけだったことを。
声を殺して泣いている姿を夢に見るんだ。
何故ミラばかりが辛い思いをしなければならないんだ?
今も暴力を振るわれていないか・・・
傷物にされ・・・。
それとも既に・・・。
ダメだ!ダメだ!ダメだ!
信じるんだ!ミラは無事だ!
どんな姿でもいい、ミラさえ戻ってきてくれればそれだけでいいんだ。
「ああ」
そう返事をしてカイルについて行った先にはオズワルドが待っていた。
「ここは防音になっていて外に声が漏れることはないから安心してくれていいよ」
頷きながらカイルとオズワルドの対面のソファに腰をおろした。
「デュークに聞いて欲しい話なんだが・・・」
いつも堂々としたカイルが目をさ迷わせながらそこで言葉を止めた。
「早くしてくれないか?時間がもったいない」
「わ、悪い・・・」
カイルらしくないな。
そのカイルの代わりに口を開いたのはオズワルドだった。
「母上の様子がおかしいんだ」
そんなのはお前たちで話でも聞いてやればいいだろ!っと、口には出さないが態度には出てしまった。
俺がイラッとしたのに気付いたオズワルドは慌てて話し出した。
「私たちも最近気付いたんだけどね、母上は天気のいい日は外でお茶をするのが好きなんだけど、ここの所まったく外に出ないだけでなく、執務が終わるとすぐに自室に戻るんだ」
だから何だよ・・・
「体調が悪いのかと思えば顔色もいいし機嫌もいい」
それで?
「だから心配はしていなかったんだよ」
ふ~ん。
それが俺に関係あるのか?
黙って続きを促す。
「それが昨日・・・見てしまったんだ」
王妃が浮気でもしていたのか?
「・・・母上の部屋に食事が運ばれて行くのを」
「部屋で食べたかったんだろ?そんな事は何処の家でもよくあるさ」
「そうなんだけど・・・私たちと晩餐をしたすぐ後なんだ」
はあ?
「一人分、それもデザート付きで運ばれていたんだ。先に言っておくけど母上は体型維持の為、三食以外でお茶の時間以外はほぼ何も口にしない」
・・・ここで『よく食べる王妃』と言うより、俺を呼び出してまで話したところをみると・・・
!!
まさか!
「おいっ!」
「まだ確信はないんだ。・・・もし、そうだったとして何故母上がそんなことを?」
「今すぐ王妃の部屋へ案内してくれ!」
「・・・無理なんだ。私たちでも王妃の部屋には入れないんだ。唯一入れるのは陛下だけなんだよ」
「なら!すぐに陛下に!!」
「その陛下は今、隣国へ外交に出ている。帰国は2日後の予定なんだ」
「そんなに待てない!!頼む何とかしてくれ!カイル!!オズワルド!!」
そんな事を聞いたらじっとなんかしていられない!
今すぐにでも駆け出そうとした時、2人に力ずくで止められた。
強引に押しかけると王弟の息子とはいえ暗殺を疑われるぞ!っと・・・
俺はそれでもいい!と何度言っても俺が諦めるまで何度も説得された。
『たとえミラが見つかっても、お前が処刑される事になったらどうするんだ!』
この一言で何とか踏み止まる事ができたが・・・
納得はしていない。
陛下が居ないのなら、父上に頼んでも無理だろうか?
だが、血縁でもない王妃がミラを攫ったりするだろうか?




