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「どういう事だ!お前たちは何をやっていたんだ!」
父上の怒声が執務室に響く。
俺たちの報告に執務机を叩きながら怒鳴った父上。
隣には涙目の母上もいる。
何でだ!何でミラが居なくなったんだよ!
誰が連れ去ったんだよ!
今日は前回ミラが命を落とした日なんだぞ!
こんな事になるなら卒業パーティーなど参加しなければよかった・・・
卒業パーティーの催されていたホールで俺もローガンもセナも、誰もミラから目を離していなかった。
警護の者も何人も潜ませていたのに・・・
華やかなホールの中央で踊る者、談笑をする者、食事をする者、怪しい気配はどこにも感じなかった。
それがパーティーも終盤に差し掛かった頃、突然ホールの窓ガラスの割れる音が四方から聞こえたと同時に照明が落とされた。
隣にいたミラを庇おうと手を伸ばした先には、もうミラはいなかった。
突然のことにホールの中はパニックと恐怖で叫び声や悲鳴で隣にいるセナの声も聞こえないぐらいだった。
俺は何度も何度もミラの名前を呼んだ。
だがそれに返ってくる返事は一度もなかった・・・
照明が消えていたのは時間にして3分ほどだったらしいが、俺にとっては何時間にも感じられた。
その間ずっと俺の心臓はドクドクと張り裂けそうなほど痛かった。
照明が点いた時、オズワルドと目が合った。
アイツはしっかり護衛たちに守られていた・・・
「カイルは?カイルに付いている監視からの報告は?」
一番怪しいのはカイルだ。
「今、王宮と公爵家に使いを出しました」
学院をくまなく探した。
それでも痕跡すら見つからなかった。
間違いなくプロの仕業だ。
そのまま王宮にカイルのところに乗り込もうとする俺を止めたのはローガンだった。
まだカイルの仕業だと確認が取れていない状況で疑いをかけるのは不敬で、反対にこちらが取り押さえられる事になるかもしれないと。
・・・だから、いったん公爵家に帰って父上に指示を仰ぐと。
そんなの確認しなくともカイルの仕業だ!
それでもローガンとセナを振り切ってカイルのもとに向かおうとする俺はローガンに意識を刈られた。
意識を取り戻したのは公爵家に到着した時だった。
そして、さっきの父上の怒声だ。
居ても立っても居られない俺は一人でもカイルのもとに向かおうとした時ノックの音が・・・
「旦那様、王宮からの使者が参っております」
「通せ」
その使者が言うにはカイルの仕業ではなく、別にミラを攫った者の仕業だと言う。
もちろんカイルの自室にある隠し部屋も確認済みだそうだ。
それよりも、ミラが攫われたと聞いたカイルは『ミラはどこだ!私のもとに来ていない!』と取り乱しているらしい。
実際、影からの報告でも、カイルが依頼していた者たちは卒業パーティーが始まる前に既に遺体となって発見されていたと。
その者たちに付いていた影の遺体もその場にあったそうだ。
「では何か?カイル以外の何者かがミラを攫ったというのか?」
だがそれだとカイルの企みを知っていた人物になる。
誰だ?
俺たちの機密情報が漏れていたのか?
裏切り者がこの中にいるのか?(いや、それは無い)
なら陛下側から漏れたとしか考えられない。
ミラ、生きてるよな?
大丈夫だよな?
また、笑顔を見せてくれるよな?
守ると誓ったのに・・・ごめんな。
不安だよな。
必ず探し出すから、どうか無事でいてくれ。




